1章 6.エルフの少女ミト
異世界バトル初勝利の優であった。
大村平次の守護霊より、事故後の状況を聞いた優。自分の死がもたらした事柄が、幸か不幸か大村平次の人生を変化させていた。そしてこの異世界においても、人生を変えるという状況が既に発生している事に優はまだ気が付いていなかった。
「そっかぁ。でもありがとうございます。僕に着いてきてくれて。一人じゃ心細かったですよ。それになんだか凄い力もあって、助かりました!」
{礼には及ばん。ワシが決めた事なんだからな。話は変わるが、女子をいつまでもほっといてはいけないと、ワシは思うが。}
「あ!そうだった!さっきの女の子!」
慌てて周囲をキョロキョロ見渡す優。
すると木の根本で震えている女の子がいた。声を掛けた時と同じ場所で、怖くて動けなかった様であった。優は声を掛けに行く。
「あ、あの。大丈夫?何処か怪我しているの?もうさっきの怪物はいないから安心していいよ。」
相手を落ち着かせる様に話し掛ける優。しかし相手の表情をみる余裕はなかった。
「え!?あ!やっ!」
キョロキョロと優と辺りを見渡す女の子。
「すすすすすすいませんでした。助かりました!ありがとうございます!」
状況を理解したのか、慌てた様にお礼を言う女の子を宥めつつ、優は女の子の顔を思いきって見てみた。
金色の髪は肩くらいまで伸びていて、少し垂れ目で、耳はシュッと長い。
(も、もしかしてこの女の子はゲームとかに出てくるエルフにそっくりじゃないか!?)
生で初めて見るエルフにガン見する優。もはや目の前の女の子というより、エルフという事実に驚愕し、固定スキルは何処かに行ったようであった。
そして勘違いは開始され、女の子に映る情景は杖を持ったナイトが颯爽と現れて、ピンチの姫を助け出す。というウマイ具合に刷り変わり、つり橋効果の恋愛は長くは続かないと言うが、今の彼女には届かない話だ。
「ごごごゴメンね!ジッと見ちゃって!君がその、か(なりやりこんだゲームの女の子に似てて)わ(き役の子なんだけど、僕的にはかなり)イイ(感じで最終ボスのパーティにまで連れていってて!!!)」
「え!?かかか、かわぃぃ!?」
「うん!うん?」
ボシュー!
女の子の頭からもくもくと白い煙が立ち上っていた。
気持ちの悪いほど早口になり、まさか心の声と発した声が、ゴッチャに女の子へ聞こえている事は優は知らない。
(だ、大丈夫なのかなこの子?茹でたタコみたいに顔赤いけど、もしかして!?風邪か?)
勘違いは加速するのであった。
「あ、そそうだ!僕の名前は、桜坂優。君は?」
ぎこちない自己紹介を炸裂すると、女の子は少しずつ正気を取り戻す。
「あ、名乗らなくてごめんなさい。ワタシの名前はミト。ミト・シュパールです。サクラ?ザカ?ユウ?あの、もしかしたら、ユウ・サクラザカって事でしょうか?」
「へ!?あ、ああそうです。ごめんなさい。変な言い方になってしまって。」
(そうか!この世界は外国の様に逆さになるのか!今度から気を付けないとな)
「それにしてもユウくんは凄いんですね。私より年下なのにゴブリン倒しちゃうなんて!」
キラキラと瞳を輝かせユウの手を取るミト。
「いやぁ咄嗟に身体が動い...て?え?年下?」
(いや、どう見ても僕の方が年上だろう。もう35歳だぞ僕。ミトさんって言ってたよね?15~6歳にしか見えないけど。。)
「ユウくん?さっきの戦いで、顔汚れちゃってるから、そこにある川でちょっと洗いましょうか。」
ユウの手を取り、川の前まで案内するミト。
「あ!?はぁい!?ヨロシクぉねがいしますぅ!?」
久しぶりに女の子に手を取られる感覚に感動していると、川の前まで連れてこられる。川を覗きこむと、そこには10歳程度の男の子が写っていた。
(え!?な、なんだって!?これ!?僕!?いや、見覚えあるな!確か中学生前位はこんな感じだった筈...でも一体どういうこと!?)
様々な衝撃を受けて、優の処理能力も遅れを取り始めていた。
すると、助け船が意外な所からもたらされる。
{ワシが思うに、きっと転生する際に、神と呼ばれる者がお主の肉体を若い状態に戻したのだろう。良かったな}
(まぁ身体が若返るのは、素直に嬉しいな)
そんな会話を心の中でしつつ、顔を拭く優。ミトは葛藤を続けていた。
(ユウくん!ユウくん!!なんでそんなに可愛い!そしてカッコいいの!?白馬に乗った騎士の様で、素朴で可愛い弟にも見える...これは神が与えた試練!?)
想像と妄想は留まる事を知らない。
「そういえば、ミトさんはどうしてこんな森の中に?」
顔を濡らして、拭くものが無く仕方なく少しダボッとしたハルニレ制服で顔を拭きながら話す優。
「私はこの森に住むエルフ族なんです。薬草を取りに村の外に出て、それでゴブリンに遭遇しちゃって。いつもなら魔法で倒しちゃうんですが、まだ魔法のコントロールが上手に行かず、今は魔力が切れてる状態になっちゃって」
少し悲しげな表情で話すミト。
しかし、優は別な所に感動していた。
「ま、魔法!?ミトさん魔法使えるの!?凄いや!」
目をキラキラさせて興奮していた。
「あ、あはは。でも魔力ならユウくんも持っていますよ?私とは違う。寧ろ私より凄まじい程の魔力を秘めていると思います」
「僕に魔力が!?」
(あ、そういえば大村さんの守護霊さんもそんなこと言ってたっけ)
「ユウくん!まずは村に行きましょう。帰りが遅いと心配されるやもしれませんし、お礼もしたいです。」
腕を広げ、案内しますねと言わんばかりのジェスチャーで優を村に招くミト。
優にとって異世界で初めての村であった。
ようやくエルフ到着。
更新頑張らないと(*´-`)
遅れてごめんなさい