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はじまりのはじまりb
ニコラの泣き笑いの表情を見ていたら、ふいに昔のことを思い出した。
どうして忘れていたのだろう。大切な大切な、過去の記憶。
あれはまだ、私が長女だった時のこと。
周囲から長女であることを期待され、押しつぶされそうになって、周囲には笑顔で接しながら、心の中ではいつも泣いていた頃。
かみさまと話すときにだけ、「ぼく」という一人称をつかっていた頃の話。
「今から十年後、神木家の巫女には、災いが訪れる」
そんな呪いのような言葉をのこしたかみさまは、珍しく、翌日も話しかけてきた。
「今日は、私からあなたへ餞別をおくるわ。だって、あなたはこれから、おにいちゃんになるんだから」
かみさまからの突然の言葉に思考が追い付かない幼い「ぼく」。そんな「ぼく」を置き去りにして、かみさまが言う。
「実は、私昨日、大切なことを言い忘れていたの」
あれじゃ、まるで呪いの言葉だったわね、とかみさまが向こうの世界で苦笑する。
そして彼女は、かみさまとしての最後の言葉を口にした。
みえなくても感じるほほえみの匂いと、さみしさを滲ませながら。
「十年後、確かに災いは訪れる。けれど、たくさんの人からの愛に支えられ、巫女は災いをも乗り越えるのよ」




