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はじまりのはじまりa
ぼくのかみさまは占い師だった。
占い師というのが何なのか、ぼくにはよくわからなかったけれど、どうも、未来をみることができるらしい。
かみさまはめったに話しかけてこない。二三日どころか、一週間音沙汰がないこともざらだった。
けれど、その日はめずらしく、かみさまはぼくに話しかけてきた。
「もうすぐ妹が生まれるあなたに、祝福の予言をあげるわ」
妹。
その言葉に、頭の上についた三角形の獣の耳がぴくりとする。
ぼくはずっと、妹がほしかったんだ。
未来がみえるかみさまが妹だというのなら、おかあさんのおなかの中に居るのは妹にちがいない。
けれど、そんなぼくのよろこびとは裏腹に、かみさまはぼくに、不吉な予言をのこす。
「今から十年後、神木家の巫女には、災いが訪れる」
それは、祝福とは真逆に思える、呪いのような言葉で。
あれから幾年か過ぎた今でも、ぼくの耳にこびりついていた。