僕が彼女を殺した日。
灰色の壁に囲まれた世界で僕は俯いていた。
「何か言うことは?」
ピシッとスーツを着こなしたケーサツの人が僕に言う。
「僕が彼女を殺しました」
そう、僕が彼女を殺した。
僕は彼女を愛していた。
本当に。
彼女以外はイラナイし、彼女がいない世界には意味がない。
「じゃあ、何故?」
まぁ、待ってよ。
ちゃんと話すからさ……。
僕が彼女を殺した日のことを。
あの日、僕は彼女と出会ってから2年が経ったときだった。
未だに、僕は彼女と話したことがなかった。
2年だよ?
2年、同じサークルで、それでも話せなかった。
彼女はアイサツしてくれたけど、僕は返せなかった。
そんな僕にいつも彼女は困ったように眉を下げて笑ってくれた。
僕は、僕だけに彼女の笑顔を向けて欲しかった。
あの日より少し前、僕は自分が神になったと思っていた。
本気でね。
あぁ、今もだ。
だから思ったんだ。
彼女を僕だけのものにするために。
彼女だってそれを望んでいたのかもしれないよ?
だって僕は“神”だからね。
「なんで“神”だと思ったんだ?」
んー、何でだったかな。
覚えていないよ。
ただ、何となく、かもしれないし。
もしかしたら理由があったのかもしれない。
そんな理由なんてものは些細なことでしかないんだ。
僕の中のすべては彼女のものであって、彼女のすべても僕のものだと思えた。
「どうしてそれが殺人に変わるんだ?」
それだよ。
彼女を殺して僕の家に連れて帰って、僕のためだけに生き返らせようと思っていたんだ。
だって僕は神だから。
神ならなんでもできるだろう?
それこそ、命すら行使できる。
そうそう、僕ね、最初はネコを殺したんだ。
あれはすごかったなぁ。
だって僕の思うように命が動くんだ。
すごいだろ?
ハハハハハハ……。
はぁ。
だから彼女もそうなると思っていたんだ。
なのに。
「彼女は生き返らなかった……か?」
そうさ、あんなに綺麗な顔をして眠っているのに、目を開けなかった。
全部ウソだと思いたかったよ。
きっとこれは悪い夢だ。
僕は神のはずなのに、なのに……どうして彼女は生き返らない?
いつもやっているゲームみたいにリセットできると思ったんだ。
ねぇ、何でだと思う?
どうして彼女は目を開けなかったのかな?
「それはお前が神じゃなくて、人間だからだな」
……ッ!
ウソだ!
ウソだ!!
ウソだ!!
僕は神なんだ!!
「おい」
スーツを着た人は後ろでパソコンを使っている人に声をかけた。
「こいつは精神科につれていけ」
待て!
僕はまだ!!
「行け」
僕はあの日……、彼女を殺したのか。
この手で。
僕は意味のない世界にしてしまった。
「はい。……行くぞ」
僕は!
彼女を愛していた!!
そう叫ぶ声が部屋から遠くなっていく。
ファイリングされた資料をバタンと閉じ、スーツを着た人は呟いた。
「頭がおかしくなりそうだ」
一息してファイルを持つと立ち上がり、部屋を後にした。
「神なんていねぇよ。いたとしても人間は神にはなれねぇ、絶対にな。お前はお前の最愛の人を殺したただの殺人者だ。しっかり反省しろ」
スーツの人は先ほど声が消えて行った方にそう言うと逆の方向に歩いて行った。
End
この作品は書いていて結構気分が沈みました。
うまく書けなかった!!