フォーグレンの神官85
ロセが目を覚ますと年取った給仕がベッドの側で腰かけているのが見えた。
「ああ、目を覚ましたね。よかった。死んでるんじゃないかと心配したよ」
老婆と言っても過言ではない年の給仕はロセに笑いかけるとそう言った。
「……?」
ロセはぼんやりしながら、給仕を見つめる。
「あんた……誰だ?」
「あたしはメイラと言う者さ。城の給仕を長年している。あんたを助けてくれたのは第一王子のマオ様だよ。あんたが起きたら呼ぶように言われてるから、マオ様が来たらちゃんとお礼を言うんだよ」
メイラはそう言うと部屋を出て行った。
部屋に残されたロセはゆっくりと体を起こした。
そして部屋を見渡す。
青いカーテン、木造りの机、椅子が見えた。
ロセはまだ痛みの残る体を起こし、ベッドから立ち上がる。
そしてカーテンを開け、窓の外を見た。
宮殿の庭が眼下に見えた。数日前までは美しい緑色の芝生であったが、何千人ものの兵士に踏み荒らされ、茶色の地肌がむき出しになっていた。
「……城の中か……」
戻ってきたのか?
ロセは窓に背を向けると壁に寄りかかり、天井を見上げる。
最後に記憶に残っているのは……。
ターヤ……。
確かターヤが俺を抱きしめて、泣いていた。
そう思い、ロセは苦笑した。
夢に違いない。
ターヤはフォーグレンにいるはずだ。
ロセは目を閉じ、再び状況を思い出そうと試みた。
そうだ。
船から落ちたんだ。
ヤワン先輩、ゲイン先輩……。
そしてセンさん…!
そうだ、なんでここにいるかわからないが、早く、追わないと!
ロセが壁から体を起こし、部屋を出ようとすると、扉が開いた。
「おや?もう体はいいのかい?」
現れた人物は柔和な笑みを浮かべてそう言った。その隣には美しい姫君が青ざめた顔をして立っていた。
「……マオ様、ティアナ姫?!」
ロセはフォーグレンにいるはずのティアナ姫に驚きながらも、慌てて、床に片膝をつき、頭を垂れた。
「ロセ……と言ったか?そうかしこまるではない。君に聞きたいことがある。いいか?」
マオは頭を垂れるロセの肩を掴むと立ち上がらせ、その青い瞳をロセに向けた。
間に合わなかったか!
ネスは眼下で繰り広げられる戦いを見て、息をのんだ。
水の神官と火の神官がそれぞれの武器を操り、戦っていた。
離れたところでは、水の龍が火の神官を襲っている。
ラズナンは神の力のぶつかり合いに巻き込まれ、兵力を失うのを防ぐためか兵士を後ろの方で待機させたままだった。兵士達は見たこともない神の力の戦いに驚愕しながらもその場に立ったままだった。
兵士達には罪はない。
今なら神官の犠牲だけで済む。
ネスがそのことだけでもほっとすると、デイから水の『神石』を奪うために水の龍の元へ向かった。




