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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第三章

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075.「世界を記し続ける者-1」

 

 覚悟が決まると案外気持ちが落ち着く。そんなことを感じていた。受験の結果を見る時、仕事の評価を聞くとき……まあ、色々だ。そんなあれこれを頭に浮かべながらも、生き物の年齢を見れるという遺物で俺を見てしまったらしいイリスへと……逆に俺から声をかけるのだ。


「ん? どうした。故障か? まあ、遺物はいつ壊れるかわからないもんな」


「物は正常のはずさ。ファクト、君はいつの時代の人間だ? いくらなんでも10代前半はおかしいだろう」


 とぼけた俺の声に、イリスがゆっくりと顔を上げる。その表情は真面目だ。少しばかり、怯えも見える。そして、その口から衝撃が飛び出した。俺は何故だか、その数字に心当たりがあるようなないような、不思議な気分だった。


 ジェームズらからの驚きの視線が刺さる。誰も嫌悪等の感情を感じないのがひどくうれしかったように思う。


「そうだな……話す時か。とりあえずはここから移動しないか?」


 こんなところで立ち話じゃなく、聖女像のあった場所なら椅子もたくさんあった。少し、長くなりそうだしな。反対する者はおらず、無言の移動……そしてしばらく足音だけが響き、視界が開ける。


「あ……」


 それは誰の声だったのか、見れば聖女像あたりを覆っていた光が消えるところだった。結界が効果時間を迎えたのだ。空気中に光の欠片が舞い、不思議な光景を生み出していた。


 誰とでもいうでもなく、聖女像のそばの椅子に座り、息を吐く。さて、何から言った物か。ごまかせるのが一番なのだが……。


「実は老け顔で10代なんだ、は無しの方向で」


「うぐっ」


 口に出すべく息を整えたところでジェームズからの先手。思わずうめいてしまうが、それがかえって俺の緊張を取り除いたようだった。小さく笑いながら手を開いては閉じ、と繰り返すことで気持ちが落ち着いてきた。


(仕方が無い。わかってる範囲で良いか)


 異世界から来ました、というのは無しだろう。ただでさえ厄介だし、自分が本当にそうなのかもわからない。案外……そう、案外俺の目覚めが悪かっただけで体は元々この世界にあったという可能性だってある。



「俺自身もまだわかってないことがほとんどだけどそれでよければ」


 そう前置きして、俺は語る。俺が生きていた……プレイしていたゲーム時代のことを。今から1000年は前のことをつい昨日のことように語って見せた。


「古代人……か。むしろそのほうが説得力があるのが不思議だね」


「あくまで俺の記憶が正しければ、だけどな」


 一番先に口を開いたイリスへと俺は答え、証拠になるかわからないがとつぶやきながらアイテムボックスから銀貨の山を出した。さらに今であれば遺物扱いだろうマジックアイテムたちを新品の状態で取り出す。発掘した、というには逆にうさん臭くなる希少品の山だ。

 結局、今から1000年以上前から何かが原因でこの時代に来たようだということにした。


「少なくとも、あいつらは全力で狙ってくるわね。色々な意味で」


「多分、ね。今度は負けないよ~」


 姉妹はどこか違う答えを返し……。


「すっげえ! 今度何かくr イテッ」


「言うと思った! もう、いつも自分で道は切り開くんだ!っていってるのに」


 事の大きさを感じているのか、どこか無理した様子のクレイとコーラル。ジェームズは1人、何かを思い出すような瞳で俺が出したアイテムの山を見ている。きっと彼は過去、同じような儲けの山を分配するときのことでも思い出しているに違いない。


「いや、聖剣くれ!とじゃなきゃたぶん大丈夫だけどさ……」


 さらに元気に騒ぐクレイがなんだかかわいそうになり、思わず俺はそうつぶやき、今度何か作れたら作ることを約束した。実際、材料さえあれば国宝級の武具だって作れるはずなのだ。後々の影響を考えるとよく考えて作る必要があるわけだが。


「そういうわけさ。一緒にいると厄介ごとが増えるかもな」


 皆に向けてわざとらしく肩をすくめる。本意ではないが、事実、俺の存在が不用意に表に出ればそれは戦争すら呼びかねない。どうせ巻き込まれるなら、一緒にいるという相手には支援ぐらいはするつもりだ。俺自身、もう少し強くなりたいしな。


「おかしいな。俺の気のせいか? 既に厄介ごとばかりだと思うんだが」


 何をいまさら、と返してきたジェームズをきっかけに、周囲に笑いが満ちる。誰も、俺を否定しなかった。そのことになんだか心が温かくなるのを感じた。


「それで、君はこれからどうするんだ? 世界を征服したいならそうしてるだろうし、隠居したいならそうしてるだろう。私としては研究が進めばそれが一番なんだが」


「最初はわけがわからなかったさ。今は、できれば今を生きる人たちの力になれればと思ってる。世界を飲み込む何かがあるなら、それを凌ぐ力を持った英雄に会えればともね。いざとなればその手助けができればいいさ、こうしてな」


 どこか1番冷静なイリスへと向き直り、おもむろにアイテムボックスの中からとある指輪を取り出して見せた。瞬間、空気が変わったのがその場にいる全員がわかったはずだ。そういう俺自身も、まさかここまでの影響があるとは思っていなかったが。


 取り出したのはメイン装備候補となる1つ。火属性攻撃を物理、魔法問わず80%カットする効果を持った指輪。代償は発動一回ごとの魔力消費。ついでに装備してから効果が出るまでは1日かかる。それでもコーラルレベルであれば実用に耐えうる程度の消費だ。


 チョコ菓子より一回り大きいほどの大き目のルビーのような宝石を、3匹のサラマンダーを模した台座が固定し、宝石部分は常に揺らめいて、中に封じられた何かを表現している。その場に漂うオーラは物語で主要人物が宣誓を行う直前のような沈黙を生み出す。


「だけど、もっと世界を見たいと思っている。俺は今の世界の事を何も知らない。ドワーフやエルフのような亜人にも協力すべきなのかもしれないし、意外と何も起きていないかもしれないからな」


「……いいんじゃないかな。俺も、もっと大きくなりたいと思ってるし」


 おもむろに口を開いたのはクレイだった。キラキラと、若さで満たされた瞳が力強く俺を見つめる。悪く言えば若いからわかっていない、と評されそうな顔だ。俺は何度も、こういった顔を見て来た。新しいアイテムを手に入れ、行くことの出来る場所が増えた時などにはみんなこういった顔だった。


(ああ……懐かしい)


 その瞳を見て、いつかの記憶を掘り起こす。ゲームへの楽しみ、やりたいことへの情熱。全てが入り混じった、わくわくとした感覚。それはあらゆる困難への原動力になる。この世界では……何がそれに値するのだろうか? 俺は何が出来て、何のために世界を旅するのか。


「よく言った。クレイ、その意気だ」


 笑い、勢いよく少年の背中を豪快にたたくジェームズの姿にハッとする。彼らのように、手分けすればいいのではないかと。1人の大英雄ではなく、100人の英雄を導く……それは一種の天啓のようですらあった。


「ファクト、心配しなくていい。みんな、半分は君の事をわかった上でこうしているし、半分は単純に事が大きすぎて横においているんだ。君の事を知ったからと、関係を無かったことにしたくない、そういうことさ」


「そういう……ものか?」


 勿論、これはここにいる面々がその意味では特殊なのだとはわかっている。ほとんどの人は話を信じないだろうし、ひどければ人外扱いだろう。それこそ、つかまる事だって考えられる。

 どこぞの国が総力で自分を手に入れようとする事だってありえるだろう。色々と積み上げていかなくてはならない。


「しばらくは大きな戦いに顔を出しては少し目立って、アレ? あいつ……。ってのがいいんじゃないかしら」


『それはいい案ですね。不幸にも、今の世界には争いはかなり満ちてるでしょうね』


 キャニーに答えたのは俺ではなく、ランタンもどきに入ったままの精霊だった。その場の視線が精霊のほうを向く。俺だけでなく、皆にも聞こえるというのは相当な物だ。精霊の力が桁違いという証明でもある。


『……とりあえず、話は済んだも同然なのでしょう? ファクト、その聖女像を彼らに使わせてあげなさい』


「おっと、そうだったな。その板の部分でこの像に祈ってみてくれ」


 力が封じられているとはいえ、揺らめく光はまだ黒い彼女?がその視線を聖女像に向けた。その示す意味に気が付いた俺は椅子から立ち上がり、床面の素材の違う部分を指差して祈るように伝えた。その時には、なりたい自分を想像するようにと添えて。ジェームズたちは何のことだかわからない様子だったが、意味が無いことは無い、と判断したのかおもむろに祈りをささげはじめる。


 最初に光ったジェームズは、その感覚を確かめるようになにやらポーズをとっている。


「なるほどな。いっそのことこの辺りを砦にして、国の訓練施設でもいいかもしれん」


 自分の事を把握するのも一流の冒険者の素質とでも言おうか、彼は自分の何が変化したかをおおよそ掴んでいるようだった。確かめるようにあれこれとポーズを決めている姿は妙に様になっていた。


「途中で見つけた物と、これを報告しておこうかなと考えている」


「うむ。そのときはぜひとも研究人員に加えてほしいものだ」


 そう答えるイリスは祈りをささげるつもりはないようで、ペタペタと聖女像の周りをチェックしていた。続けてクレイ、コーラルと祈りをささげ、それぞれに光に包まれる。こうしてそばにいると、2人とも大きく力が増加したのがわかった。


 言うなれば今まではベースのレベルアップだけの能力補正だった物が、しっかりと配分されたような物だ。自然と、自分の望む未来へ近づくように割り振られたようだ。


「おや? これは何だ?」


「ん? 何か隠してあったのか?」


 声を上げたイリスのそばへと歩み寄ると、小物入れ程の空間。中にあったのは金属製の輪。一瞬腕輪かとも思ったが、装飾からはそんな感じではない。何かがはめ込めそうな?


「持ち帰って調べましょうか」


「後から来た奴に取られてもつまらないもんな」


 背中からかかるコーラルの声に頷き、物は回収し……連れ立って街に戻ることにした。そろそろ陽の光を浴びたいという気分でもある。


『わたし、このままついていってもいいのかしら?』


 ランタンから響く戸惑いの含まれた声。余裕が出てきたのか、精霊の声は小さな鈴を転がすような、耳に気持ち良い声となっていた。


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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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