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妖剣の真価





 武器職人オイゲンが自負するだけのことは有り、ディアマンティスは強固で分厚い竜の鱗を、まるで薄氷でも割るように貫いた。


 痛みで更に暴れる竜から振り落とされぬ様、王子は柄まで深々と突き刺さる剣に必死に掴まっているしか無かった。


 ―竜の体力が無くなるのが先か、余の腕が力尽きるのが先か―


 暴れ馬など比にならぬ程の荒れ狂う竜の背。

 手を放せば岩に叩き付けられ間違い無く死ぬだろう。


 動く事さえ出来ず、王子は祈る思いで“その時”を待った。


 そう、死期迫る老竜、体力は差ほど残っていない筈。どれだけ暴れていられるものか。


 次第に手の感覚が無くなって来る、鱗は下に向かって生えているので足掛かりにすらならないのだ。


 手どころか両の腕そのものが痺れ、力尽きるその寸前、竜の動きが次第にゆっくりとした物になった。


 竜の心臓が何処に在るかは解らぬ。だがべリアル王子は竜を人間と見立てて心臓の裏を突き刺していたのだ。


 巨大な竜ゆえ、背中から心臓まで届くものかは危険な賭けだ。


 しかし、正気の沙汰では無い刃渡りの妖剣はその賭けに勝ったのだ。


 切っ先が僅かに心臓に達するだけだとしても、致命傷になる筈だ。


 それが五千年以上生きた竜であっても。


 やがて、その巨体が倒れ、洞窟内に凄まじい地響きが轟く。


 それはいかる神が地上に落とした稲妻のような音だった。








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