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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第二章

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024.「北の地で-6」



「さてと、ファクト。何か作って見せよ」


「作ってって……まあ、出来なくはないけどなんでもいいのか?」


 鍛冶の秘密があふれるというドワーフの里でドワーフ本人に出会うという状況に、珍しく興奮している内心を抑えたまま彼に向き直った。その手には……ジガン鉱石。これで作れと言わんばかりに投げ渡された。さすがドワーフというべきか、その品質は持っただけでもわかるほどの良質な物だ。一瞬、何か知ってるのかと思ったが、気を取り直して鉱石を眺めた。


「精霊が見えるのだろう? ならば、普通の鍛冶のやり方などしなくてもよかろう」


(どういうことだ? ドワーフは各種スキルがまだ使えるというのか?)


 普通の鍛冶ではないやり方、それに対する答えは俺は1つしか知らない。スキルを使った作成、それがそうだ。この場合、実際に金属が溶けるかどうかといったことは直接の関係がない。可能性を高めるために、現実の鍛冶の中からヒントを得ていたのもあくまで可能性を高めるためだ。そして、それすらを抜きにすることが今の俺は出来る。つまりはそう、スキルと精霊へのお願いの併用だ。


 今のところ、スキルと精霊へのお願いの併用による作成が出来る相手に出会ったことが無い以上、俺だけの技かと思っていたがそうでもなさそうだ。そんな内心の動揺を隠しながら、まだ武器生成が封じられている身としては、何が無難かと考え、籠手にすることにした。使うスキルは防具生成だからデメリットである対象スキルの使用不可には当たらない。


 ちなみに籠手や指輪、各種装備に分化するとスキルが無駄になると運営は考えたのか、鎧や盾以外はこのスキルに集約されている。おおざっぱと言えばおおざっぱだがスキルツリーを考えなくて済むという点では英断だったと思う。


防具生成-金属C-(クリエイト・ガーダー)


 つぶやいた瞬間、予想していない量の精霊が石から噴出し、一瞬視界をふさぐ。よほどこのジガン鉱石には精霊が詰まっていたらしい。好き勝手に動き、勝手に出来上がりそうな雰囲気を感じたので慌てて精霊に言い聞かせ、おとなしくなってもらい、作成に戻る。時間にして5分もたっていないだろう時間の後、無事に完成する。出来としては問題なく、数字も見える……はずだ。


「どうだ?」


「……ふん。出来はまあまあといいたいが、お主には致命的な問題がある」


 籠手を見つめる視線はそれだけですべてを見抜いてしまいそうに思えた。貫きそうに感じたのは気のせいだと思いたいところだ。致命的な問題とは、何のことだろうか? 俺が気が付いてないだけで何か間違えたか?


「今のお主はせっかくの精霊を無駄にしておる。大方、精霊が好き勝手にやるとすぐ物は出来るし、調整が効かんのだろう?」


「うっ……わかるものなのか……」


 予想外の指摘ではあったが、その意味では的確すぎるグラントの指摘に、俺は頷くしかない。事実、先ほども好き勝手に動く精霊をなだめて安定を狙ったのだから。だが彼はそれが良くないという。


「そうじゃろうな。それだけの精霊が出てくる作り手はドワーフにもそうはいまい。簡単に言えば魔力の出力過多で魔法を使おうとするような物。かといって下手に抑制すると今のお主のようになる」


 グラントはそう言って、作ったばかりの籠手を手に取り、眺めたかと思うと気合とともに小さなトンカチで軽く叩く。何を、と思う間に目の前で小手がぱかりと割れた。数値上は、熟練した戦士の一撃すら防ぎそうな防御力のはずなのに、だ。


(は? いやいや、なんだあれ)


 仮にも作ったばかりの新品だし、ステータス上も問題なかった。解体して精霊に戻すスキルを使ってる様子もなかった。つまり、純粋に壊されたのだ。一体何が……起きた?


「ほれ、精霊のつなぎが弱い。ただ使うなら能力は十分発揮するだろうが、ワシのようにわかってるものからすればいざという時には危ないぞ」


「精霊同士の、繋がり……だけどそれはなんとかなるものなのだろうか?」


 人間同士や、普通のモンスター相手なら問題はないがの、とグラントは加えた。俺の疑問に、彼は壁にあった棚を開いてそこにある短剣を数振り取り出してテーブルに並べていく。こうして見ても出来の違いがわかる。一見すると同じぐらいに見えるのだけど、どうしてだか……一部は脆く、一部は逆に丈夫そうに見えるのだ。


「精霊が感じられるのなら、この違いも感じられるだろう。それほど、精霊をうまく制御した武具というのは根本的な部分で違いが出るのだ」


 俺の脳裏にはこれまでに売ったり作った武器、いつぞやの自警団の少年らが浮かんだが、いきなり武器が壊れる!ということはなさそうで安心した。曰く、ドワーフには秘伝に近い形でこの品質を成し遂げる各種作成のような技術が伝わっているらしい。


 精霊の恵みが豊富な材料の他、条件を満たした場所でなくては使えないし、様々な制限があるらしいとの事だが、この里はそれを満たすようだ。だからこそ、ドワーフたちは決まった場所に集まり、里を作って住んでいるわけだ。引きこもりとかそういった事ではなく、この場所が都合がいいのだ。


「まずは精霊を正しく認識せよ。その上で必要なだけの協力を請うのだ。今のように、ただ拒否をするのではなく、な」


(正しく、ね。さて?)


 考え込んだところで、外套のポケット部分に入れたままだった壊れた眠れし森スリーピングフォレストを思い出す。この杖、そして宝石部分も力ある装備だ。何かのヒントになるかもしれない、そう思ってテーブルの上に石を置き、眺めてみる。いつぞやと同じ、深い緑の光が見える。気のせいか、この場所が気に入ってるかのように光が滑らかな気がする。


「丁度いいの。それにそっと魔力を込めてみよ」


「魔力を? わかった。そっとだな……」


 言われ、スポイトでそっと水滴を落とすかのように、わずかに魔力を込めてみる。思えば、この魔力という力を感じているのも不思議な話だ。感じとしては体中の熱を自由に操れるというのが近いだろうか? 全身からゆっくりと力を集め、手のひらに持ってくる。考えてみればゲームでもスキルと魔法は同じゲージを消耗していた。俺の各種生成もそうだ……となると、根源は一緒なのだろうか?


 そんなことをが一瞬頭をよぎった時、手ごたえと共に石から見覚えのある色の精霊が浮かび上がる。上手く魔力が通ったらしい。緑色の人影は何かを探しているかのように、きょろきょろとあたりを見渡して、俺のほうを見たかと思うと、ふわりと浮かび上がって来た。


「精霊はの、まず喋らん。厳密には生き物ではないからの。万物に宿り、こうしてそれに宿った力や、何かしらの魔力に惹かれて動くのじゃ」


 試しに注ぐのをとめてみろというので、言われるがままに止めると、しばらくした後、精霊は石の中に戻っていった。見えなくても、なんだか石の中に動いてるような気さえするな。


「何も大きなものの中に大量の精霊がいるわけではない。小さくとも、力ある武具であったり、由緒ある物品には自然と多くの精霊が宿る。だからダンジョンの発掘品は有力なことが多いのだ」


「さっきはそのジガン石からもすごい出てきたんだが……」


「実は、恵みの証でもある。見た目は同じ素材かもしれんが、別の土地ではまったく違うのじゃ。やせた土地というのは精霊が不足した土地とも言える。痩せているから精霊が少ないのか、精霊が少ないから痩せるのか……どっちが正解かは今だにわからん」


 残ったジガン石をつついても今は何も起こらない。少量ならともかく、大量となると魔力を込める、俺で言えばスキルを使うなどが必要らしい。それだけさっきの石が特別だったのだ。その上でも、先ほどのような量や反応はこの土地ならではなのだという。


「大切に受け継がれた家宝が、不思議な力を持つといわれることが多いのは精霊のおかげなのだ。長く、接してきた相手の魔力を少しずつ取り込み、精霊は増えていく」


 要は年月を経ると、勝手にあちこちに精霊はたまっていくらしい。だから長い時間を過ごした道具には精霊が多く宿り、意思のような物を持つことがあるのだとか。その辺はどこかで聞いたような……付喪神的な話だろうか?


「じゃあ、何かしらいつも身に着けておいたほうが良いってことに?」


「うむ。ここのような恵まれた土地の資源であったり、お主のような例外を除けば、特別に気に入られるような相性の良い状態でなければ精霊は多くは答えてくれぬ。そばに置き、信頼を得るようなものじゃの」


 ドワーフはそのために、自宅に大量の鉱石を常に保管し、生活を共にするのだという。アイテムボックスに仕舞い込んでいる鉱石類だと妙に精霊が出てきたことを考えると、逆に言えば、ゲームの頃と比べて今の土地はやせているということになるのだろうか? だって、ほとんどの鉱石はそんなのを気にしていないような採取の結果だものな。


 その後も、丁寧な講義を受けるように、精霊との諸々の関係についてグラントは教えてくれた。自然と、俺も精霊の出てくる量を調整することに成功する。押さえつけるのではなく、導く……今までのように、あふれ出てくるでもなく、かといってなんとなくいる、という形でもない。


「何かを作るときに、中に込められた精霊の量とその込め方で色々と変わるのだ。ほれ、野菜でも同じ様に見えるのに美味しいのやら、そうでないのがあるだろう?」


 わかったようなわからないような……ゲームで言うと、+1や+2みたいな感じだろうか?


「ただ中に入れるのではなく、浸透してもらうようにするといい。その宝石は杖用じゃろ? 近くの森で伐採してきた良い木材がある。精霊の好みを確認しながら作ってみよ」


 本来は薪にでもするためにあるのじゃがな、と言うグラント。随分と贅沢な薪だが、そのぐらいはこの辺りでは当たり前のようだ。手にしてみてもその質感に驚くばかりだ。これで家具の1つでも作れば高く売れそうだ。それにしたって作ってみよ、といわれても今の俺は武器生成を使えない。


 どうしたものかと悩む俺の前に、どこかで見たような道具が置かれた。


「ファクトよ、硬い硬い鉱石ならともかく、木材程度は削ればよかろう?」


「うっ!? た、確かに……よし……」


 もっともな指摘に、俺は恥ずかしさに縮こまりながら、グラントが持ち歩いているらしい工具一式を借り、杖を持つ相手、魔法少女(?)コーラルを思い出しながら長さなどを調整していく。長すぎず短すぎず、ちょうどいい長さを目指すのだ。


「石をはめ込んだら杖部分と両方に魔力を通してみよ。後は精霊が助けてくれる」


 グラントの助言を耳にしながら、俺は久方ぶりの彫刻という行為に没頭していた。まずは大きくアタリをとり、後は細かくしていくのだがその時点で精霊に呼びかけ、どうしていくのが良いか心で相談する。その結果はてきめんだった。精霊たちが、指さすのだ。


「どうじゃ、見えるじゃろう?」


「これが……そうなのか?」


 つぶやきながらそこに道具を差し込むと、手ごたえがほとんどなくきれいに削れていく。まるでゼリーにスプーンを差し入れているかのような感覚だ。そして出来上がった断面はとてもきれいだった。


 自然の造詣や、なんでもないような街中の形に妙に気を引かれたことはないだろうか? ざっくり言えば、精霊の好む形というのはそういうことらしい。こればかりは実際にそのとき作る精霊によるので、決まったものというのは無いそうだ。ゆえに、自身のセンスだけではどうにもならない部分があるとのこと。一般の鍛冶職人はもとより、ドワーフやエルフ等の種族でも一朝一夕にはいかないらしい。


 だというのにそれを一発でやらせようというのだからグラントもスパルタというかなんというか。


「こうか……ああ、こっちのほうがいいんだな」


 俺が彫ろうとする方向、深さ、その形。様々に反応する精霊を見ながら、使う人間、宿る精霊、どちらのことも考えてあれこれと試していく。ゲームで新しい武具を作れるようになっていくときにも味わった高揚感。完成に向けて形作られていく木。


 自らの手で、自らの新しい扉が開いていく感覚。俺は自分が笑みを浮かべていることにようやく気がついた。作る楽しみ、出来る楽しみ、使ってもらえる楽しみ。物を作るということは大事なことなのだ。ゲームでも、ここでも簡単に作れるからと薄れていた感覚を今、思い出していた。


「うむ。いいぞ。そのまま赴くままに作っていけ」


 グラントの声もどこか遠くに聞こえる。聞こえているのに、聞こえないような……俺と石、杖の元となる木の周りを興味津々に精霊が舞っているのはわかるが、上手く認識できない。彫り、削り、しならせ、整える。段々とまさに魔法使い!という杖のような形となり、後は力の源となるであろう石がはめ込まれる部位がぽかんと大きく開いている。


 精霊がいくつか、その穴に飛び込んでこちらを招くように光った。


「よし、はめ込むのだ!」


「……行くぞ」


 なぜか、俺はそんなことをつぶやき、緑色の石をその穴にはめ、ふっと魔力を込めた。周囲に舞っていた精霊が勢い良く杖と石に吸い込まれたかと思うと、陽光や電気照明とも違う、そのものを覆うような光が杖からあふれ出る。それは雨が木の枝を伝うように杖全体へと行きわたり、完成の手ごたえを感じさせた。俺の加工により、杖となったそれ全体を覆う緑色の光は、しばらくすると杖の中に戻り、石だけが光を放つ。


「……終わった?」


「ああ、完成じゃ。どうじゃ、悪くない感覚じゃろ」


 呆然とつぶやく俺に、グラントは静かに答え笑い始めた。ハンマーで叩くのとはまた違う、作るという感覚に俺は興奮しはじめていた。ああ、これが作るということだ。


「ああ、ありがとう。大事なことを思い出せたよ」


 どこか誇らしげな気持ちと共に、俺は出来上がったばかりの杖を掲げる。杖のステータスを確認するためだ。そこには名前から能力が並び……ん?


 ━眠れし森+1スリーピングフォレスト


(プラス1? 多分、強くなったんだろうけど、無粋といえば無粋だな)


 出来上がりにそんな感想を抱きながら、自分では使えないことはわかっているので、3人が戻ってきたらコーラルに渡そうと考え、一息つこうとした時、杖から数匹(?)の精霊が出、外に飛び出していった。


「む? 3人が帰ってきたかの?」


「そうか!」


 俺は杖を持ち、3人を迎えるべく家を飛び出した。無事だろうとは思いつつも、心配していたことにようやく自覚が沸いてきたのだった。


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マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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