023.「北の地で-5」
色々と偶然が重なり、一緒に旅することになった冒険者パーティーであるジェームズとクレイ、コーラルの3人と一緒にドワーフの隠れ里を探して探索に来ていた俺達。その入り口の鍵であるヒートダガーを手に、それらしい場所にやってきたところで無事にドワーフと出会えたのだった。
そこで俺は、開口一番ドワーフに自分の秘密の1つをばらされてしまう。まあ、そこまで秘密という訳でもないのだが。
「……一応、姿は」
視線で追っていた様子を目撃されているので、とぼけることは出来ないと判断し、肯定する。これまでに聞いた限りだと、感じられる人はいてもはっきり見える人は少ないらしいからな……。
「そうか。人間にしては珍しいことだ」
それだけを言ってドワーフは俺たちについてくるように言って来た道を戻るように歩き始める。通路の高さはドワーフのそれと比べるとやや高い気がする。人間でも余裕……むしろもっと大きい種族も通れそうな気が……。
「気になるか? 昔は様々な種族が出入りしていた名残だ」
「そうなんですね! あ……これ、1つ1つに魔法がかかってる……すごい」
話しに頷いていたコーラルが飛びつきそうになるのは壁に一定間隔で並んでいるランタンのような物だった。確かに電灯みたいな感じでもないのに勝手に光っている。魔力……だけじゃなさそうだ。
「精霊の生み出す力の残滓を集めるようになっておる。若いの、下手に触らないようにな。変に干渉すると消えるのでな」
「うわっ、危なかったぁ。えっと、どこに連れて行ってくれるんだ?」
「ワシらの里じゃよ。ヒートダガーを持っている相手はもてなすのが礼儀じゃからの」
慌てるクレイの姿に笑う姿はちょっとの背の低いおじさん、と言っても問題ないような見た目だ。不思議と、貫録を感じる姿にジェームズは静かに見つめている。
「お主ら、名前は?」
「俺はファクトだ。鍛冶職人兼冒険者ってとこか?」
俺に続いて、ジェームズ達も名前を名乗り、最後にドワーフが口を開く。その手には持ち歩いているのか妙に大きく、重そうなハンマー。よく見るともう1本腰に下げているから片方が武器になるのだろうか?
「ワシは人間風に言えば、グラントという。ドワーフにはドワーフ語とでもいうべき言語があっての。翻訳すると都合上、同じ様な名前が多いからの、わかりにくいかもしれん。母に捧げる槌、という意味じゃよ」
そう言って前を向いたグラントがしばらく進んだ先は、壁だった。扉があるようには見えないが……そのまま壁に手を付け、聞きなれない言葉を数回喋ったかと思うと、壁が振動して開いていく。
(ダンジョンのギミックみたいなもんか……俺でも動くのかな?)
観察をしながらも、ドワーフに会えて、その里に向かっているという事実が興奮を呼び起こす。眩しさに目を細め、数歩踏み出した先は……なんだか緑の匂いがした。
「ふむ……ようこそ、人間よ。我等の里へ」
「おお……!」
思わずそんな声を出してしまうほど、感動的な光景である。ドワーフの里は森と建築物が融合したバランスの取れた場所だったのだ。ゲームで訪れたことのある里達はゲームの演出なのか、如何にも隠れ里、といった狭く、さびれた様相だったので想定外な光景だ。あるいは、ここまで盛り返したのかもしれないな。建物の大きさは少し小さめだが、ドワーフにあわせたにしては大きすぎる。
「ドワーフは遥か昔から人間達、特にマテリアル教と付き合いがあっての。生活様式も我々が合わせとるんじゃよ」
疑問を口に出すと、グラントが答えてくれた。なるほど、通路でも言っていたが交流は結構あったらしい。そのまま歩みを止めたのはとある民家風の石造りな建物。そこにたどり着くまで、視線をいくつか感じたが遠目にしか他のドワーフは見ることが出来なかった。でもグラント1人だけということに妙に安心した俺だった。
「来客用の建物になる。中で目的を聞こうかの。まさか観光に来ました、というわけではあるまい?」
からかうようなグラントに頷き返し、4人とも連れ立って建物に入る。
「俺は後にするとして、彼は色々な興味から、彼女はドワーフに伝わる魔法や、魔法使いの話を聞きたくて。ジェームズは……なんだっけか?」
「俺は特に無いぜ。敢えて言えばこうしてドワーフとコネができりゃ今後役に立つ、ぐらいなもんさ」
備え付けの椅子に座り、ジェームズはおどけた。確かに、町で聞いた通りドワーフの作る武具が手に入ればお金にはなるだろうし、自分が欲しい時でも直接買いにくることだってできるかもしれない。
「なるほどの。で、ファクトだったかの、お主は鍛冶か、精霊の御し方でも聞きたいのか?」
「そうなるかな、一応コレも作ったんだけど」
今回、新しく装備していた赤いショートソードを取り出し、グラントに見せる。名前は━ヒートセイバー━、これは、ヒートダガーを母体にして再強化とでもいうべき手順を経て作られる剣だ。セイバーと名がついている通り、元の物より倍以上長い刃を誇る。どういう理屈かはわからないが、MDではヒートダガーと違い、これだけでは里に入れなかったのだ。
一度、ヒートダガーを入手したプレイヤーはどこかにフラグが保存されていたのか、ヒートダガーなしでも入ることは出来たのだが、ヒートダガーを手に入れたことが無い誰かにこのヒートセイバーを渡しても入れない。なお、俺がこの剣をアイテムボックスに仕舞ったままだったのは偶然だ。とはいえ、日本人のRPG等におけるアイテムの収集率や、なんとなく取っておくというのは長年培われてきた文化みたいなものだ。他にもネタアイテムは色々放り込んだままである。
このヒートセイバーもただ作ることは出来ず、色々なクエストをこなした先で作れるものなのでその設定が有効なら俺の人となりというか、どこまでドワーフに絡んでいるかがわかってもらえるかなと思ったのだ。そして、それは正解だったようだ。グラントの俺を見る目つきが変わる。
「ふむ。まるっきり知らないというわけではないんじゃな。いいじゃろう。そっちの3人はちょっと頼まれてくれんかの?」
曰く、今ドワーフの魔法使いは上級者は出払っており、しばらくしないと戻らないとのこと。その間、必要な鉱石やらの採取依頼をやってみないか?ということだった。もちろん報酬は出る……となれば断る理由は無いだろうな。
「俺はかまわないぜ」
「ジェームズがそういうなら俺も!」
「私も良いですよ。楽しみです!」
「ファクトはワシの元で修行じゃ」
修行? まさかゲームのように延々と何かを作って熟練度を上げるんだろうか? 出来れば時間のかかることは遠慮したいんだが……。それでも必要なら仕方ないか……。
「心配はいらん。上手くいけばすぐに終わる」
「え? いきなり教えてくれるのか?」
思わず聞き返してしまう。というのも、MDではゲームの性質上、技術とは無関係な採取などのクエストをこなす形で自動的にスキルなり、様々なものが開放、もしくは取得されたからだ。まずはあれこれをやってから、というのは共通事項だったわけで、いきなりというのはなかなかない。
「詳しい話は後でな。よし、3人への依頼詳細だが……」
部屋に飾ってあった近隣と思われる地図にマーキングし、採取先などを説明するグラント。準備をした上で、3人はすぐに旅立っていった。そして、俺だけが残される。
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