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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第6章 南の攻防
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フォーグレンの神官91

「こんにちは。ヤワン先輩。お久しぶりですね」


 ミシノは鞭に縛られ身動きが取れないヤワンにそう微笑みかけた。ヤワンは皮肉な笑みを浮かべてミシノを見上げる。


「……久々だな。一年……二年ぶりかな?」

「そうですね。二年。相変わらずヤワン先輩は薬草には詳しいみたいですよね」


 ミシノはそう言いながら『神石』のかけらを、剣に変える。


「センに薬を盛ったのはヤワン先輩ですね?ロセにも同じことをしたんですか?」


 ミシノは剣先をヤワンに向けそう尋ねる。柔らかい笑みを浮かべていたが、その目は深海の様で冷たい藍色だった。 

 シュイグレンで、ロセはセンと共に行動を共にしているはずだった。センがここにいるということは、ロセも近くにいると考えたほうが自然だった。


「どう思う?」


 ヤワンは剣先を首元に付きつけられているのに余裕の表情でそう答えた。


「ヤワン先輩、僕を以前の僕だと思ったら大違いですよ。この二年色々学びましたから」


 ミシノはヤワンの余裕の態度を奇妙に思いながらも、剣を振り上げた。

 殺すつもりはなかった。しかし腕の一本くらい切り落としても、ロセの行方とセンへの解毒方法を聞き出すつもりだった。


「ゲイン!」


 剣が振り下ろされた瞬間、ヤワンがそう叫んだ。するとミシノの手が剣ごと凍りつく。


「ミシノ!」


 アルビーナは手を凍らされたミシノを見ると、センに火弾を叩きつけ、跳んだ。


「アルビーナ?!」


 ミシノは自分を庇うように舞い降りたアルビーナを驚きの表情で見つめた。


「あんたを見殺しにするわけにいかないの」


 アルビーナはミシノの凍りついた手を炎を使い、元に戻すとそう言った。



「つまらぬな」


 ラズナンは有利だった戦いが、火の神、ターヤ、アルビーナ、そしてミシノの参加で互角に変わるのを見て、そうつぶやいた。


「兵達よ。そなた達の力を見せる時が訪れた。目指すはフォーグレンの宮殿である。神の力がそなた達に及ぶことはない。そなた達はわれと共に、宮殿に攻め入りフォーグレンの王を倒すのだ。よいな!」

「おお!!」


 ラズナンの言葉に数千の兵士が答える。ラズナンは満足そうに微笑むと、剣を空に掲げる。


「兵達よ!われにつづけ!」


 ラズナンがそう言い、先頭を切って戦場になだれ込む。兵士達はその後を追い、走り出した。

 砂埃が舞い、戦場に混乱がもたらされる。しかし、敵味方が入り混じることはなかった。シュイグレンの兵士にとって、指揮官であるラズナンの背中は絶対的な目印だった。群青色のマントを追い、兵士達は一直線にフォーグレンの宮殿を目指した。


「ラズナン!」


 ターヤは動きだしたラズナンの動きを止めるべく、その視線の先に立った。ラズナンは駆けるのを止め、ターヤを見る。兵士達はターヤを囲むようにその進撃を止めた。


「火の神官か。何用だ?」


 ラズナンはその青い瞳をターヤに向け、そう問う。


「ラズナン……王。戦いを止めてください。世界統一など無駄なこと。あなたは水の『神石』に踊らされているだけなのです」

「……若い神官よ。お前には理解できまい。兵よ。構わず、先に進むのだ!」

「なっつ!」


 ラズナンの言葉にターヤを囲んでいた兵士達が再び動き始める。


「させない!」


 ターヤは後方に跳ぶと火の壁を作り出す。


「この僕が街には一歩を入れさせません!」


 しかし、ターヤの火の壁は一瞬しか持たなかった。センがラズナンの側に降り立ち、火の壁を消失させる。


「セン様……」


 ターヤは唇を噛みしめ、センを見つめる。しかし、センは眉ひとつ動かすことなく、その視線を受け止めていた。



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