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妖剣ディアマンティス




 王子とアズウェルの姫君が逢えない日々が三月みつき程続いた頃、ヴェロア城にドワーフがやって来た。


 片方の目は刃物で斬られたらしく潰れ、その寸詰まりの腕も節榑立ふしくれだっている上に傷だらけだ。


 その小さな躰に、自分の数倍の丈はあろうかと云う長い包みを担ぎ、ヴェロア城門の跳ね橋の前に現れたのだ。

 年老いては居るが眼光が鋭く、盗賊か山賊のようなその風情に、ヴェロア城門に就く番兵は警戒の表情を隠しきれない。 

 「ドワーフふぜいが何の様だ?」


 番兵が威圧的な態度を取ると、ドワーフはしわがれれた声を張上げる。


 「武器職人オイゲンだ。べリアル王子に頼まれた物を納めに来た」


 その名を聞いて番兵は跳ね橋を下ろす合図を送るしかなかった。


 武器職人オイゲン。剣や槍を扱う者でその名を知らぬ者はこの大陸には居ない。


 腕の良さもさる事ながら、このオイゲンが造る武器は他の職人には到底造れない様なものだ。


 




 王子のもとへ通されたオイゲンは、担いでいた包みをほどき、中身を差し出した。


 それは、凄まじく刃渡りの長い一振りの剣。


 驚くべき事に装飾は一切無く、王族が携える剣と云うよりは首斬り人の使う剣の様に殺伐とした姿をしていた。


 「お望み通り、一切の飾りを排した。名はディアマンティス」 


 嗄れた声でオイゲンが云うと、王子は剣の柄を握り振り上げようとした……が、あまりの重さにそれは叶わなかった。


 「ディアマンティスか……金剛石(ディアマンテ)の名を冠する程なのだから、竜の鱗を貫く事は出来るのだろうな?」


 「御意、それ故の刃渡り、それ故の重さ、しかしそれを振るう腕力があってこそ」


 「腕力など鍛練で手に入れる。気に入った。出かしたぞ、オイゲン」 


 磨き抜かれた鏡のような刀身に王子の顔が映る。

 それは乙女とみまごう美しさでありながら不敵な笑みを湛えていた。





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