19、使用人が増えました
ある朝、ベティが自宅で本を読んでいると両親が外出の準備をしていた。
「少し出かけてきますよ、ベティ」
「わかりましたわ、お父様、お母様」
ベティが本を読み終わり、昼食の少し前の時間になると両親は帰ってきた。
「ただいま、ベティ」
「おかえりなさい、お父様、お母様。あら? その子は誰?」
ベティは両親の後ろに隠れるようにして立った、まだあどけなさの残る少女に気付いた。
「はじめまして、ベティお嬢様。私、ロージー・フィッシャーと申します」
ロージーはお辞儀をした。茶色いおかっぱ頭と茶色い目をした可愛らしい女の子だった。
年は12才だと言う。身の回りのものを持っているのか、大きめの荷物を抱えていた。
「この子には、ベティの世話係をさせようと思って、修道院から引き取ったんだよ」
父親は話し続ける。
「家に住み込みで働いてもらえるように交渉してきたんだ」
父親の言葉にベティは驚いた。
「まあ、そうでしたの」
「最近はクライド様と出歩く機会も多いし、手紙を届けることも多いですからね」
母親はそう言って、微笑んだ。
「ロージーは本を読むのが好きだそうですから、図書館にも連れて行ってお上げなさい」
「そうですか。分かりましたわ、お母様」
ロージーは恐縮して頭を下げた。
「ロージーさん、これからよろしくお願い致しますわね」
ベティはロージーに微笑みかけた。
「私こそ至らない点が多いかもしれませんが、よろしくお願い致します」
ロージーは緊張しているのか表情がこわばっていて、何を考えているのか読み取れなかった。ロージーは、ベティの部屋の傍の空き部屋を使うことになった。
「妹が出来たようで嬉しい気持ちですわ。なんでもおっしゃってくださいね」
ベティの言葉にロージーの表情が曇った。
「私は今日来たばかりのただの使用人です」
ロージーは真面目な顔でベティに言った。
「ベティ様、他人をあまり信用しない方がよろしいのでは無いですか?」
「何故ですの?」
ロージーはベティの問いかけに無表情で返答した。
「私が修道院で目にしてきた大人達は信用ならない方が多かったからです」
ベティは悲しそうな顔をした。
「ここが、ロージーさんのお部屋です。私の部屋は斜め向かいですから何かあったら呼んで下さって構いませんわ」
「……こんな立派な部屋……ありがとうございます」
ロージーはベティに深く頭を下げると、自室に戻って荷物を置いた。




