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「ガローシャ国物語」 短編集  作者: 一ノ瀬紅
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僕の靴が連れて行ってくれた場所 2

「マルク・オーウェン、あなたの特性は、アビルバが守護神、橙の『技能』である」

 大聖堂の中心にある魔法陣の上に立ち暫くすると、魔法陣がオレンジ色に光だし、オレンジ色のステンドクラスの下に立っている人が、高らかに声を上げた。



 特性判定は『技能』と決定した僕は、大聖堂を出て一つ下の階にあるという第三閲覧室へ向かった。

下の階に降りると、中央の広場の周りにぐるりと等間隔に扉が配置されていた。それぞれの扉には数字が書かれている。“三”の数字がある扉の前に向うと、部屋の中から人の話声が聞こえた。僕は一つ大きな深呼吸をしてから、扉をノックした。



「はーい」

 部屋の扉を開けてきたのは、ルーファス・カルヴァートだった。

「そろそろ来ると思っていました!特性は『技能』だったみたいですね!ささっ、部屋に入って!」

 僕に笑顔を向けて部屋の中に招き入れてくれた。閲覧室というから、もっと小じんまりとした殺風景の部屋を想像していたら、部屋はかなり広く、中央に置かれている机以外にソファーセットなども置かれていた。床はモスグリーンの絨毯で敷き詰められ、ソファーとカーテンは落ち着いたシャーベットオレンジで部屋全体を明るくしている。

「特性判定お疲れ様でした。特性判定の間って座れないから疲れたんじゃないですか?どうぞ空いている席に座ってくださいね」

先程出会った少女が席から立ち上がって、笑顔を僕に向けてくれた。僕は「あ、はい」と、どうにか返事をし、彼女の斜め前の席に座った。



「オーウェンさん。ルーファスのわがままに付き合って下さってありがとうございます。私、先程お会いした時、自己紹介していませんでしたよね?フィオナ・アディントンと言います」

 彼女は僕に名前を教えてくれた。フィオナ。とても彼女に似合っている可愛らしい名前だと思った。

「ぼ、僕も、きちんと自己紹介させてください。マルク・オーウェンといいます。トルデナードから来ました。五人家族で弟と妹がいます。両親は二人共靴職人です。あ、あと、良かったらオーウェンさんではなく、マルクと呼んで下さい!」

 焦って僕も自己紹介をした。焦り過ぎて余計なことまで話してしまった。

「くすっ。マルクさんですね。では、私も事もフィオナと呼んで下さいね」

 フィオナは僕に名前で呼んで欲しいと言ってくれた。

「フィオナさん・・・」

「それじゃ~俺も自己紹介させてください!ランドルフ・ボルジャーといいます。俺の事もランドルフって呼んでください!オーウェンさんの事はマルクって呼んで良いですか?」

ソファー席から立ち上がったランドルフは僕の前の席に移動し、爽やかな笑顔を僕に向けてきた。こんな笑顔を向けられたら、僕の周りの女子はひとたまりもないだろうなぁ〜なんて心に思いながら、僕は「勿論。ランドルフさん」と口にした。

「同じ歳だし敬称はいらないよ?ランドルフでいいから。それとさぁ〜敬語もやめよう〜。堅っ苦しいのはあんまり好きじゃないんだ」

そんなことを彼は言ってきた。彼らはどう見ても上流階級のご子息達だ。一般階級の僕が、敬語を使わないのは失礼にあたるんじゃないのか?今まで上流階級の人と話した事が無い僕は直ぐに返事ができなかった。

「僕はその方が気が楽だな~。初対面で失礼かもしれないけど、既に知り合いということで!因みに、僕の事もルーファスで良いから!マルク!」

僕が何かを言う前に、ルーファスも話に賛同してきた。

「でも、身分が…」

「そんなの関係ないよ。公的な場所ならいざ知らずだけど、ここでは気にする必要なんてないさ」

「そうそうそんな事は気にしない!僕達が問題と言っているんだから、誰も咎めないよ!」

「は、はあ・・・」

 ルーファスとランドルフに押し気味に言われて、その勢いに押されていた。

「マルクは『技能』に決まったけど、なりたい特性ってあったの?」

 ルーファスが聞いてきた。

「いえ。特には…。ただ、『技能』なら家の跡を継げるかなとは思っていたけど・・・」

「そうなんだ~。僕もさ~『技能』になりたいんだよね。だから、君が羨ましいよ!」

「俺達の仲間では、まだフィオナとセドリックしか特性判定受けてないからな~。俺も『武術』になりたいんだ~」

「は、はあ・・・」

 僕は彼らの話になんて返事をしたら良いのか分からず、相槌を入れるしかなかった。



「二人共!色々話してみたいのは分かるけど、さっきから彼、殆ど話せていないよ。紅茶でも飲んで少し落ち着いたら?二人がごめんね。学校以外で新しく同じ年の知り合いが出来て、興奮しちゃっているみたいなんだ。あなたも落ち着けるよう、紅茶は如何?」

 耳に心地よい落ち着いた声がしたので「あ、ありがとうございます」と言って声がした方へ振り返った。そこに居たのは、中性的な雰囲気を持つ美女だった。砂糖菓子を連想させるふんわりとしたハニーブロンド、艶やかな肌に丸い額。鼻筋もすっと通っていて、瞳は宝石で売られていたら相当な高値になるだろうと想像ができる澄んだエメラルドグリーンで、潤んでキラキラ輝いていた。フィオナがお人形のようならば、彼女は精霊のようだ。驚いて彼女を凝視してしまった。

「何か驚かせてしまったかな?大丈夫?」

 突然動かなくなった僕を怪訝に思ったのか、僕の顔を覗き込んできた。

「・・・い、いえ!大丈夫です!」

 突然近づいてきた美形の顔に顔を真赤にして体を反らした。

「だったら良かった。折角だし、僕も自己紹介させて貰うね。はじめまして。エミリオ・ルジャンドルといいます。僕達はエレンバレン寄宿学校の時の友達なんだ。今は居ないけど、あとでもう二人、この部屋に来ると思うから、後で紹介するね」

 彼女の話を聞きながら、”僕?””エミリオ?”と頭に疑問符が一杯になった。見た目は女性のようなのに、一人称、名前、声が合っていない・・・。

「は、はい・・・」

 考えながら返事をしてしまって気のない返事となってしまった。

「僕。何かおかしな事を言ったかな?」

 僕の対応を気にした彼女は、指を顎に置き首を傾げた。その姿もとても優美だった。

「あっ。もしかしてエミリオの事、女性だと思っていない?マルク。エミリオは男性よ?」

 状況を把握したフィオナが僕に声を掛けてくれた。え?この美女は男性・・・?

「え、え~~~っ!」

 僕はここの空気に似つかわしくない大声を上げてしまった。

「初対面の人にはよく間違われるんだよな~」

「喋らなければね。話せば殆ど間違われることはないんだけどな~。僕の声、ルーファスより低いよね?」

「そうか~?そんなに変わらないよ~」

 彼らが話している間、僕は混乱した思考回路を整理していた。確かに落ち着いて考えれば、目の前の美女の声は男性のものだ。一人称も“僕”と言っている。で、でもあの容姿は女性では無いのか・・・。僕の周りにはこんな男性はいない!上流階級恐るべし。ノバルティーは元々精霊の血を引くという噂もあるが、あながち嘘ではないのかもしれない・・・。僕はエミリオが用意してくれた紅茶の香りを吸い込んでから、ごくりと飲み干した。



「はぁ~。エミリオ!疲労回復に効く飲み物って用意できるか?」

 僕がやっと落ち着きを取り戻した頃、カチャッという音と共に、一人の男性が第三閲覧室に入ってきた。

「体力的な疲労回復って事だよね。この前貰ったハーブに疲労回復の効能があるものがあったからそれを使おうかな。さっきお湯沸かしたところだから、すぐ用意するね」

 エミリオは、飲み物の準備に取り掛かった。部屋に入ってきた男性は、僕の存在に気づいたようだ。

「彼は?」

「彼はマルク・オーウェン。トルデナードから特性判定を受けに『オクタビオン』まで来たんだけど、その途中で知り合いになってね。僕がここに来て貰うよう誘ったんだ!」

 横からルーファスが説明した。

「そうか。はじめまして。セドリック・オルブライトといいます。よろしく」

 彼は手を差し伸べてきた。僕は慌てて立ち上がり手を差し出すと、強く手を握り込まれた。彼の手は大きく皮が厚かった。彼は一通り、挨拶が終わると僕の後ろに備え付けられているソファーにドカッと座った。

 彼は僕よりも遥かに背が高く、ここにいる誰よりも体格がしっかりしていた。艶のある漆黒の髪を短くし、瞳は赤味のある灰褐色で意思の強さを感じる。エミリオの話から考えると彼も同じ歳なのだろうけど、とてもそうには見えない落ち着きを持っている。また、彼も、他の四人と同じく、とても整った容姿をしていたが、他の四人が柔らかい印象に対し、彼からは硬質さを感じた。銅像として作られたらかなり迫力あるだとうと想像した。


「セドリック、お疲れ。模擬試合どうだった?俺も見たかったな~」

 ランドルフがセドリックの前の席に移動した。

「二、三試合はするだろうと思っていたが、終わる度に他の先輩方からも手合わせを依頼されて、結局朝からぶ通しで十人と対戦してきた。午後はそれぞれの訓練があるということで、正午の鐘でようやく開放された」

「十人!ぶ通しじゃ~きついな。っで、結果はどうだった?五分?」

「さすがに後半バテたということもあるが、最後の二人はかなり強くて、八勝二敗だ」


「セドリックはね。特性が『武術』なんだけど、剣術の腕がいいから、騎士団に配属された学生時代の先輩から時々模擬試合のお誘いが来るの」

 内緒話をするようにフィオナがこっそり僕に教えてくれた。既に騎士団に配属されている人と試合をして八勝というのは只事ではない。

「セドリックさんは強いんですね」

 そんな感想を口にすると、

「セドリックの家は、剣術の名門なんだ。子供の事からすっごく鍛えられているから、その辺の騎士では歯が立たないよ」

 当たり前のようにルーファスが説明した。

「試合はある程度型が決まっているから、勝ちやすいというのはあるが、実践でも同じ結果になるかは正直分からない。それに試合でも負ける時はあるから、まだまだだ」

 彼はかなり自分に厳しい人のようだ。そんな中、エミリオが飲み物の準備が終わったのか、セドリックに「できたよ。どうぞ」とカップを渡していた。


ダラダラと書いていたら、終わりませんでした。まだ、全員出きってもいないです。

次回の話は早く上げられればと思います。 サラッと書ける人たちが羨ましい。

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