初手合わせ+怒らせたら怖い人ランキング
剣同士がぶつかり合い金属的な音が響く、剣を間にユリナとローランドの姿。
なぜか私は彼と剣の稽古をしています。どうしてこうゆう状況になったかと言えば私がローランドにお茶会の話を聞きに登城したら彼は剣の稽古中で、そのままこの間の約束もあり手合わせをすることになってしまったという流れです。
「ユリナ、少し鈍った?」
「私これでもついこの間まで寝込んでたんですけど」
「・・・ああ、そうだったね」
それだけですか? てっ言うか女性相手に容赦ないんですけど。
ローランドの剣がユリナを攻める。ユリナはそれをかわしつつ剣を進める。
側にいる騎士団たちは息を飲み2人の様子を見守る。
でも不思議な事に私はローランドの動きが読み取れた。それはユリナがこれまで彼と剣を交えた記憶の蓄積のお蔭だろう。彼女の体は私に関係なくローランドの剣をかわし、受け止めそして攻撃していた。その姿はそうまるでベル◯ラのオ◯カル様のよう・・・大好きで、アニメ放送で彼女が亡くなった話を見た時は号泣した。もちろん初回ではなく再放送ですよ。
ローランドの相手をしている私の視界の隅に一緒に登城した執事のマルスの姿。そこにロイデン王子が息を切らし駆け寄ってきたのが見えた。
「よそ見はダメだよ」
ローランドが立ち位置を変え、ユリナの視界からロイデンの姿を遮る。
ロイが来た事でこの後ローランドにお茶会の話しを聞くのは無理かもしれない・・・なので今聞くことにした。私はローランドと間合いを詰める。
「ローランド、この間だお茶会の事を覚えていて?」
「う~ん、何となく」
「その時の会話の内容とかは?」
「これと言って・・・変わった話は無かったけど、どうして?」
「じゃ、何事もなく終わったのですね?」
2人の剣がぶつかり押し合うと、ローランドの瞳がじっとユリナを見つめる。
「私は途中でその場を退席したから、その後どんな話をしたのかは知らない」
私は彼の瞳を見つめ返す。そこに嘘は無いように見えた。だとしたらローランドが居なくなった後の話になる訳で、誰に話を聞いたものか・・・マナ妃、ロテスタ―王子にリリ姫、みんなそんなに親しくないんですけど。
「ユリナ、お茶会がどうかしたの?」
「その時の記憶が曖昧で、何か大事な話をしていた様な気がしたから・・・でも気のせいでしょう」
私はローランドの剣を押し返し、攻める隙を与えず攻撃し続けた。
「えっ、ちょっと、なに急に」
「遅い!」
カキーンという音が響いたと同時にローランドの剣が宙を舞い地面に転がる。
「ひどい、ユリナ」
ローランドは自分の手をさすりながら口を尖らせた。
背後から駆けてきた足音に私は振り返る暇もなく抱しめられる。
「ロイ?」
ロイデンはユリナをその腕に閉じ込めながら、ローランドを睨む。
「お前な」
ローランドの瞳が呆れたようなイラついた感じでロイデンを見る。
「勝負はあった。もう、いいでしょう」
「ああ、ユリナとはもういいよ。今度はお前が相手だ」
「ローランド様。申し訳ありませんが彼と私はこれから約束がありますので、貴方様のお相手はまたの機会に」
「えーつまんないな」
「鍛練を怠らないようになさいませ。ロイデン様は以前より剣の腕は上がってございますよ」
「どうかな?」
鼻で笑ったローランドにロイデンがユリナの身体を離し前へと進み出る。
私はそんなロイの腕を摑み引き止めた。
「では、失礼いたします。ローランド様」
持っていた剣を騎士に渡し、私はロイの手を引きマルスの元に向かう。
「お疲れ様でございました」
「着替えるわ。その後リリ姫に会いたいから約束を取りつけて」
「リリ姫様にですか・・・難しいのでは」
「私ひとりだったらね」
繋がれている手をじっと見つめているロイに私は視線を向ける。マルスはそれを確認し頷く。
「ロイ」
私の呼びかけに肩を揺らすロイ。彼の視線が自分を見て首を傾げた。きっと昨日自分で言った事を守っているのだろうな。
『貴女がいいと言うまで僕から話掛ける事はしません』
見つめるロイデンの碧眼の瞳にユリナが映る。
繋がれていない手で私はロイの少し乱れた前髪にふれる。
「ロイ」
私から声を掛けているのだから問題ないと思うのだけど。
「ロイ」
開きかけた彼の唇が少し震えて、再び閉じる。
「・・・返事を返していただけないなら永遠に話しませんよ、ロイ?」
「話していいの?」
「貴方が勝手に決め事に私は同意した覚えはないけど」
嬉しそうに笑ったロイデンは繋がれているユリナの手の甲にキスをした。
ユリナがロイの事をどう思っていたかは私にはわからない。でも、私的には彼の事は放って措けない人になりつつある。まあそこに恋愛感情があるかどうかは別として、今の所母性愛に近いかな?
「もう、距離を置かなくてもいい?」
「いいですけど、私がダメだと言ったら駄目ですよ」
「うん。なるべく守るよ」
ロイの唇が私の頬をかすめ、そのままお互いの唇が重なる。
「んっ・・・」
深くなる口づけに私が慌てた瞬間、ロイの体が私から離れた。
「ロイデン様、当主の配偶者としての行動をお願いします」
マルスに首根っこ摑まれたロイデンが小さく息をつく。
「君もかマルス殿」
「申し上げておきますが、モーリテス家のユリナ様に仕える者全てがそうでございますよ」
ロイデンの襟を正しながらマルスは声を低くして更に続ける。
「わたくし達の主に害があるとわかれば、消すだけです」
なんかマルスが何時ぞやのサンとダブって見える。ちょっと怖い。ロイも固まってるし・・・これがここでの普通なのかモーリテス家でだけなのかわからないが、うちの者は怒らせないようにしよう。うん、そうしようそうした方がいいな。
「・・・マルス」
「はい、ユリナ様。お仕度を整えましょう」
何事もなかったようにマルスは私とロイを先導して歩いて行く。あれ、ここは一応王宮だよね。うちの屋敷じゃないよね? 王宮も家と変わらずに勝手知ったる的なマルスに私は黙ってついて行くしかありません。
私の中でこの時からマルスが怒らせたら怖い人№1になりました。勿論№2はサンです。
そんな事を考えていた時、背後から視線を感じ私は振り返る。わかってはいたがローランドがこちらを見ていた。その彼の青い瞳の色がとても深く沈んでいる様に見える。
「ユリナ」
ロイの声に私は彼を見て笑みを浮かべ頷く。
「ユリナ」
ローランドの声。私はローランドに視線を戻す。
「また、手合わせを頼む」
私は手を胸に剣を掲げる身振りをしお辞儀して答えた。幼馴染みで、良き友でありそれ以上でもそれ以下でもないそんなおもいを込め微笑んだ。
ロイの手が私の腰にまわされ、身体を抱き寄せると耳元で囁く。
「僕だけに微笑んで」
ごめんなさい。あのセリフ言ってもいいですか、あ◯~い! 私は顔を赤くするどころか表情筋が固まり、そのまま鍛練場を離れる事になりました。




