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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第3章 北の異変
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フォーグレンの神官40

 薬店部分でミシノは暇つぶしに店内を見て回っていた。アルビーナは椅子に座り、本を手にとり、ぱらぱらと頁を捲っている。


「アルビーナ。ここまで一緒について来たけど、どうするの?」


 ミシノは壁にかかる珍しい薬草を興味深そうにさわり、その香りを嗅ぎながらそう聞いた。アルビーナはミシノの問いに答えようともせず、視線を本に向けたままだった。本を読んでないのは明らかで、その視線はぼんやりとしていた。


「僕はいつも君と一緒だから。例え君が何をしようとも」


 ミシノはそんなアルビーナにそう言葉をかけ、店内の探検を続けた。

 アルビーナが一人で考えているときは邪魔をしないのがミシノだった。

 そして、愛するアルビーナが出す答えにただ従うつもりだった。


 セン……。


 アルビーナは本をめくる手を休め、視線を窓に移した。窓は薄汚れ、外の様子はまったく見なかった。ミシノが自分を心配してくれているのがわかった。そして自分が結論を出すのを待っているのもわかっていた。

 アルビーナは自分がこれからどうすべきかわからなかった。

 センの手に触れ、祈った瞬間、何かが自分の中で解けたような気がした。

 でもそれが何か知りたくなかった。


 センを殺すため、復讐するためにこの二年間生きてきた。

 

 今さら忘れることなどできなかった。



「センさん、ターヤのこと頼む。俺は大神官様の様子をみてくる」


 ロセはベッドのターヤの頬に優しく触れた後、部屋を出て行った。

 センは壁から離れるとベッドの側の椅子に座った。そしてターヤの握る火の『神石』を掴んだ。意識がないはずなのにターヤは『神石』を握り締めたままだった。センはターヤの手の中の『神石』を見つめた。石から輝きが消えているような気がした。


 おかしいな。


 石に触れると何も気配を感じなかった。

 しかし、ターヤごと『神石』に触れると神がいるのがわかった。

 どういうことだ?

 火の神はターヤの中にいるのか?


 神が人間に宿るなど、そんな話聞いたことなかった。

 『神石』に神が宿ることすら、一部の人間しか知らないことだった。


 『ターヤを連れて行きなさい』


 カネリは何度もそうセンに言った。


 大神官様はこうなることを知っていたのか?

 

 センは呆然とターヤを見つめた。

 規則的な寝息が聞こえ、ターヤが静かに寝ているのがわかった。


 ロセには心配ないと言ったが、センはターヤがこのまま目を覚まさないのではないかと心配になった。


「セン」


 ふいに呼びかけられ、センはびくっとして振り向く。


「アルビーナ」


 視線の先にはアルビーナが立っていた。その視線は射ぬくようで厳しかった。


「話があるわ。来て」


 開け放たれた入口で、アルビーナは首をしゃくりるとセンに背中を向けた。

 

 ターヤのことは後回しだ。

 私には私がやるべきことがある。


 センは椅子から立ち上がると、アルビーナを追って歩き出した。



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