表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

エピローグ

■エピローグ


「おはよう……」

 コンクールが終わった翌日の早朝。桜花と美雨と桜の木の下に集まっていた。

「おはよ」

「おはよう!」

 三人で会おうという桜花の提案からだった。

「もう、桜散っちゃったね……」

 寂しそうにいう美雨。

「この前、葉桜だったから……本当、あっという間……」

 美雨も桜の木を見ながら寂しそうにする。

「……そうだな」

 三人で青く生い茂った桜の木をしばらく見つめる。

「そういえば、今日なんでこの時間で 呼んだんだ? 桜花」

 桜花に尋ねる。待ち合わせ時間が六時くらい。この時期になると日もではじめて はいるが……

「えっと、美雨と二人で音楽をやりたいなって……結局、どっちがコンミスかも曖昧だったし……」

 ちらちらとこちらを見てくる桜花。

「ふ〜ん。なるほど、上下を決めようって腹ね?」

「ううん。ぞう じゃなくて……美雨と一緒にもう一度、音楽を作りたいなって……」

 理解したようで美雨もこちらを見つめてくる。

「……どういうこと?」

「はぁ……鈍いなぁ……」

 大きくため息をつく美雨。ものすごく納得がいかない。

「私たち二人で演ったら争いになっちゃうけど、奏司くんがいれば……素敵な演奏になるかなって……」

「あんたが上手くしなさいってことよ……奏司 」

「分かった……」

 オーケストラではこの二人が突出して上手かった。この二人だけで奏でる音に俺も興味があった。

「じゃあ、桜花。ヴァイオリン、準備しよ?」

 桜花と美雨がヴァイオリンを準備し始める。

 チューニングが終わり、二人がこちらを見る。

「……曲は?」

 二人のヴァイオリンだけで成立する曲……

「「ヨハン・パッヘルベルのカノン!」」

 二人が声をハモらせる。本来あれは三つのヴァイオリンと通奏低音もための カノンとジーグのため、違う気もするが……

「分かった」

 指揮棒を持ってきて いないため、手で指揮を振る。

「っ……!」

「んっ……!」

 最初のスタートは、桜花が第一ヴァイオリン。美雨が第二ヴァイオリンで奏でさせる。

明らかに不満そうにする美雨を見て思わず、苦笑する。

「(そんなに機嫌悪くするなよ……)」

 美雨が食い気味に音をまくしたてる 。

「(ほら、じゃあ交代……)」

 順番変更の指示をする。待ってましたと言わんばかりに大きな動きで第一ヴァイオリンのメロディを攫う 美雨。

 それを見て桜花もムカッとした顔をする。

「(分かった、交代適当なタイミングでするから……)」

 桜花とまた美雨の順番変更の指示をする。

「(桜の足音だ……)」

 彼女たちの後ろの木がまるで桜が咲いたかのような感覚に陥る。

 二人も同じ相続 を膨らませているようで、楽しみに 弾く彼女たち。

絵になるなと思うと同時に師匠に言われたことを思い出す。

「奏司、いい音楽は具現化されイメージとして一枚の絵になるんだ……」

「(あぁ、本当だったよ……)」

 この演奏をいつまでも続けていたい……そう思ったが、曲が終わってしまう。

「「「あぁ、終わりたくないな……」」」

 三人の声が見事にハモり、曲が終わった瞬間笑いがこみ上げる。

「仲良すぎでしょ……!」

「それな!」

「もうっ……!」

 こいつらと作る音楽の可能性、それはどこまでやれるものなのだろうか。

「ねぇ、奏司 ……次は全国行くよ!?」

 美雨が弓をこちらに向ける。

「私たちを連れてってくれるよね?」

 桜花も美雨のまねをする。

「あぁ、もちろん!」

 遅い春の風が頬を撫で、僕ら に新しい季節を連れてきた 。



 日本から遠く離れた遠方の地、フランス。

「なぁ、聞いたか ? あの奏司が日本の学生オーケストラで指揮を振ってるらしいぞ!」

 走ってこちらに 駆け寄ってくる一人の男性。

「へぇ、奏司が! って、どうしたの?」

 隣の白髪の男の子が嬉しそうにキラキラした目で遠くをみる 。

「 「やっと帰ってきたね……奏司。さぁ、今度こそ勝敗をつけよう……!」

少年が指揮棒を持ち爽やかな笑い を顔に浮かべた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ