表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/367

059.「戦いの狼煙-5」



「襲撃そのものとは関係がなさそう……ってことか?」


「おうよ。数も少ないし、連携らしいものも無い」


 馬車とその荷物を予定されていた場所に置き、既に職人たちが仕事を始めている場所に増援予定を伝えた後、酒場に寄るとマスターからこんな答えが返ってくる。


 既にジェームズも、同じような答えを聞いた後のようで2人を引き連れて別の場所に行っている。冒険者同士の会議に参加するためだそうで、ここには俺だけだ。出遅れたってわけだ。


「皆も、まさか額面どおりに約束を守るわけが無いと思ってるからな。さあ、襲撃か!ってぴりぴりしながらの生活さ」


 そんな返事を返してくれるマスターは、ひどく疲れた様子だ。商売は繁盛するとしてもあまりうれしい繁盛の仕方ではないからだろう。いつ終わるともわからない襲撃のために仕入れだってうまくいかない部分も出て来てるに違いない。


 ここは多少愚痴めいた話だとしても聞いておくのがお互いのため……かもしれないな。現に、休憩と思わしき人間もどこか落ち着かない様子だ。日常が遠いのだ。と、入り口付近でどこかの母親と思わしき女性が、誰かを探すようにキョロキョロとしている。エプロン姿の女性が冒険者とは思えないし、その状態で酒場に一杯、なんてこともなさそうだからだ。


「何か、あったのか?」


「え? あ、はい! ここにこのぐらいの兄妹来てませんか?」


 気になって聞いてみると、やはりというかなんというか、探し物のようだ。自分の背丈よりやや上に手をかざし、必死な様子である。迷子か……厄介なタイミングだな。


「その兄妹は冒険者か何かってことでいいのか?」


「は、はい! 街が騒がしくなる少し前になったばかりです。今日は薬草を探すって、街を出て行ったっきり。もう戻ってる時間のはずなんですが……遠くへ行っていないといいんですが」


 座り込んでしまう女性はひどく青ざめている。髪は長く、体つきも華奢だ。母親、というにはまだ若々しい感じである。顔も童顔で、しっかり化粧すれば未婚でも通用しそうだが、そんな母親の子供となれば俺が思ってるより若い、というより幼い可能性が高い。


「ちょっと待ってろよ」


 俺は女性に言い残し、マスターのいるカウンターへと戻り、奥で何やらごそごそしていた相手を呼び止めて事情を話す。たぶん、俺も焦った表情を浮かべていたと思う。


「あいつらか? まだ戻ってないな。だが採取先は町から少し走ればすぐの雑木林だ。そう危険な場所でもないはずだが武装もなしで出歩くにのは……な。そういうことか……」


 ちらりと、俺を意味深に見るマスターの表情は硬い。その視線に込められた意図を読み取りながら俺は思案する。万全を期すなら誰かと一緒がいいのは間違いない。

 だが、この状況で1人だとしても冒険者を減らすのはあまりよくない。最悪、逃げるだけなら俺がアイテムを遠慮なしに使えばなんとかなるだろう。そう考えた俺は、母親に捜しに行く事を伝える。


「ありがとうございます! 帰ったらしっかり言い聞かせないと!」


「無事に連れ戻すから、しっかりしかってやってくれ」


 母親には酒場で待つように言い残し、俺は駆け出した。外に出る前に門番に事情を話してそれらしい2人が来たら酒場まで行くようにと伝言を依頼しておく。どうやら顔なじみの様で確かに戻ってきていないということに随分と驚いていたから伝え忘れということもないだろう。



(投擲用の投げナイフに、回復ポーション、後は……)


 街から出て走る間、必要になるかもしれない装備を選んでいく。ゲーム時代のように、虚空に浮かぶウィンドウを手早く操作しながらである。他から見たら空中に指を動かしながら走るという変な奴だろうな、うん。


 そして、それらしき林が見えてきたところで、気配に気がつく。人間ではない、ある意味慣れ親しんだ物……モンスターだ。しかもこれまで感じたことのない気配だ。アイテムの操作を止め、戦闘に集中する。


「ちっ! いるじゃないか」


 小さく愚痴りながら、移動するその気配のほうへと方向を変える目に飛び込んできたのは小柄な相手。一見すると小動物のように可愛いと思う人もいるかもしれない。だがそいつらは俺を見るなり、ホラー映画ばりに顔を怒りに染め、走ってくる。


 甲高い鳴き声は犬の遠吠えのよう……叫びの主はコボルトだ。声の量から、数は多くないようだ。と、コボルト以外に人間の悲鳴と思わしき声が聞こえる……近い!


「誰かいるか! いるならこっちに逃げて来い!」


 届くかはわからないが、一度足を止め、大きく叫び、再度走る。まばらな木々の間を走りぬけ、林の奥へと進むと、前に人影らしきものが見えてくる。数は2。後ろになにやら小さな影も見える。


(間違いなさそうだ。間に合ったか)


 見えてきた人影は大柄、というよりスタイルのいい、というべきな少女と、若干やわな印象を受ける少年と、の組み合わせだった。2人とも、こちらを発見すると喜びをあらわにし、速度を上げる。後ろのコボルトの数はざっと10匹。そのまま攻撃しては確実に取りこぼしが出る。


(ならば! 数を出せばいい!)


 俺の横を2人が通り過ぎるかどうかというところで、急激にブレーキをかけながらイメージを固め、叫ぶ。ここで通せんぼだ!


盾生成(クリエイトシールド)!!」


 ほぼ同時に生み出される何枚もの大盾。1つ1つの耐久は平均的なもので、制約の時間は10数分と短い。それでも1回の戦闘を行うには十分であるし、使い方次第である。響くぶつかる音と悲鳴。俺の目の前で、2人を追いかけてきていたコボルトが情けない声を上げるのであった。


「無事か?」


 今の盾の軍団に質問が来たらどうしようかなあと思いつつ、安否の確認をするために後ろを向かずに聞いてみる。コボルトたちは何が起こったのかとパニック状態であることが気配からもわかる。


「はーはー……なんとかっ」


「もう、兄さんだらしが無い!」


 俺の問いかけに、息の上がった様子の少年、兄に思ったより疲れていなさそうな少女、妹側。ちらりと見えた先ほどの装備からするに、女戦士な妹に、魔法使い駆け出しといった様子の兄、というところか。


 俺はコボルトの側を向いたまま、突然の衝撃から復帰し、盾の合間をぬってこようとする何匹かに投げナイフを投げつけ、けん制する。


「戦えるならやるぞ! 魔法は火以外なら何でもいい! ぶっ放せ! 妹のほうは俺の後ろで相手がひるんだ隙をつけ!」


 俺は叫び、2人が答えて構えるのを見てコボルトへと迫る。時折、敢えてコボルトの前に飛び出ることで注意を引いたり、ナイフを投げつけてけん制することでコボルトはその数をあっさりと減らす。


「……よし、よさそうだな。大きな怪我は無いか?」


 動くコボルトがいなくなった事を確認し、2人に振り返る。2人は各々、自分の怪我の確認を行っており、目立った問題は無いように見える。ただまあ、ああいう奴は刃に毒をぬってることもあるからな。


「走るときにこすったぐらいです」


「こっちもよ。……貴方は?」


「俺の名前はファクト。とりあえず、薬草を集めに来た2人で間違いないか?」


 構えをといた2人に、街での母親からの依頼を告げ、事情を確認することにした。やはり薬草を集めているうちに思ったより奥に来ていて、迷ってる間にコボルトに遭遇、逃げていたということだった。

 体勢を整える前の襲撃だったので、とにかく逃げていた形だ。先ほどの戦いを見る限り、戦えなくはないようにも見えるので、やはり経験の差ということだろうかと考えた。


「そうでしたか……ありがとうございます」


「お母さんに心配かけちゃったね」


 反省した様子の2人に満足し、俺は彼らを連れて戻ることにする。ついでに何か問題が起きてないかを見回ることが出来たので俺にもメリットはそこそこあった依頼となりそうだ。幸いにも、先ほどの現象は普通にまだ見ぬスキルの一種だと思ってくれたのか、道中で質問を特に受けることは無かった。


 街に戻った俺たちを待っていたのは、歓喜の母親と、軍到着の知らせ。ついに、本番が目の前となったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご覧いただきありがとうございます。その1アクセス、あるいは評価やブックマーク1つ1つが糧になります。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ