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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第一章

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003.「新天地にて-3」


 銀塊を買い取ってくれそうな心当たりという屋敷に俺を馬車ごと外に置いて入っていったガウディ。どうやら顔なじみ程度には付き合いがあるみたいだ。しばらくして、このまま門番の視線を浴びるのもちょっとどうかなって思い始めた時に彼は戻って来た。


 何でもないように馬車に乗り込み、屋敷から離れたところで皮袋を差し出してきた。ズシリと重く、中身も結構な量に思える。


「待たせたか? どこで手に入れたって色々聞かれてな。もちろん、ファクトのことはばらしてないさ。一応確認はしておいてくれ。それで、住む場所はどうする? 俺でよければ仲介するが」


「ああ、任せるさ」


 即答、当然である。この街で知っている相手と言えばガウディしかいない。それに騙されたところで出ていけばいいのだ。無理やりそうするだけの力が俺にはあるはず……だ。


 確認されるように言われた皮袋の口を開き、数枚を手に取る。銀貨の元になるものを売って、銀貨が手に入るというのも不思議な気分だが、恐らくだが銀以外にも混ぜ物をすることで銀貨としているのだろうから確認をということなのだろう。のんびり進む馬車の上で1枚取り出して眺めてみる。


(お? これは、まさか?)


 明らかに見覚えのある模様。さりげなく所持金からゲーム内でいうと1ゴルド、最低な単価だったはずの1枚を取り出して見比べるとまったく一緒だ。俺が持っていた方は曇り1つない綺麗な物、皮袋からの物は結構曇っている。それに重さは違うようだ……やはり相当に銀の含有量を減らして増産したんじゃないだろうか?


「餞別代りの1枚がちゃんとしたお金で助かった気分だ」


「ははっ、そんなに磨いて大事にしてたのか? 田舎じゃ銀貨1枚も大金だからな、良い村じゃないか」


 何か言われる前にごまかすように言ってみたが、これは発見の上に驚きだ。俺の銀貨は明らかに純銀に近い。鑑定結果からもそれは間違いない。所持金の桁数、そして銀不足という状況を考えると所持金をそのままか、素材としておおっぴらに使い始めたらこの街の経済がやばいことになる。


(貯金していたということにしてこそこそ使うことにしよう)


 馬車はその間にも結構な距離を移動し、中心からは外れたほうへと向かっていた。建物の建てられ方がずいぶんと散らかった感じのする街角へと到着する。ごく普通の家に見えるけど、途中の話によればここには知り合いがいるらしい。その人の紹介で物件を探してくれるそうだが……果たしていい物件があるだろうか。


 再び馬車に俺だけが待つことになる。途中、扉が開いて見知らぬ相手がこちらを見てはガウディと話している。俺も日本人的に微笑みながら頭を下げる。第一印象って大事だもんな。


「何年も使われていないが、改造してもいいのが一軒あるってよ」


 同時に提示された金額は先ほどの銀塊の売却金で十分賄える物だった。それだけ銀が高騰してるってことなんだろうな。即金で払うことにした。改造OKなら色々自分好みに変えてしまえばいいのだ。

 それにしても随分安い気がするな……家一軒だぞ?


「掃除もしてないし、かなり古くなってるらしい。そう駄目になることもないと思うが」


「なるほど……気ままな1人暮らしならそのぐらいでいいさ」


 恐らくは築何十年のアパートのようなものだろう。いざとなれば武具を作るための素材で補強してしまえばいい。そう思いながらガウディの案内で目的の建物に向かう。町のはずれ、多少音が出ても迷惑にならなさそうな場所にその建物はあった。


「確かに、古いなこりゃ」


「掃除は一人で大丈夫か? 俺はそろそろ帰らないとまずそうなんだが……」


 扉を開け、中を見た途端に思わずつぶやき、立ち尽くす。簡単に言えば吹き抜け構造の居間を中心に寝室他を接続しました、という感じだ。大きな暖炉のある部屋の周囲に小部屋となっている。

 埃も積もっており、そのまま寝そべるのは遠慮したいな。


「いざとなったら宿にでも泊まるさ。色々ありがとう。助かったよ」


「命の恩人だからな、これぐらいはさせてくれ。また依頼で来た時にはここによるさ」


 出会いのありがたさをかみしめつつ、ガウディを見送ってしばらく。振り返った俺が目にしたのは変わらない部屋の惨状。仕方なくそのまま中を確認するが数日は宿暮らしというのが現実味を帯びてきたかもしれない。ああ、でも寝る場所なら大丈夫か。


「これなら暖炉を溶鉱炉に交換するのもすぐか?」


 肝心の鍛冶に使う炉をどこに置くかだったが、暖炉周りは無駄に立派な作りで、ここなら炉に変えても問題はなさそうだ。MDの炉はパーツを組み合わせたような設計になっていて、煙突さえあればどこでも大丈夫、そんな物である。不思議だがちょうどいい。


「さて……掃除の前に確かめるか」


 建物の周囲に誰もいないことを確認し、扉を閉じた。窓から差し込む光でかろうじて問題はないけどそのまま過ごすのはつらい。逆に言うと、外からも中の様子がうかがいにくいということだ。


 そして俺は、キャンプの起動を試した。わずかな浮遊感の後、俺の視界は一変していた。埃1つない空間。奥には炎の絶えない炉。左右には雑多な材料や加工途中の武具などがオブジェのように転がっている。俺がそれらしい雰囲気が出るから、とアイテムボックスからわざわざ配置したものである。


 ゲームではメニューから飛び込める俺とパーティーメンバー専用の異空間。果たしてこの世界でもその通りかが不安だったのだがメニューにあるんだから大丈夫だろうという妙な確信があった。結果としてその賭けにもならないような賭けには勝ったのだが、よく考えたらもう少し慎重に動くべきだったか?


「まあいいか……。いざとなったらここで本格的に作業することも出来そうだが、止めた方がいいな。アイテム類は無事、後は作成スキルがどうなるか、か」


 フィールドでの作成には問題はなかったが本格的な物はどうか、確かめたかったのだ。アイテムボックスから普通の鉄素材を取り出す。いつも鉄素材はボックスのどこに入れるか決めているのでいちいちそちらを見るまでもない。


 作る予定の物は、ゴブリン相手にも使った、武器生成-近距離C(クリエイト・ウェポン)で作れるロングソード。ゲームでは何度もお世話になった溶鉱炉と金床の傍に向かい、準備をする。揺れる炎、そして熱は俺にここが幻覚ではないと教えてくれる。


 本来の鍛冶というのは、とても大変な物で誰にでも出来るわけではない。ゲームのように大量生産なんかは機械にしかできない芸当だ。だが……ゲームであるMDはそれを可能にしていた。同じ能力を持っていると思われた今の俺もそれが出来るはずだった。


 メニューからスキルを実行……ではなく、素材を溶かし、現実の鍛冶であるかのようにハンマーを何度も叩きつけ、形を整えようとする。正直、ゲームとしては面倒……が、MDではそうする必要があった。その面倒臭さは、作成スキルの意味があるのかと本気で運営に問いかけたレベルだ。

 赤く色を変えた鉄素材だったソレを金床に乗せ、ハンマーを振り上げる。


(ロングソード……シンプルでありながら実直な力の象徴!)


 ゲーム中、意味はないのだが、俺はいつも作る武具のイメージを浮かべ、脳内でつぶやきながら叩く癖があった。最初の1発目を振り下ろす瞬間、何かふわりとしたものが腕にまとわりついてきた気がした。それがそのままハンマーから素材に伝わったような?


 疑問に思うまもなく、響く快音。


 まずは1回目、と考えたその時、ただの鉄素材だったはずのソレが光に包まれる。


「へ???」


 思わず手を止め、見つめる俺。光が収まったそこには、新品のロングソードが一振り、いきなり出来上がっていた。おまけに、何か小さい半透明の人影が何匹も剣にまとわりついて、笑っている……と思ったら消えた。


「なんだ今の……アレが精霊?」


 幽霊とは思えなかったし、外とは隔離されているこんな場所にいるはずもなかった。後思いつくのは、フェアリーともちび神様とも呼ばれていた精霊ぐらいだった。疑問に思いながらもロングソードを手にとって見るが、カウント表示は無し。変に脆そうな感じもしない。どの程度かはすぐにはわからないが、かなり上質の一振りのようだ。なにやらほのかに金属以外の光で包まれているような気さえする。


(成功は成功……けれど、一発で出来たっておかしいな)


 ゲームであるMDではありえない現象に頭を疑問でいっぱいにしながらもひとまずキャンプから出、元の建物の中で剣を眺めてみるが変化は無い。微妙に光っているのは目の錯覚ではないようだ。


「……掃除して生活する準備をするか」


 考えるのを止め、とにもかくにも掃除だと自分をごまかすことにした。ロングソードは適当に仕舞い込み、ひとまず寝る場所を確保しに掃除の時間へと突入した。まだ日は高い、寝る場所ぐらいはなんとかなるだろう。


「俺に何が出来て、何をしていいのか……」


 埃っぽいが寝れないほどではない程度に掃除をし、毛布にくるまって窓からの月明かりを眺める。つぶやいたのは今後のこと。自由気ままに暮らすのは夢ではあるが、恐らくは俺という異分子は静かには暮らせない……そんな予感があった。



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○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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