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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第二章

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046.「暗闇よりの叫び-3」

 



「戻ったか。無事……なようだな」


「まあな。なんとかなったさ」


 教会への報告のためにたまたまキロンの工房前を通った時、依頼主であるミストがいた。そばに職人たちのいたので詳細は避け、依頼自体は終わったことを告げる。状況を察した職人たちが工房に引っ込むのを待ってから無言で遺品となる手斧だったものなどを入れた布袋を差し出し、首を振る。


「彼は駄目だったよ。その代わり……にはならないが、教会関係と思われる場所はあった。そばに彼の遺体もある」


「そうか。……冒険者とはそういうものだと、彼も納得してくれるといいのだが。ああ、場所はどこだ? 遺体回収と確認に行かねばな」


「覚えているうちに書き出しちゃいましょうか」


「そうだな。クレイ、任せたぞ」


「もう覚えてないの? ジェームズも年寄、イテッ!」


 工房で紙を貰おうとしたが、コーラルが持ち歩いているらしい紙を取り出してくれた。外でも書きやすいようにか、木の板のようなものに張り付けてあるのでそのままでも書ける。きっと俺と出会うまではこんな感じだったのだろうと思われる掛け合いが繰り広げられ、俺も含めて4人での地図作成がすぐに始まった。


 曲がり角の位置や、崩落した穴、行き止まり等。ちなみにペンは無く、何か練りこまれた様子のクレヨンのようなもので書いている。太さの分、出来上がる地図は大分荒いが、現地で確認しながら使うにはまったく問題ないだろう。


「なるほど。これならすぐに行けるな。助かる」


 ミストはそれを懐にしまうと、すぐに教会のほうへと去っていった。恐らくは捜索のチームが組まれるか、また依頼が出るかということなのだろう。直接再度回収用の依頼を頼まれなかったところから、教会の人員で自ら行うのではないだろうか?


「さて、俺達はまた稼ぎに行って来る。ファクト、そのうち頼んでもいいんだろう?」


「勿論。しばらくはここに……いられるからな」


 自らの剣の鞘を叩くだが今回見た限りでは痛んでいる様子もなかった。やはり、より良い物があればその方が良いという考えなのだろう。物に愛着を持つのも大事だが、必要に応じて切り替えが出来るのも生き残る秘訣だからな。


「やった! よーし、次は討伐でも、掃討の依頼にしよう!」


「クレイ、私達3人なんだから、そこまでは出来ないと思う……」


 作ってもらうお金を稼ぐんだ、と意気込むクレイをたしなめるコーラル。そんな姿を見ていると俺ももっと若い姿でこの世界に来たなら恋物語の一つでもあっただろうかなんて思ってしまう。まあ、ロマンスの似合う年恰好だと思えばいいか……。


(少し、成長したか?)


 話している間、よく見るとクレイの体つきも、変化していることに気が付いた。恐らくだがレベルアップをしたのだろう。どうもこの世界ではレベルアップとは呼ばないようだが、魔物を倒すと強くなるのは経験上、知られている。文字通り、実戦に勝る経験は無いということだろうか?


(……待てよ? 俺自身にはレベル表記があるみたいだが……)


「じゃあそっちも頑張れよ!」


 思いついたことを確認するべく、クレイの肩を叩きながら送り出す。そのまま遠ざかる3人を見送りながら、クレイの情報を見るべく虚空のウィンドウに視線を走らせた。マナー違反……となるのかもしれないがこの世界じゃこれが出来るのは俺だけだしな、難しいところだ。


 とはいえ、結果は、微妙なものだった。人間であったり、健康体であることを示す部分、体力や魔力であろうバーなどはあったが、数値設定がされていない。まさかゲームのようなシステムがあるわけはないので、きっと相手の力を何かしらを媒体に読み取っているのだと考えた。


 瀕死かどうかはわかるし、状態異常もわかりそうであるから、非常に便利ではある。そしてレベル表記がある部分は具体的な数字はなく、ただの色付きのバーだった。表記はぼやけているのだが、なんとなく、どのぐらいだというような感覚だけ伝わってくる。かなり自分と差があることだけは伝わってきた。


 今度しっかりとこの世界での強さの比較方法を聞いておくことにしよう。経験が貯まったら、はい、レベルアップ、などということはこの世界では聞いたことが無い。力がみなぎる、光を見た、ささやきが聞こえた、といったことがあるようだ。


 問題はそれらの全体的な統計であるとかそういった情報は整理されていないことだ。であれば、仮にレベルアップがちゃんと存在するとしても例えば冒険者ギルドといった組織で利用するのは難しいだろう。


(英雄を育てるなら、そういうところもなんとかしないといけないか……)


 また考えることが増えてしまった、そう思いながらもキロンの工房へと依頼の完了とまたお世話になることを報告に向かう。




「これと、こいつだな。駆け出し冒険者の依頼というか、お願いってやつは」


 今日はこまごまとした作成依頼が多く入っているようで、職人たちは忙しそうに駆けずり回っていた。キロンからはよかったら対応してほしいと頼まれ、そのうちのいくつかを受けることになった。


 確認した依頼は、駆け出し冒険者の相談事。工房で受ける依頼かと思わないでもないのだが、武具を見繕うことをセットにしているということで全く無関係とはいえないからのようだ。もちろん、これが上手くいけばその冒険者は自然とこの工房に通うことになるだろうからいわゆる青田買いってことになるのかもしれないな。


「どいつもこいつも若いな……そういうもんなのか」


 一人、依頼の書かれた紙を前に呻いていた。どう考えてもどの依頼主も碌に経験があるようには思えない。精々が村や町周辺での討伐程度だろう。それすら、乗り越えたのなら大したものだとは思うのだが……。当然のことながら、この世界にまともに養成学校などあるわけもなく、貴族の私兵、国所属の軍人等になるにもお金や準備が要る。冒険者として外に出ていく若者もそれなりにいるわけだが、フィールドに旅立っては、時に戻ってこないのが残念ながら現実だ。それを防ぐならば、最初から集団で戦うということを前提として動くしかないだろう。


 親としても、安全な職についてほしいというのは共通なようだが、往来の護衛であったり、モンスター退治などにより生活は維持されているのだから、その担い手である冒険者等になりたい、という意思は無下にはしにくいようだ。とはいえ、早々強くなれるはずも無く、何より武器というものは扱いは難しい。


「やっぱりよ、子供を亡くす親ってのはいないほうがいいからな」


 帰ってこないというあたりが口に出ていたのか、そばにやってきたキロンの言葉はひどく、重い。この依頼もそんな若者の1人にならないように手助けしてあげたいという気持ちからかもしれないな。


「依頼内容はこの記載どおりでいいんだな?」


「ああ、この依頼主はまだそこにいるぜ」


 キロンの指さす先には、出来合いの武具が並べられたコーナーで真剣な顔をして選んでいる少女。やや背格好は高く、猫科を思わせる体つきをした子だ。ぱっと見では、大きな武器を使う感じではないがただの街にいる娘、にしては十分鍛えられているようだ。


「おい、そこの、アンヌだったか? お前さんの依頼、こいつが受けてくれるってよ」


「え? やったっ! すぐなんて女神様に感謝しないと!」


 声をかけられ少女、アンヌは振り向くや否や、こちらに駆け寄ってくる。そして無遠慮に俺のほうをジロジロと見た後、何故か頷いた。値踏み……とは少し違うようだな。


「うん、お願いするわ!」


「……今ので何を納得してくれたかはわからないが、全力を尽くそう」


 アンヌの発する甲高い声に、一瞬いないはずの人間を思い浮かべるが、それも一瞬のこと。今は目の前の依頼に集中するべく、依頼書に目を通す。依頼金そのものは以前手掛けた自警団員の彼よりは潤沢だ。同じ金を出すならより良い物を、というところだろう。


「今持っている剣だと動きにくい、そのために動きやすい武器を?」


「そうなのっ! これだと、いちいち振り回さないといけないじゃない? 私、森の中にいることが多いのよね」


 動きも見たいと告げて場所を変え、工房の庭に2人して出る。道すがら話を聞くと、自分は家族と街のために周囲で薬草などを集める仕事をメインに過ごしているらしい。自然と林や森など、木々の多い場所が多く、安い長剣では戦いづらいのだという。確かに、引っかからないように戦うのは大変だし、空振りが多くなれば体力も消耗するだろう。かといって手斧ではいざという時にリーチに不安が残るというのはわかる話だ。短い物の方が使いやすいのは間違いないんだがな……。


「とりあえず、その剣で動いてみてくれ」


「これで? うん、わかった」


 アンヌは俺の言葉に特に疑うことなく、自己鍛錬の時の動きなのか、次々と剣を振りぬいていく。具体的な数字はわからないが感じる強さから言えば動きは悪くない。むしろ速い方じゃないだろうか? 我流なのは間違いないみたいだが、これなら街のそばにいる相手なら十分だ。より強く、より安全にか……。


「そこで止めてくれ。ちょっと待ってろよ」


 俺は建物に入るフリをして物陰で武器生成を実行、3本ほどの武器を作り出して持ってくる。今よりも特徴を変えた物になる。斬る、突く、重さを叩きつける、といったところだ。特に凝った姿にはしてないからアンヌには持ってきたように見えるに違いない。


「じゃあ、これらで同じ様に動いてみてくれ。変だな、と思ったら次に変えてくれていい」


「??? 良くわからないけど、うん」


 アンヌは素直に頷き、律儀に同じ様に動こうとする。だが、上手くいかないようだ。まずは叩きつける物を選んだから、次の動きにつなげにくいのだろう。彼女の持ち味は早さからの刺突に見えるからな。続けて斬るを重視した物もやはりしっくりこないようだ。


 そして最後。数回使った後、アンヌの表情が目に見えて変化する。前のままだと、長さもそうだが彼女の筋力では単純に振り抜く力がまだ足りない状態だったのだ。


「これ、良いな! これなら早い相手にも上手くやれそう!」


「そうだな。だがあくまで貫く攻撃だけにしないで、他の攻撃方法も使うようにな。ああ、これは試作品だから返してくれ。依頼料金から素材を見繕って作っておくさ」


 言うが早いか、よろしくね!と元気良い声を耳に残して、アンヌは走り去っていった。どうせ武器を使わなくてもいい依頼を受けに行ったのだろう。あまり稼げないうちは、少しでも余裕を作りたいものだからな。


(元気だな。リム……ペインもあんなノリだったな)


 未練か、思い出か、脳裏をよぎった友人の幻影を払い、建物に戻る。仮に見た目がかつての知り合いに似ていたとしても、まず間違いなく別人だ。俺の姿はゲーム時代と同じ。であれば中身が同じようにプレイヤーだったなら、気が付くはずだからだ。


 やや落ち込みそうになった気持ちを奮い立たせ、炉を借りるべく工房へと戻る。俺たちが地下水路で見つけた教会施設、しばらく使われていないはずのその中で、どうも人が暮らしていたような形跡があると報告を受けたのはアンヌ向けの武器を作り終えた時のことだった。




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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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