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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第6章 南の攻防
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フォーグレンの神官88

 銀の龍の白い炎が倒れこんだミルを襲う。

 死を覚悟したミルの前で、白い炎が砕けた。


「ミルか。久しぶりだな」


 ミルを救ったのは水の副大神官ネスだった。


「……ネス様……」


 ミルは驚きと喜びで涙腺が緩むのがわかった。


「ネスか!性懲りもなく邪魔するのか!」


 デイがネスの姿を確認し、苛立ちの声を上げる。同時に水の龍が白い炎を放った。


「同じ手は通用しないぞ」


 ネスは氷の壁を作るとその炎を防ぐ。


「ミル。昔話はあとだ。龍の炎を避けながら俺と同時に攻撃する。できるか?」


 ミルはネスの言葉に頷くと立ち上がり、槍を構える。


「デイよ。十七年前のようにそう簡単に俺を倒せると思ったら大間違いだ」


 ネスはそう言うと『神石』のかけらを剣に変えた。


「十七年前の報いをうけてもらおう」

「お前にできるかな?」


 デイはそう言うと水の龍の背中で三又の鉾を振り回した。龍は唸り声をあげるとネスとミルに襲いかかった。



「セン。私は昔からお前が嫌いだった。こんな機会めったにないからな」


 カルは『神石』のかけらで作った鞭をもてあそびながらそう言った。対するセンは相変わらず無表情なままだった。


「お前のそのきれいに澄ました顔、今日こそ醜く歪ませてやる」


 カルは鞭を両手で掴むとセンに飛びかかった。




「無駄な抵抗だ。痛みがますだけだ。俺が痛みがないように殺してやる」


 ヤワンは相対する新米神官リナに微笑みかけながら、その血に濡れた剣を右手に握る。目の前で同じく新米神官だった少女が殺された。

 リナは恐怖に顔をゆがめながら、ヤワンを見つめていた。


「楽にしてやるよ」


 体が震えて動かなかった。武器を構えなければ、リナはそう思った。

 しかし、先ほど殺された同僚の顔を脳裏によみがえり、リナは金縛りにあったように動けなかった。

 こんなつもりで神殿に入ったわけじゃなかった。

 ヤワンは無抵抗なりリナに近づくと、剣を振り上げる。


「やめろ!」


 そう声がして、ヤワンの剣を燃えあがる。


「くっつ!」


 ヤワンは熱さに耐えきれず、剣から手を放す。剣は地面に落ちると元の『神石』のかけらに戻った。


「タ…―ヤ?」


 リナは頭上のターヤを愕然と見つめた。火の龍に乗っている人物が、ターヤであることは確かであった。しかしその雰囲気はまったく異なったものだった。可愛らしい大きな青い瞳は深紅に変化し、真っ白なその肌は赤く光り、まるで炎そのもののように見えた。


「ちっ、火の神か」


 ヤワンは舌打ちをすると、地面に落ちたかけらを拾い、再度剣に変化させた。デイから火の神が石から解放され、火の神官に宿っていると聞いていた。目覚める様子はないと聞いていたので、まさかここに現れるとは予想外のことであった。


「リナ。遅くなってごめん。もう大丈夫だから。僕に任せて」


 ターヤはリナに笑顔を見せると、地面に降りたった。火の龍はターヤの周りを旋回し、上空に舞い上がる。


「これ以上犠牲者を出させない。火の神、水の女神のこと、頼むね。僕はまずこの人をどうにかする」


 火の龍はターヤの言葉に答えるように咆哮を上げると、水の龍の方へ飛び去る。


「この人?君のようなお子様に俺の相手が務まるとでも思うのか?」


 ヤワンは龍の背中を見送りながら、不満げに眉を上げるとそう言った。


「ターヤ!」

「リナ。大丈夫だから。リナは黙って見てて」


 心配そうなリナにそう答えるとターヤは鞭を作り出す。火の神を契約しているターヤは自由に火の力を操ることができていた。

 

 すべてを僕が終わらせる……。


 ターヤは鞭を握りしめるとヤワンに向かって跳んだ。



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