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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第5章 戦いの幕開け
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フォーグレンの神官75

 静かな時間が流れている……。

 遠くで鳥が鳴く声が聞こえてた。


 動物もいるのか……。

 僕の中ってどういう意味なんだろう?


 穏やかな世界だった。

 

 ターヤはごろんと草の中で寝転がる。

 草の匂いが鼻を刺激する。

 嫌な匂いじゃなかった。


 空を見上げると、白い入道雲が見えた。


 僕はどうすればいいのだろう……。


 火の神の力を借りて、父を倒すべきなのか……。


 ラズナンに会ってみたい気はした。

 母親の存在すら今まで忘れていた。

 父親の存在など考えたこともなかった。


 そして姉さん……。


 僕が父さんを、水の女神の力を止めなければ、あの惨劇がフォーグレンで繰り返される。

 水の女神の力は、多分火の神の力じゃないと止められない……。


 でも僕に出来るのか……。


 ターヤの問いに答えるものはいなかった。

 頭上に広がる空はターヤの苦悩を知らぬようにどこまでも澄み切った青色をしていた。



「お待たせ。さあ、部屋に帰ってもいいわよ」


 窓からひょいっと入ってきたアルビーナはそう言うと、ハーヴィンに軽く触れた。ハーヴィンの姿がティナアから元の姿に戻り、代わりにアルビーナの姿がティアナのものになる。


「ティアナ姫は無事シュイグレンに戻ったのか?」

「ええ、そのはずよ」

「そのはずとは。確かなのか?」

「ネスがついているわ。何かあったとしても、問題ないわ」


 アルビーナはそう答えると、天蓋ベッドに腰掛けた。瞬間移動の技は結構体力を消耗するらしく、疲れていた。ハーヴィンと会話するよりも横になって休みたかった。


「そうか…。アルビーナ。君には感謝している。おかげでフォーグレンのために姫が犠牲になることはないだろう」


 ハーヴィンは力なく微笑むとアルビーナに背を向けた。そして窓のほうへ歩いていく。


「ハーヴィン」

「……何かな?」


 アルビーナに呼び止められると思わず、ハーヴィンは意外に思いながら振り向いた。


「あんたさあ、本当にセンのこと好きなの?」

「当然だ。君には信じてもらえてないみたいだけど」

「当たり前でしょ。ティアナ姫とあんなに親しげな場面みると、信じられるわけないじゃないの」


 アルビーナはそう言って天蓋に覆われているベッドの中からハーヴィンを睨みつけた。

 ティアナの姿では迫力はないのだが、数時間前に同じような視線を向けられたことを思い出し、ハーヴィンは苦笑する。


「あれは私の本意ではない。君を抱いたのもセンだと思ったからだ」

「あたしも、あんたに抱かれたのはセンへの復讐のためだけよ。別に他意はないわ」


 まったくやっぱり頭にくる王子だとアルビーナはぶつぶつ言葉を続けると、寝返りを打った。


「疲れたから休むわ。あんたも帰って早く休んだら?」

「アルビーナ。君はセンと和解したのか?」

「……うるさいわね。あんたには関係ないでしょ。元はと言えばあんたがセンに言い寄るから、あたし達がもめることになったんだから」


 アルビーナはぎろりとハーヴィンをもう一度睨みつけると、枕を掴み頭を隠した。そして、再び寝返りを打ち、背中を向ける


「さあ、帰ってちょうだい。邪魔よ」

「そうさせてもらうよ。アルビーナ。ありがとう」


 ハーヴィンはその背中に向けて柔らかく微笑むと、再び窓へ足を向けた。アルビーナの様子からセンとアルビーナが和解できたと想像できて、ハーヴィンはほっとしていた。


 シュイグレンの戦い、シュイグレンから戻らないセン……。

 その身は心配であったが、こうしてアルビーナがフォーグレンにいることは、きっとセンが無事であるからに違いない。


 ハーヴィンはそう思うことで自分の不安を打ち消した。


 センのことは心配だが、シュイグレンとの戦いが迫っていた。

 考えなければならないことは山ほどあった


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