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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第6章 南の攻防
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フォーグレンの神官89

 咆哮がして火の龍が水の龍からネスとミルを守るように、その前に舞い降りる。


「火の龍……」


 ミルは初めてみる火の龍に驚きながらも、自分達を守るように降り立った龍をじっと見ていた。水の龍によってすでに数十人の火の神官がその命を落としていた。生き残ったものは、ミル同様、救いの神が現われたような気持ちで火の龍を見つめている。


「火の龍か。ガキが目覚めたのか。まあ。いい。ガキごときに操れる神の力ではない!」


 デイは水の龍の背中でそう叫ぶと火の龍に襲い掛かる。

 火の龍はカネリとミルに下がっていろとでも言うように首を振り、咆哮をあげると火の龍に襲い掛かった。



「くそっつ!」


 ヤワンは鞭に縛られ、悔しげにターヤを見つめた。

 火の神の力をあやつるターヤにとって、ヤワンは敵ではなかった。

 ターヤは自分を睨み、罵声を浴びせるヤワンに背中を向けた。そして、リナを安心させようと視線を向けた時、ターヤは自分がみた光景が信じられなかった。


「セン様?」

「ターヤ……」


 リナは驚愕の表情を浮かべるターヤにそっと近づく。


「どうして?」


 ターヤは人形のように冷たい表情でカルと戦うセンを見つめながらそうつぶやいた。


「ターヤ……。どうやら薬を盛られてみたいなの。今のセン様に私達の声は届かないわ」

「そんなの、そんなの信じられない!」

「ターヤ!」


 センに駆け寄ろうとするターヤをリナは力づくで止める。

 今のセンはセンではなかった。センを尊敬するターヤがセンとまともに戦えるとは思えなかった。油断すればセンに殺される。リナはそう思い、ターヤを止めた。


「リナ!離して!セン様を止めなきゃ!」


 ターヤは泣きそうになりながらそう叫んだ。



「この!」


 カルの焦った声がターヤとリナの元に届く。

 二人の視線の先でカルが顔を歪めて、センに鞭を振り下ろした。しかしセンは鞭を振るい、その鞭を逆に巻き取り、宙に放り投げる。


「カル様!」

「セン様!」


 ターヤとリナが同時に悲鳴を上げた。


「くそお!」


 カルはセンの冷たい視線を受け、死を覚悟した。センが鞭を振り下ろす。


「させない!」


 ターヤはそう叫ぶと、リナの手を振り切り、センに向かって跳んだ。そしてカルの前に立つと、その鞭を受け止めた。


「セン様!やめてください。お願いします!」


 ターヤはセンに相対し、その鞭を受け止めまま、そう言った。しかし、センが言葉を発することはなかった。センはターヤに鈍い黒い瞳を向ける。そして、これ以上の攻撃は無理だと判断すると宙を華麗に舞い、後ろに下がる。

 ターヤが見つめる中、センはゆっくりと鞭を下ろした。すると鞭が光を放ち、今度は槍に変化する。


「セン様!」

「ターヤ。あれはセンではない。センと思うな」


 カルは肩で息を切らしながら、前方のターヤにそう助言した。

 しかしターヤは目の前のセンをセンとしか認識することができなかった。




「ティアナ姫、大丈夫ですか?」


 ロセは自分の腕の中でじっとしているティアナにそう問いかけた。スピードを増すため、ロセは無礼だと思いながらもティアナをその腕に抱きかかえた。手を取って飛んでいるとスピードを増した場合、離れる恐れがあった。


「……大丈夫です」


 ティアナは硬い表情のままそう答える。

 ロセはふと、ティアナの青い瞳に愛しいターヤの瞳を重ねる。しかし苦笑すると飛ぶことに集中した。


「どうしたのですか?」


 ティアナはふいに笑みを漏らしたロセを訝しげに見つめる。

 ロセはやはりその瞳がターヤと同じ青い色だと思いながらも、その思いを消すために頭を被り振る。


「何でもありません。ティアナ姫、急がなければなりません。スピードを上げます。いいですか?」

「ええ」


 ティアナの返事を聞くとロセはティアナを掴む腕に力を入れる。そして飛ぶスピードをさらに増した。

 シュイグレンの軍勢はフォーグレンにすでに到着しているはずだった。

 

 急がなければ!


 ロセは南の方向を見つけながら、ただ飛ぶことに集中した。




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