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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第6章 南の攻防
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フォーグレンの神官87

「なんだ?貴様らは!」


 ベッドの上で熟睡していたアルビーナとミシノは警備兵の怒声で起された。


「ん?なに?」

「あん?」


 アルビーナはその長い赤い髪を掻き揚げて、体を起すと警備兵を睨みつける。その隣でミシノは眉をひそめると、アルビーナの体を隠すために掛け布団でその体を覆った。そして体を起こすと、真っ赤な顔をして慌てふためいている警備兵に力を放った。

 水の『神石』のかけらの力で警備兵が一瞬で凍りつく。もう一人の兵がそれを見て悲鳴を上げようとすると掛布団を押しのけたアルビーナが回り込み、鳩尾に拳を叩き込んだ。兵士は声を上げようとした格好のまま、その場に崩れ落ちる。


「アルビーナ!何か着てくれないかな?」


 ミシノは扉をパタンと閉めると、くびれの美しい体を惜しげもなく披露し、隠そうともしないアルビーナを睨みつけた。


「ごめん、ごめん」


 アルビーナはミシノにちろっと舌を見せると、床に脱ぎ捨てたローブを羽織る。そして机の上に置いた『神石』のかけらを掴んだ。


「あ、え……」


 警備兵とともに部屋に入ったティアナの侍女クリサは状況が分からず、部屋の入口付近で、真っ青な顔で口をぱくぱくと開いたり、閉じたりしている。


「ごめんね」


 ミシノはすばやく動くとクリサの首の付け根に手刀を叩き込む。そして気を失ったクリサをミシノは抱きかかえた。


「さあ、アルビーナ。どうする?」

「今更、お姫様の振りはむずかしいわね。それに、もう限界よ。見てよ、あの兵の動き。すでに戦いが始まってるわ」


 アルビーナは『神石』のかけらの力を使い、身軽な服装になるとカーテンを少し開け、ミシノを呼んだ。ミシノはクリサの体をベッドに横たえると、アルビーナの横に立ち、隙間から眼下を見下ろす。

 何千もの兵士たちが、武器を取り、完全武装し、列を成しているのが見えた。そして指揮官である王太子ハルンが兵士に声をかけているのがわかった。


「……アルビーナ。見て。ハーヴィン王子だ。彼も戦いに参加するらしい」

「ふうん。一応、そういう気迫はあるわけね」

「さあ、アルビーナ。僕達はどうする?」


 ミシノは窓から視線を外すと、乱れた服を整え、壁に寄りかかる。


「……手伝うからには最後までやるわよ。センやロセには止められなかったみたいね。ターヤも結局目覚めてないみたいだし。いいわ。あたしがやってやるわ。デイの奴を今度こそぎったんぎったんにしてやる!いいわね。ミシノ」

「……もちろんだよ」


 ミシノは苦笑しながらそう答えると、アルビーナにそっと唇を重ねた。



「ティアナ姫、俺に掴まってください」


 ロセがそういうとティアナは戸惑いながらもロセの手を掴んだ。


「ティアナ…。君が行かなくても」


 十七年前のことを聞き、ティアナが実の妹でないと知らされても、マオの態度は変わらなかった。逆にいままでティアナに感じていた愛情が強まったような気がした。


「兄上、行かせてください。私は父を、ラズナンを止める必要があります」

「……分かった。しかしこれだけは約束してくれ。無事に、無事に戻ってくるんだよ。わかったね?」


 マオはティアナの頬を優しく撫でながらそう言った。


「……大丈夫です」

「マオ様。ご安心ください。ティアナ姫のことをこの俺が守ってみせますから」

「頼んだよ。ロセ」


 マオはティアナの頬から手を離すと、ロセに微笑みかけた。


「さあ、ティアナ姫。急ぎましょう」


 ティアナは名残惜しそうにマオを見つめながらも、頷くとロセの手をしっかりと掴んだ。


「それでは、マオ様!」


 ロセはかけらを握りしめると、ティアナの肩を抱き、空に向かって跳び上がる。


「兄上」


 高度が上がっていくことに恐怖を感じながら、ティアナは小さくなっていくマオの姿を目で追う。


「ティアナ!」


 マオはティアナが自分を不安げに見つめているのを感じ、その名を呼んだ。しかし、ティアナにその声は届くことはなかった。二人の姿は急激に小さくなると青い空に吸い込まれるように消えた。


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