1章 1. いつもの日常
何もかも初めて尽くしです。
至らぬ所はあると思いますが、よろしくお願い致します。
杖の事に関しては、昔から暖めていた構想でしたので、世に出せれば幸いです。
1章 1. いつもの日常
桜並木が春風でそよぐ暖かな日、桜坂優はケアハウス[ハルニレ]の正面玄関を出て、一人の高齢者と外の散歩に同行していた。
「大村さん!良い天気ですね。風が気持ちいいです!」
大きく両手を挙げて、一伸びする優。
「・・・・・」
聞こえていないのか、声を掛けられた大村平次は杖を右手に、桜並木を眺めていた。
「・・・大村さん?」
優が大村平次の前に行き、大村の顔を覗きこむ。
「聞こえとるよ!デッケェ声出すな!」
憎まれ口を叩きながら、笑顔で答える大村平次。
「それにしても今日の風は、いつもより騒ぎよる。気持ち悪い風じゃな」
大村平次はそう言いながら、歩道に向けて歩み寄り、ゆっくりと歩いた。桜坂優は大村平次の左側、杖を持つ手の逆側の斜め後ろにて、同じ歩幅で連れ添っていた。
「気持ち悪い風ってなんですか?」
笑顔で質問する優。
「こう見えてもワシは戦争で前線を戦っていたんじゃ。虫の知らせみたいなもんよ」
一歩ずつ確実に歩を進める大村平次は歩きながら答える。
「へぇ。便利な能力なんですね」
大村の後方で優が答える。
「逆だろう!虫の知らせなんて もん、感じないのがいいんじゃ。平和な日常が変わる前触れかもしれんのに」
(あぁなるほど。言われてみたらそうだよなぁ)
優は平次の言葉に素直にそう感じた。
いつもの散歩コース。いつもの日常。他愛もない会話を交わしている優たちの日常は、数分後に音をたてて崩れていくのであった。
何度も自分で読み返しておりますが、誤字脱字や半角のバランスなど、至らない所は満載かもしれません。
ご指摘等頂けると、ありがたいです。
読んで頂いてありがとうございます。