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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第一章

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001.「新天地にて-1」


 街道を進んでいればどこかに着くか、誰かに出会う。その考えは正しかったようだ。遠くに馬車らしき移動する物が見える……見えるけれど、なんだか様子がおかしい。随分と急いでるような気がする。ここでも土煙が見えるぐらいだからな。


(何かに追われてる? モンスターか?……やれるのか、俺)


 目覚めの時のウェアウルフは咄嗟の出来事だった。今度は違う、自分の意思で介入するのだ。そう思うとなんだか無手の自分が心細くなり、思わず右手に魔力を集中させていた。使うのは魔法ではなくスキル。慣れ親しんだ、何百何千ととなえた言葉だった。


武器生成-近距離C(クリエイト・ウェポン)!」


 室内や専用の設備の前で実行するときと違い、一時的にアイテムを産み出す使い方。色々と問題もあるが、アイテムボックスに仕舞ったままの武器たちはしばらく封印の予定だった。この世界のこともわからないうちに扱うには少々、いや……かなり問題を起こしそうな性能のばかりだったからだ。右手に産まれた重量感。それ自体がこの世界が現実であると訴える十分な重さだったのだけど、難なくそれを掴んだまま走り出した。


 ちらりと見えたカウントは文字化けていた。果たして1分なのか1時間なのか。スキルによる一時生成となるアイテムには実体化可能な制限時間がある。それらは実際に使うと余計に減るため、今回生み出した鉄剣はいつ消えるかわからないということだ。


 アイテムとして持っている武器を取り出すか、このままいくか……悩みは一瞬だった。衝撃的な数値ではあるが今はそれどころではない。駄目ならまた作ればいい、なにせ元手はただだ。実際、何度もそうして武器の消耗を節約し、稼いできたのだ。いつものように、利益は多く、損失は少なく、だ。思ったよりも軽い自分の体に驚きつつ、迫る土煙に近づいていくと……やはり馬車だった。必死に馬を走らせる御者台には人間であろう姿。となればやることは決まっている。


「そのまま逃げろ!」


「わかった!」


 すれ違いざまに叫び、土煙に身を隠しながら馬車の後ろにいるであろう相手の気配を探る。俺自身は実際には修羅場を経験したような人間ではない。すべてはゲーム時代に修得したスキルたちのおかげだ。

 もっとも、今回はスキルとは言い難いかもしれない。なぜなら、敵味方を判定したのは虚空に浮かぶ地図であり、そこに浮かぶ赤い光点なのだから。


「こんなところまでゲームそのままじゃなくてもいいんだけどなあ」


 プレイヤーは青、NPCは緑、そして敵であるモンスターは赤。地図はそうして色分けされている。大小やそのほかの設定も変えられるが今は必要ない。それによると相手との接触はもうすぐだ。薄くなってきた土煙を突き破るようにして走ってくる小柄な複数の影。幼稚園児ほどの背丈で無骨なナイフを構えたその姿は異形だ。


(ゴブリンか、よかった。難敵だったらどうしようかと思った)


 初級モンスターのこいつらならいくらこの装備や俺でも余裕だ。デバフがかかってるわけでもないのに混乱していそうな今の自分でも余裕だと感じた。後は……命を奪う覚悟を決めるだけ。

 自然と、鉄剣を持つ手に力がかかるのを感じた。


『ギッ!』


 武器を構え、待っていた俺を敵と認識したんだろう。ゴブリンたちは俺を襲い始めた。腰にも届かないそんな相手に、俺は正直ビビっていた。実力差は明らか、確実に俺が有利だ。だというのに振るわれる錆びたナイフ、斧にも見える何かを必死に避けていた。


「くそっ!」


 逃げ腰になる自分自身を叱咤し、ついに俺は1歩を踏み出し……鉄剣を力の限り振り抜いた。生産特化で、それ以外は必要最小限の成長方針だった俺でもレベルだけはそこらの前衛に負けない数値を誇っている。そうなれば各種能力値の補正も相応にある。具体的に言えば、ゴブリン相手にはオーバーキルもいいとこのダメージをたたき出すぐらいは能力が上がっていたのだ。


 結果、大地にはぐろい状態のゴブリンだった物が散らばることになった。


「……慣れたくはないな」


 下手に深呼吸をすると他の臭いまで混じりそうだったので俺はとぼとぼと馬車の逃げた方向へと歩き出すのだった。



「お? 馬車が戻ってくるな」


 信じたくはない現実に思考を飛ばしていると、こちらに近づく馬車の音がした。近くまで来ると馬車を操作していた人物をしっかり見ることが出来る。

 背丈はそう高くないが、引き締まった感じの……壮年の男性だ。


「助かったぜ。怪我は無いか?」


「そっちこそ、どうなんだ?」


 かけられた声にそのまま返し、自分は大丈夫であることをアピール。男性も息が上がってる以外はなんでもない、と言い笑う。よほど必死に馬を走らせていたらしく、汗だくだ。俺のいるところまでその熱気が伝わってくるようなほどだ。たまたま風下にいたためか、鼻に届くその汗臭さに驚きながらも余裕のある姿を保つ。


「見たところ冒険者みたいだな、どこに行く途中だったんだ?」


「ちょっと近くの街まで。急ぎじゃないからな……散歩同然に歩いていたら、あんたが逃げてくるのが見えたんでね」


 男性が乗るようにと手招きし、場所を移動したので馬車に乗り込みながら答える。


「散歩? モンスターの出る外で散歩とは、さすが冒険者!ってか」


 豪快に笑う男性が操作する馬車は元々俺が歩いていた方向、馬車が逃げてきた方向へと向かっていく。結構揺れる気はするが、他の場所を通るよりはマシなのだろう。


「いやー、実は注文の品を届けに行く途中であいつらに遭遇してな。来た道を逃げ帰っていたんだ」


 俺も目的には同じだと判断したのだろう。どこでも良いから街に着きたかった俺は文句を言うでもなく、そのまま話に頷く。ちらりと見えた荷台には綺麗に箱に収められた槍、斧、盾等が見えた。みんな特別な素材は使っていないことだけはわかった。


「それは災難なことで。おっと、俺はファクトだ」


「おう、ガウディだ。一応鍛冶職人をしている」


 字面は自分の鍛冶職人と一緒だが、どうも一般的な意味で鍛冶職人、のようだ。

 しばらく雑談をしていると、どうも話題やその中に出てくる単語に違和感を覚える。知らない地名や、事件が多いのだ。

 わかってはいた、既にわかってはいたのだが感情がそれを認めたくはなかった。


「ところで、今何年だったかな? 村暮らしが長いと気にすることが無くてね」


 そんな自分にとどめを刺すべく、田舎の出であることを強調して聞いてみる。俺が前に年代を確認したのは700年と少し……果たして……。顔に戸惑いが出ないように頑張りながら、ガウディの返事を待つ。


「田舎の方だとなあ……だとすると、暦もしっかり伝わってないだろう? そうだな……今はマテリアル暦で2314年の5月だな。こっちならわかるだろう?」


(1000年どころか1500年以上違う!?)


 耳に届いた言葉を最初は理解できなかった。1500年、地球でいえばあの有名な東西決戦まで100年しか違わない。自分の意識がどこか遠くなるのを感じる。文字化けしていても、メニューに出ている日数の組み合わせに違和感はずっとあったのだ。

 使えない1部のシステム、ずれた時間、こんなこともあるかと気にしていなかった違和感、1つ1つは小さなピースだったそれらが脳内で組み上がっていく。他にも色々とあった。リアルすぎる質感、触覚、あるいは嗅覚。それらは全てがこの世界が現実のものだと示している。


 途端に、風や匂いといったすべてが怖くなってきた。ここが俺の体験してきたマテリアルドライブと、近い様で遠い世界であることを知らしめるためにあるのではないかと思ってしまったのだった。


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○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/

完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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