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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode47-1 宿題の答え

 混乱に溢れた玄関前の出来事を収めたのは、やはり頼れる百合宮の長男であった。


 お兄様の指示の下、お母様は何とかその場で支えていたお手伝いさん数名に寝室へ運ばれ、固まって動けなかった私達お子様メンバーは、あれよという間にリビングへと移動。


 そしてリビングに足を踏み入れた瞬間私が目にしたのは、色紙で輪っかを繋いだ、とある特別な日の飾りつけだった。ここまでくれば今日という日がどういう日であったかを思い出した私は、複雑な気持ちでいっぱいになった。


 ソファに麗花と瑠璃子さんと、その間に私が収まる形で並んで座ったのを確認して、向かい側に座るお兄様。


「……まぁ、とんだサプライズになっちゃったけど。取りあえず誕生日おめでとう、花蓮」

「ありがとうございます……。麗花さんと瑠璃子さんも、もしかして私のために来てくれたんですか?」


 両隣に座る彼女たちに聞けば、揃って頷く。


「そうですわ。花蓮さんの特別な日を私達もお祝いしたかったのですわ」

「そろそろ近いねって麗花さんとお話ししていて、それで奏多さまにもご相談したんです」

「両親は最初どこかの会場を貸し切って、盛大にやろうとしていたみたいだけどね。結局は二人から相談されたこともあって、だったらウチだけで盛大なサプライズパーティにしようって話になったんだよ」


 で、僕達にとってもとんだサプライズになったけどねと苦笑するお兄様と、シュンと沈んだままの麗花と瑠璃子さん。


 ……そっか、瑠璃子さんが喜ばせたかったって言った意味が、今ようやく分かった。なんだ、そっか。


「……ふふふっ」

「花蓮さん?」


 急に笑い出した私に、変わらず心配そうな視線を向けてくる麗花。


「私ね、学校行事のことで頭がいっぱいで、今日が自分の誕生日だってことすっかり忘れてたんです。楽しみにしていた遠足で嫌な思いはするし大変でしたけど、最後の最後に、こんなに素敵なサプライズが起こるなんて」


 出掛けるって言っていたけど、きっと家の中で飾り付けをしてくれていたお母様とお手伝いさんたち。


 私の喜ぶ姿を想像しながら、楽しみにして会いに来てくれた麗花と瑠璃子さん。お兄様も、私にバレないように皆と連絡を取りながら準備してくれていた。そう思うと。


「すごく、すごく嬉しいです! 私のためにしてくれたこと、全部が最高の誕生日プレゼントです!!」


 ポカポカと気持ちが温かい。

 ホワホワフワフワする気持ちのまま、にっこりと満面の笑みを向ける。


 しばらくニコニコと笑っていたが、誰からも何の反応も返って来ないので周囲の様子を見ると、何故か三人とも呆気に取られた様子で固まっていた。


「え。み、皆さんどうし…」

「本当に一体遠足で何があったんですの!? 関わった人間の特徴を言いなさい!」

「何で!? る、瑠璃子さ…」


 鬼気迫る麗花の形相に詰め寄られ、慌てて隣の瑠璃子さんに助けを求めるも。


「花蓮さん……。そんなにお辛い目に遭っていただなんて……」

「えええ!?」


 プルプルと身体を震わせ、悲壮な表情になる彼女に素っ頓狂な声が出る。


 素直な気持ちを言っただけなのに、どうしてこんな反応されるの!? お兄様は……あっ、手で顔を覆って首をプルプルと振っている! それどういう意味ですか!?


 私としても非常に不可解な周囲の反応に困ってあー、とかうーとか唸っていると、麗花がぎゅっと眉間に寄せていた眉をへにゃりと垂れさせた。


 こ、これは!

 麗花が泣き出す一歩手前の……っ!


「れ、麗花さん、一旦落ち着いて」

「嫌な思いをしたって言いましたわ。瑠璃子さんと出会ったあの時でさえも、されたことに対して一言も文句を言わなかった貴女が、嫌な思いをしたって言ったのです!」

「え」

「普通の令嬢なら泣いたり怒るようなことでものほほんとして受け流す、能天気で抜けてて楽観的な貴女が、自分のことで嫌な思いをしたって!」

「あれ? いま私(けな)されてませんか?」


 泣きそうな顔で一生懸命に言うから、一瞬流しそうになったよ。


「どこの誰の仕業ですの、貴女をそこまで追い詰めた不届き者は。 私が花蓮さんの敵討ちをいたしますわ!」


 拳を握って、やる気に満ち溢れている麗花にギョッとする。


「や、止めて下さいな! 麗花さんの気持ちだけで十分です。学校が違うから、普段会うこともないですし」

「ということは聖天学院の生徒ですのね? 一年生男子は問題を起こす筈がありませんから、女子生徒の仕業ですわね!?」

「私の言葉から犯人を特定しようとするの止めて下さい!」


 なにその推理力!?

 こっち碌に喋れなくなっちゃうからホント止めて!


「花蓮さんは、優しすぎます」


 ぽつり、と落とされた言葉に振り向くと、悲壮な顔から一転、ムッとしたように眉間に皺を寄せた瑠璃子さんと目が合った。


「る、瑠璃子さん?」

「きっと、私の時のように誰かを守ろうとして負ったケガです。絶対そうです。だって、花蓮さんは誰かを傷つけるようなことはしません! 私、私は、私だって花蓮さんをこんな目に遭わせた人を許せません……!」


 お淑やかで癒し枠の瑠璃子さんまでもがその目に怒りの感情を灯しているのを見て、いよいよ事態が手に負えなくなってきた。


 どうしよう、私の友達二人が私のために攻撃的すぎる!


「二人とも、本当、落ち着いて下さい! 私は大丈夫ですって」

「「全然大丈夫じゃありません!!」」

「!!?」


 パンッ、と唐突に高い音が打ち鳴らされた。

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