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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第5章 戦いの幕開け
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フォーグレンの神官74

 兵士達の寝息が聞こえる。明日の夜明けとともに出陣すると言われ、兵士達は城の大広間で寝かされていた。

 眠る兵士達の間をすり抜ける、影が二つある。影はセンとロセだった。音を立てぬように鎧を脱ぎ、普段の軽装で宙を浮き、城の中を進んでいる。


「!」


 ふいにセンはロセの胸倉を掴むと、柱の壁に隠れた。


「ズウ。そろそろ寝ようぜ。ロセ達はヤワン達が追ってるんだろう?ここに現れるわけがないぜ」


 あくびをしながらツゥリが、セン達が隠れている柱の近くに姿を見せた。


「だがな、油断は禁物だ。火の神官もいる」

「ふん、火の神官か」


 ツゥリはターヤに倒されたことを思い出して、忌々しげに舌打ちをした。


「ツゥリ。お前は先に休んでろ。俺は大広間をもう一度確認する」

「助かるぜ。頼んだぞ」


 ツゥリは嬉しそうにそう言うと、ズウに手を振り、奥の部屋に姿を消した。ズウはその背中を見送った後、大広間のある階下へ降りていった。

 二人の姿が完全に見えなくなり、センはロセの胸倉を掴む手を離した。そして上階に上がるために階段をのぼりはじめる。ロセは慌ててその後を追った。



「ごほっつ、ごほっつ」


 光に包まれ、視界が全て真っ白になった。ティアナは初めて触れる力に驚いた。体が引きちぎられるような感覚がし、体が浮いた。そしてぱしんと音がして、足に地面が付くのがわかった。


「姫様、大丈夫ですか?」


 咳込むティアナにネスがそう声をかける。そして手を宙に向けると周りに立ちこめていた煙が消えた。


「ここは……キリカの家か」


 ネスは周りを見渡し、ここが何年か前に訪れたキィラの異母弟のキリカの家であることがわかった。


「そうか、アルビーナ達がいた場所だな」


 瞬間移動の技を試したいというアルビーナとミシノに、内心冷や汗を流しながらネスは同意した。

 瞬間移動の技はどうやら使うものが飛んできた場所に戻るようになっているらしい。ネスはそんなことを思いながら、床に座り込むティアナに手を差し出した。


「ここは大神官の弟君の家です。城まで飛んでいきます。いいですね?」

「はい」


 ティアナはしっかり頷くと、ネスの手を掴み立ち上がった。相変わらず船酔いしたような気持ち悪さはあったが、城にいるはずの父や母達の様子が気になっていた。ぼんやりしている暇はなかった。


「しかし、だれもいないのか?」


 家の中は静まり返っていた。ネスはティアナを連れて、階下に降りる。そして玄関まで来た時に床に倒れるキリカと少年ミンの姿を発見して走り寄った。


「キリカ!」

「ネス……あなたね。兄さんは大丈夫なの?!」


 キリカはぼんやりと目を開け、自分を抱くのがネスだと分かるとその腕を払い起き上がった。


「キィラは大丈夫だ。数日もあれば元気になる。それよりここで何があったんだ?」

「ヤワンちゃんの反撃にあっちゃったの。あんなに強くなってると思わなかった」


 キリカは立ち上がると一人ごとのようにそうつぶやいた。そしてティアナが抱き起こしたミンの側に近づく。息があることを確認し、ほっとため息をついた。キリカはミンをその腕に抱き、ネスを見つめると、息継ぎすることなく言葉を放った。


「ネス!城に急いで!ロセちゃんとセンくんが危ないわ!」


 

 デイの部屋は最上階だった。

 給仕をしている者にロセが話しかけ、聞き出した。センはロセを軽い男だと思いながらその情報収集力には驚いた。


 しかし、ターヤが見たら怒り狂うだろうな。


 センはそう考え苦笑した。


 可愛らしい給仕に甘い言葉をかけ、聞き出す様子はセンが見ても赤面するようなものだった。


「センさん」


 後ろを歩いていたロセがそう言って、前方の扉を指差す。

 最上階には一つしか部屋がなかった。青色の国旗を両側かけた扉が見える。

 センは『神石』のかけらを鞭に、ロセは剣に変えた。そして扉を開ける。


「……残念だったな」

「!」


 そう声がして、振り向こうをした時はすでに遅かった。デイに背中に周り込まれ、首元に手刀を叩きこまれる。


「センさん!…ヤワン先輩?!」


 床に倒れたセンを助けようとロセが動くと、目の前にヤワンが現れた。そしてロセが剣を構える前に、その鳩尾に拳を叩きこむ。


「悪いな。ロセ」


 力を失い床に倒れ込むロセにヤワンはそうつぶやいた。


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