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約束

プロローグ


あぁ、まただ・・・

静かでヒンヤリとした夜の空気を感じる。

太陽の祝福を感じない虚ろな闇。

あの日以来、私が生まれるのはいつも夜だ。

酸素を体内に取り込むためにあげる、

けたたましい泣き声を他人事のように聞きながら、

必死に記憶を反芻する。

---大丈夫、まだ覚えてる。

安堵すると同時に意識が深い闇に沈んでいくのを感じる。

とりあえず今の体でできることは何もない。

ただ、本能のまま息をして、乳を飲み、眠るだけ。

次に目覚めるのはまだ先でいい。


今度こそ「彼」を見つけられますように


そう願い、深い意識の底へと落ちていった・・・




第1章:


あの人に会ったのは、もう何世代も前。

初めはただの好奇心だった。

私には視えない、ナニカを視る人。

「私にもいつか視える?」私は尋ねた。

「視えないほうがいいんだよ」彼は少し悲しそうに笑って言った。

「どうして?」

「彼らは時を同じくして存在しているけど、違う世界のものだから」

その言葉を口にする彼が、なんだかとても傷ついているように見えて、

私は彼に手を伸ばした。

「大丈夫」私は言った。

彼が視る力のせいで忌まれているのを知っていた。

でも、そんなことは関係なかった。

「大丈夫」もう一度私は言った。

「あなたの周りにいる何よりもずっと私が一緒にいる」

その言葉に、彼はやっと私の目を見た。

綺麗だった。

でも、彼はすぐにふっと視線を外した。

「無理だよ」

「どうして?」

「人は死ぬ」

そんなことは知っていた。

でも、そんなことは考えもしないほど若かった。

「でも、彼らは死なない」

ー常世のものではないから。彼はそっと付け足した。

「恐らく…自分も死なないと思う」

「死なない人間なんていない」

力のせいで魂に深く記憶が刻まれているのだと彼は言った。

例え死んで生まれ変わっても、記憶を引き継ぐ“自分”が生まれるのだと。

「じゃあ…」懇願するように、彼の頬に触れた。

「私のことも覚えていてくれる?」

「その時に君はいない」

彼はまた寂しそうに笑った。

「いるわ」何故かその時そう思った。

「それが私の意思だから」

その言葉を聞いて、彼は初めてふっと目元を緩めた。

「君は意思の力で死なないと思ってるの?」

「ううん、でも私も記憶を引き継げるかも」

彼は柔らかく微笑んで、私の髪を一房取り、口付けて言った。

「では、君のことを覚えていよう」

ただし…と彼は付け加えた。

「君から声をかけない限り、自分は君に応えない」

「なぜ?」

「記憶を引き継ぐのは世の理じゃないから」

それは何かを犠牲にするかもしれないから。

何かに歯車狂うかもしれないから。

もしそれで魂を損なってしまったらもう二度と生まれないかもしれないから。

「大丈夫」

彼を強く抱きしめた。深く、深く…

「きっと声をかけるから」

私の魂に記憶を深く刻まれることを祈りながら…


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