フォーグレンの神官42
「セン。あたしはあんたが大嫌いよ」
「……」
家の裏庭に出るとアルビーナはそう話を切り出した。
「殺したいくらい嫌いなの」
センはアルビーナの鋭い視線を受け止め、ただ黙っていた。
「でも頭に来るけど、殺せないの。なんでかわからないけど。あんたに手を掛けれないの。でも助けてもらったお礼はするつもりよ。だから、水の『神石』を取り返す手伝いをしてあげるわ。それが終わったらあんたと決着をつけるわ。あのデイの奴をぎたんぎたんにしてやらないと気がすまないしね。あんたは後回しよ」
アルビーナは、息がつく間のないほど言葉を続け、用が済んだとばかり、センに背を向けた。
「アルビーナ……」
「何?」
センはアルビーナが振り返るよりも先に、その背中を抱きしめていた。
完全に許してもらっていないことはわかっていたが、前より距離が縮まったようでセンは嬉しかった。
「ちょっと、離してよ。あんたと仲良くするつもりはないの!」
アルビーナはセンを無理やり引き離すと裏庭を後にした。
「アルビーナ。顔がにやけているよ」
一階の店に戻ったアルビーナにミシノは意地悪な笑みを浮かべる。
「……うるさいわね!」
アルビーナはミシノに噛みつくように言い返して、椅子に乱暴に座った。
「本当はとっくに許してるくせに」
「ミシノ、うるさいわよ」
アルビーナは目の前の置かれた紅茶のカップを手に取りながら、ミシノを睨みつける。
「本当、アルビーナは捻くれてるよね」
「どういう意味よ!そういうあんたはどうなのよ!」
「僕?僕はいたって素直だよ」
怒りながらもその顔が少し笑っているアルビーナに、ミシノはにっこり笑ってそう答えた。
ロセは、本を片手にキィラの脈拍を調べたりしているキリカの様子を見ていた。
「キリカさん、どうですか?」
「うーん。アタシじゃ手に負えないわ。ネスはいないの?」
「ネス様はフォーグレンにいます。やはりキリカさんでもだめですか……」
「ネスならわかるはずよ。フォーグレンに飛んでネスを連れきなさいよ。じゃないと手遅れになるわ」
「飛ぶ……飛んで帰ってくると二日かかる。大神官様をフォーグレンに連れていけば1日で……」
「だめよ。体に負担がかかりすぎるわ。二日ね。ぎりぎりってとこかしら……」
キリカは指を噛み、悔しげに顔を歪めた。




