フォーグレンの神官33
本作はBLではありません。しかしこの33話だけは15歳以下の閲覧にふさわしくないBL的性表現があります。
ご注意ください。
荒い息が肌にかかる。
ミシノは男の顔を凝視するのが耐えきれず、目を閉じた。
男の生暖かい唇が自分の体を這うのがわかった。
耐えがたい時間だった。
しかし耐えるしかない時間だった。
行為を終えた男がミシノから離れる。
ミシノはシャツを羽織ると、ベッドから起き上がった。
そして真っ直ぐ浴室に向かう。
ここはシュイグレンの城の中だった。
男はシュイグレンの第四王子のマーギラ、ミシノは週に一度こうやってマーギラの相手をしていた。
男と交わるなんて嫌な行為だった。
しかし避けられらない行為だった。
事は数カ月前のこと、ある少年に街で会った。
怪我をしており、理由は聞いても答えなかった。
そのうち、少年が追われているのがわかった。
追っていたのは王兵だった。
理由を問いただすとマーギラの命令ということだった。
少年の怯え様から尋常じゃないと一緒に城に行くと、少年はマーギラに囲われているものだった。
王族には逆らえなかった。
しかしミシノは少年をこのままマーギラの元に置いて置きたくなかった。
そして取引をした。
少年の代わりにマーギラに抱かれることを望んだ。
「ミシノ。もう帰るのかい?」
大柄な体を揺らし、マーギラが浴室に入ってきた。
「ええ、明日は仕事があるので」
「そんなの私が断ってあげるのに」
「いいえ。仕事は仕事ですので。それでは来週」
もう一度抱かれるなんでごめんだ。
ミシノは浴槽から上がると、恨めしそうにみるマーギラに背を向けた。
少年――シャンは今実家に帰り、家業を手伝っているはずだった。
城での記憶を忘れるようにシャンに伝えた。
そうだ。シャンの様子を見に行こうか。
ある日、ミシノはシャンの村に跳んだ。そしてシャンの家に誰もいないことに気がついた。家のことを尋ねる村人は怯えたようは表情を浮かべ、シャン一家は別の村に移動したと答えた。
ミシノはそれを信じなかった。きつく問いただすとシャンは両親を殺され、王兵に連れていかれたということだった。
ミシノはその足で城に跳び、マーギラの部屋に入った。そして目の前で繰り広げられる光景に吐き気がし、息が止まりそうになった。
口から泡を吹き、焦点があっていないシャンに脂ぎったマーギラが覆いかぶさっているのが見えた。ミシノはマーギラに水弾を当てシャンから引き剥がした。そして裸のシャンを布で包み、抱きかかえる。
「シャン、シャン!」
ミシノは必死に呼びかけた。しかし、シャンの意識が戻ることはなく、一度痙攣すると、そのまま動かなくなった。
「ミ、ミシノ!?お前はこの私を誰だと思っているんだ」
ベットから落ち、床から体を起こしたマーギラは目に怒りをあらわにして、そう言った。
「殺してやる!」
「ひっつ!」
ミシノは『神石』のかけらを剣に変えると、マーギラの口を押さえ、壁に叩きつけるとその心臓を一気に突いた。
マーギラは目を見開くと、息絶えた。
「もっと早くこうすべきだった。ごめん。本当にごめん。シャン」
ミシノはマーギラから手を離すと、シャンを抱きあげた。少年の体は硬くなり、冷たかった。
ミシノはシャンを埋葬すると、神殿を出た。マーギラを殺したことがわかるのは時間の問題で、そのために捕まり縛り首にあうなど馬鹿らしかった。
神殿を出る時、ロセに見つかった。
ただ神殿を出ることだけを伝えた。
それ以上は話したくなかった。
知られたくなかった。
「ミシノ……?」
目を開けるとロセの顔を見えた。
心配気に見ているのがわかった。
夢?
なんで?
そう思ったが睡魔が襲い、ミシノの意識は再び深い闇に落ちた。




