フォーグレンの神官95
カネリとキィラは客殿から街に向かって飛んだ。
そして街門の上で火弾を撃つセンの姿を見て愕然とした。
「セン!」
カネリがそう呼ぶが、センは無視をして火弾を撃ち続ける。
「セン!」
カネリは舌打ちをすると鞭を作り出すと、センに向かって跳んだ。そして火弾を撃つ手を鞭で拘束する。
「セン、やめるのだ!」
センは鈍い黒い瞳をカネリに向けると、さらに上空に跳ぶ。鞭が引っ張られ、ちぎれる。センの腕が自由になる。
「逃げられませんよ!」
そんなセンに向かってキィラは氷の矢を放った。センは宙で舞うようにして矢を避ける。しかし間髪いれずカネリの火の矢がセンを襲う。
「!」
火の矢がセンの体に刺さり、血が飛び散る。センは力を失い、地面に叩きつけられた。
「セン!」
ハーヴィンは空から落ちたセンを見ると、馬から降り、駆け寄った。そしてその体を抱き起こす。センが目を開け、その黒い瞳をハーヴィンに向ける。
「セン……!」
「ハーヴィン殿下!離れてください!」
上空でその様子を見たカネリがそう叫ぶ。センが通常のセンじゃないことにカネリは気がついていた。何者かに操られてるのか、薬を盛られているのかわからなかったが、味方でないのは確かだった。
「…セ…ン?」
鈍い音がした。ハーヴィンは腹部に痛みを覚える。そして自分が刺されたことに気がついた。鎧と鎧の隙間からセンが小剣を抜く。血が噴きだし、地面を濡らす。
「ハーヴィン様!!」
周りにいた兵士がハーヴィンを救おうとセンに切りかかる。
センは立ち上がると血に濡れた剣を兵士に投げつけた。剣が兵士の体に刺さり、兵士が倒れる。
「セン!なんてことを!」
空から降りたカネリが火弾をセンに撃つ。その隙にキィラがハーヴィンの体を抱き、手当をするために宮殿に飛んで戻った。
「お前は自分が何をしたのかわかってるのか?」
センの意志ではないことはわかっていた。しかしカネリはそうセンを詰ることしかできなかった。
センは体から血を流しながらも、その手に鞭を構えたままだった。
「……わしがお前を倒すしか道はないようだな」
カネリはそう言うとセンに向かって跳んだ。
☆
「タリザの娘?」
ラズナンの青い瞳がターヤに向けられた。ターヤの瞳が深紅から海のような青い色に戻る。
「その瞳の色……まさか…」
ラズナンがターヤの瞳を食い入るように見つめるのがわかった。
「ふっつ」
次の瞬間、ふいにラズナンが笑い出した。ターヤは不可解に思い眉を潜めてラズナンを見つめ返す。
「我の娘よ」
ラズナンは笑うことを止めるとターヤにそう呼び掛けた。
我の娘……。
その言葉に響きに、ターヤは胸がざわつくのがわかった。
「我に力を貸さぬか?父を助け、世界を共に支配せぬか?」
「……」
ターヤは自分が落胆するのがわかった。
父さんは、僕を利用をすることしか考えてない。
それが水の女神のせいだとしても……。
世界を父さんに渡してはだめだ。
水の女神に心を奪われた父さんに渡すわけにいかない。
「僕は……あなたの娘ではありません。僕はタリザの娘です」
ターヤはそう言うと鞭を構えた。




