フォーグレンの神官71
「まったくお前らのしけた面見てるとやる気がそがれるぜ」
「これから戦いにいくというのに士気もあったもんじゃないな」
ツゥリとズウは兵士達の様子をみながら忌々しげにつぶやくと、城の中に入っていた。
その後ろ姿が城に消えたのを確認して、ロセは兜を脱いだ。
「あつ~。まったくやってられないぜ」
「ロセ!」
その隣で全身を鎧に包んだセンが咎めるようにロセを見た。
「だいじょーぶだって、センさん。しばらくは戻ってこないはずさ」
ロセとセンは正規の兵士を襲い、その鎧を脱がせると兵士になり済まして軍隊に紛れ込んだ。
隙を狙ってデイから水の『神石』を奪うつもりだった。
「しっかし、ラズナンだっけ?何考えてるんだろうな。水の『神石』を使ってる以上、シュイグレンが圧倒的に有利なのに。兵士を集めるなんて」
ロセは幾分声を抑え気味にセンにそう囁く。
「そうですね。何を考えてるのか……」
センはロセだけに聞こえるようにそう返事を返すと、兵士達を見渡した。農民や町民を集めて作りだした軍隊、軍隊とはいえない軍隊だった。
無駄な血を流させるわけにはいかない。
センは拳を握るとデイがいるはずの城に目を向けた。
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「いらっしゃい~」
玄関の扉を開けて侵入したヤワン達を迎えたのは、にこやかな笑みを浮かべるキリカだった。ヤワン達は力が一気に抜けるのを感じたが、なんとか武器をその手に持ち、構えを取った。
「おひさしぶりね。ヤワンちゃん。元気にしてた?」
キリカは物騒な表情をしているヤワン達に笑顔のままそう尋ねる。
「……キリカさん。ロセと火の神官はどこにいるんです?」
しかし、ヤワンはキリカに笑顔を返すこともなく、視線を険しくしてキリカを見つめた。
「つれないわね。わたしが教えるとでも思うの?」
「……ならば力づきでも教えてもらいます」
ヤワンは剣先をキリカに向けるとそう言った。
「ふふふ。出来るものならしてみたら」
キリカはふわりと笑い、手に持っていた数個の玉を床に投げる。
「ごほっつごほっつ」
砕けた玉から煙が発生し、ヤワン達は咳き込み始めた。
「特製の煙玉よ~。大丈夫死にはしないから」




