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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第1章 火の『神石』
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フォーグレンの神官3

 ハーヴィンを城から連れ去ったアルビーナとミシノは隠れ家の洞窟に戻ってきていた。洞窟でありながらも照明や美しい家具が置かれて、家といっても過言ない造りだった。


「あの間抜けな顔、面白かったね。神官ってやっぱりだめだめだね」


 ハーヴィンをベッドに寝かせ、ミシノは笑いながらそう言った。アルビーナはセンの格好のまま、わざと目立つようにハーヴィンを連れ去った。そしてミシノと共に追いかけようとする兵士や神官に火と水の神の力を使って威嚇した。


「アルビーナ、本当に『神石』に興味があるの?力なら今でも使えるのに」

「馬鹿ね。今の力なんて『神石』の力に比べると非じゃないわよ。王子を連れ去ってフォーグレンを乗っ取っても所詮は一時的なもの。神官たちも馬鹿じゃないわ。そのうち奪い返される。でも『神石』さえあれば、誰もあたしには敵わないわ」

「ふ~ん。そういうことか。面白そうだね」

「そうでしょ?世界中にあたしの力を見せつけ、私の存在を思い知らせてやるの。ミシノはもちろん協力してくれるでしょ?」

「当然だよ。僕は楽しいことが大好きだもん。だからこういうことも大好きなんだけど?」


 ミシノは囁きながらアルビーナに軽く口づける。


「やめてよ。今センの姿なんだから」

「そうだったね」


 ミシノはくすっと笑うと、胸元に輝く青い石に触れた。そして片方の手でアルビーナの頬を撫でる。するとセンの姿が変化し、真っ赤な髪のアルビーナの姿になった。


「これでいい?」

「いいわ」


 アルビーナがそう答えると、ミシノは再びアルビーナに唇を重ねた。



「大神官様。宰相様がお見えです」


 大神官の身の周りの世話をする神官見習いの声がして、本殿の扉が開けられた。すると数人の兵士を伴って、宰相が現われた。大神官は城から戻ってきた上級神官達と共に宰相を迎える。


「宰相殿。ようこそ」

「ああ、大神官殿。宮殿で大変なことが起きました。多分ご存じだと思うのですが……」


 宰相は大神官に挨拶もそこそこに、そう言い、視線を神官達に向けた。


「あなたの部下センが王子を誘拐し、引き渡しの交換条件として『神石』を要求しています。期限は三日後です。『神石』を預からせていただいてもいいですね?」


 宰相は射抜くような視線を大神官に向けながらそう話した。大神官は動じることなく見つめ返し、口を開く。


「よかろう。ただし三日後だ。引き渡しは三日後だろう?」

「そうですが。実行犯はあなたの部下です。他の神官も仲間だという可能性もあります。今すぐ『神石』を渡してもらえますね?」

「実行犯はセンではない。しかし神殿が関わっていると思われても仕方がないことは理解している。『神石』を渡してもいい。だが、わしも一緒に宮殿にいく。それでいいな?宰相殿」

「……いいでしょう」


 宰相がそう言うと、その場にいた上級神官達が動揺した様子をみせた。


「皆の者。三日後にはすべて方がつく。それまで、くれぐれも神殿のことを頼む。わしの言葉忘れるな」


 大神官の有無を言わせない言葉に神官達は騒ぐのをやめ、口をつぐんだ。その言葉には先ほど裏口から逃がしたセンとターヤのこと口止めする意味も含んでおり、神官達は理不尽さを感じながらも黙って頷いた。


「大神官殿。さあ『神石』を渡してください。宮殿でのあなたの待遇は私が保証します。ご安心ください」


 宰相が見守る中、大神官は『神石』を本殿奥から取り出し、金色の縁取りがされている木箱に『神石』を入れた。神石は箱に入ると抗議をするように一瞬真っ赤な光を放ったが、大神官はそっと蓋を閉めた。




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