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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第3章 北の異変
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フォーグレンの神官39

「はあい!」


 扉を叩くと出てきたのは水色の巻き毛に少し化粧を施したやけに綺麗な男だった。


「ロセちゃん、ミシノちゃん…兄さん?!」


 男はロセとミシノの顔を嬉しそう見たが、ミシノが抱える男―キィラを見ると顔色を変えた。


「に、兄さん?!どうしたの?いったい?!」


 男はミシノからキィラを奪い取るように預かると、二階に駆け上がった。玄関に取り残され一同は唖然としたが、とりあえず中に入り、扉を閉めた。


「……ミシノ。あれは何?兄さんって…?あいつら兄弟なの?!」


 アルビーナは扉が閉まったのと確認し、顔をしかめてそう聞く。するとミシノが苦笑した。


「あの人はキリカ。大神官の弟だよ」



 デイ達が去り、半壊した部屋にロセ、ミシノ、アルビーナ、セン、そして気を失ったターヤが残された。ロセはターヤがただ気を失っているだけで、外傷がないことことに安心すると、まずキィラの行方を捜すことを優先した。水の『神石』が奪われ、キィラの安否が心配だった。そしてキィラの部屋に向かって一同が屋敷内を歩きすすめていると、神官達がいたるところで寝りこけている姿を見かけた。部屋に入ると、キィラが床に倒れている姿を見つけた。そしてその体を痙攣させ、ただ視線だけをこちらにむけるキィラを見て、ロセは医師に見せる必要性を感じた。

 ヤワンが背いた以上、屋敷に留まり、治療をうけることは危険だった。かといって民間の医師の腕も信じられなかった。そこでロセが思いついたのは薬師キリカのことだった。 

 

 キリカはキィラの異母兄弟だった。キィラの父が外に作った子供で今だに本家では正当に扱われていなかった。しかしキィラはキリカを弟と認め、何かと世話を焼いていた。

 キリカは自宅を改装し、薬店を営んでいた。店は街から離れた森の近くにあった。一階を店にし、二階は住居として使っていた。また地下にはいろんな薬草を貯蔵する倉庫があった。店内には薬草を使って、いろんな薬も調合するため、怪しげな色の液体が入った鍋や、本が散乱している。

 ロセはとりあえず一階の店部分にあった寝室にターヤを運んだ。センはロセと共にターヤに付き添い、ミシノとアルビーナは部屋を出て店のほうで休んでいた。


「ロセ、心配ありません。ただ疲れて寝ているだけでしょう」


 ベッドの側の椅子に座り、じっとターヤの様子を見つめるロセに、センはそう言った。ロセが冗談ではなく、本当にターヤのことを想っていることがロセの様子から伝わってきた。


 神官は恋をすることはできない。


 しかし、センはターヤにとって神官という道だけが、彼女の道ではないこともわかっていた。

 十年前のあの吹雪の夜、シュイグレンとフォーグレンの国境で見つけたターヤ。

 名前以外に記憶がなく、センは神殿で引き取ることをカネリに願い出た。

 この世界で身寄りがない子の行く末がどうなるかセンは痛いほどわかっていた。


 ロセはいい男だ。

 身は軽いが、ターヤへの想いは嘘でないことはわかっていた。


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