生命の神秘
馬を撫でていると騎士らしい2人が私とマルスの側にやってきて挨拶した。
「遅くなりました。ドレイスです」
薄茶色の髪とグリーンの瞳。
「ロレインです」
シルバー色の髪と瞳
「おふたりには王都まで護衛をお願いしました。マキハナを守っている騎士団の方です」
マキハナの騎士団。そのワードにユリナの記憶が甦る。
「確か、モーリテス家の先先代がトーホー地方に向かう際の要の街マキハナにはきちんとした守りが必要だと起ち上げた騎士団」
「左様です」
マルスの当然お解りでしたよねの表情と騎士の2人のほぉ~と言う声が重なる。
「まさか、お2人共ご存じなかった訳ではありませんよね」
「勿論」
「存じてます」
嘘も方便だ。マルスにはきっとばれていると思うけど。
「という訳で騎士団で腕が立つと言われている2人です」
「「お願い致します」」
「こちらこそよろしくお願いします。ところで2人歳はおいくつ」
「私が22で、ロレインが20です」
若いよね。私よりというかユリナより歳が上の人って周りにそんなにいないんじゃないのかな。夫のロイデン王子さえ年下だし、あっ精霊のノア様がいた。でもあの方に人間年齢は適用しないか・・・そんなことを考えていたらドレイスの後方から小さな子供がこちらへと歩いてきた。
私の視線に気がついたのか他の三人もそちらに視線を向けた。
「ネージュ!」
こちらに辿り着いた子供をドレイスが抱き上げた。
「もしかして貴方の子?」
「はい」
子供が来た方をみれば女の人が私達に会釈した。
「ととさま。きおつけてね」
「ああ、行ってくるよ。ネージュもいい子にしてて」
「あい」
ドレイスは幼子の柔らかな頬にキスをする。
「妻に渡してきます」
子供を抱き、妻の元に駆けていくドレイス。子供を囲み別れを惜しんでいる家族の姿。
「貴方はロレイン?」
「妻はいますが子供はまだです」
本当にここの人たちって早婚ね。もしかして寿命が短いのかな。それに関してのユリナの記憶を探してみる。
この国というかこの世界の平均寿命(人のみ)は・・・男女共100歳前後。まあ、私がいた日本とそう変わらない気がする。じゃ、離婚率が高いのかなと思ったがそれも違うらしい。うーん。
「どうかされましたか?」
眉間にしわを寄せ考え込んでいたらしい私にマルスが声を掛けた。
「うん? みなさん婚姻が早いなと思って」
「・・・それはその方が子を成すの時間に猶予が持てるからだと思われます」
確か25から35ぐらいの年齢が妊娠・出産に適してると聞いたことがあるけどそう言う事なのかしら。妊娠中の妹のセレサは25歳だったはず。
「子を授かるには時期がありますから、その時期に授かれないと一年待たなくてはなりませんし」
そのマルスの答えに私は彼の顔をガン見してしまった。はい? それって七夕の彦星・織姫的な事でワンチャンスって話でしょうか。それもその日に営みをしても必ず授かる訳ではないと?
「ユリナ様?」
「それって、常識的な話なのよね?」
マルスは当たり前の如く頷く。
早急にユリナの記憶を探ればそれらしいものはあった。それこそその時期はもうすぐで次の月の双子月が新月として現れる日となるらしい。その日以外では子供は出来ないの? ここの女性は排卵日とか関係ないの? あれっ、そう言えばユリナの体で過ごしてもうそろそろ二ヶ月弱経つけど生理がきてない? 人によっては不順な人もいるからと気にしてなかったがもしかして生理そのものが無いのかもしれない。 なんで・・・もしかして、私が知っている人間の創りと違う、人間の形をした別の生命体なのかも。これが異世界・・・不思議。ここでのひと月は前の世界と変わらず30~31日。もうすぐセレサが子を産むって事は妊娠期間は大体同じ感じになるのかな多分。そう言えばセレサの赤ちゃんまだ生まれてないよね。それも含まて屋敷に戻ったらサンと保体の勉強だわ。
周りに視線を向けてみれば確かにお腹の大きな人や赤ん坊を抱いたり乳母車に乗せて歩いている人も多く見かける。
ドレイスが私達の元へと戻って来た。
「どうかなさったんですか」
私の眉間のしわはまだとれてなかったらしい。
「生命の神秘を考えていたの」
3人の頭の上に?マークが浮かんでいるのがわかる。
「・・・とりあえず出発致しましょう」
マルスの言葉に私達は頷いた。
競馬場を疾走している馬と同じくらいの速さでユリナ達は街道を爆走していた。ドレイスを先頭にユリナ・マルスそして最後尾をロレインの順である。
街道では馬の道と馬車道とで分かれているためこれだけ爆走していてもそんなには迷惑をかけてはいないと思うけど、他の荷台や馬車を見かけるとやっぱり少しは心配になった。諸々すいません。
峠にさしかかる前に先頭を走るドレイスの馬が速度を落とし、私達の馬もそれに続き馬を止めた。
「日が暮れる前にこの辺に野営を組んだ方がいいかと思いますが」
「そうしましょう」
マルスの返事を受けそれぞれが馬を下りようとした時だった。ドンっという音と共に森の木々の間から空に光の玉が打ち上げられた。その色は赤。
「緊急事態の照明弾だ」
ロレインがいち早く馬の向きを変える。
「位置からして追い向いた馬車からかもしれませんね」
「戻るぞ。ロレイン先に行け!」
ドレイスの声にロレインの馬が駆け出す。他の3人も馬の向きを変え後に続いた。
来た道を戻る事数分、街道には2台の馬車と人が数匹の魔物に取り囲まれ応戦していた。
「ユリナ様はここでお待ちを。ドレイスは右、ロレインは左、私は残りを。いいですね」
「「はい」」
3人は魔物へと向かって行く。あれよあれよと言う間に魔物は片付けられたがそのうちの一匹が最後の力を絞ってユリナの所に突っ込んできた。がその瞬間それは断末魔共に粉々に消え去った。
「なに?」
「髪飾りに付けた魔除けの効力でしょうか。実証実験済みと言う事で商品化ですね」
そう言えば商品のプレゼンの時の髪飾り着けてた。こんなに効き目あるなんてすごいな。まあ、どれくらいの魔物にどの程度効果があるかはもう少し調べてからの方がいいかもしれないけど。
「ありがとうございます!」
馬車の御者らしいと数人の護衛の方が馬を下りた私達へと頭を下げた。
「助かりました」
「珍しいですよね。この辺は余り魔物は出ない方なのに」
ドレイスは首を傾げる。
「そうなんですよ。なので護衛の数もそんなに多く頼んでいなくて」
「兎に角大事に至らなくてよかったと言うべきですね」
マルスの言葉に皆が頷いた。
「あの、もし野営をするのであればご一緒にお願いしたいのですが」
「構いませんよ」
「ユリナ様」
「わざわざ戻って野営をすることをないでしょう。ここにしましょう」
馬車から出てきたのは子供ずれの家族が多く、その中にはやはりお腹の大きい女性もいた。そんな人たちをみてこの場を離れる事は出来ない。きっとユリナもそうするはず・・・だよね。
暮れ始めた空を見上げたら一匹の鳥が旋回していた。巣に戻るのかなそんな事を思いつつ、テントを張り食事(マルスの特製スープ)して眠りについた。深い眠りってこういう事なんだなと思う位、目を覚まして驚いた。




