フォーグレンの神官31
「負けるわけないわ!火の神よ。力を見せなさい!」
アルビーナは脂汗を額に浮かべながらそう叫んだ。
ワタシの力か……。
お前に死んでもらっては困るんだかな。
「このあたしが死ぬわけないでしょ。力を出して!」
お前の願いなら、そうしようか。
「お嬢さん!やめなさい!」
キィラが珍しく厳しい声を発した。
神の力を使いすぎると、火の『神石』に力を吸い取られて死ぬ恐れがあった。
「人の指図はうけないわ!火の神よ!」
わかった。
脳裏でそう火の神の声が響くとアルビーナは眩暈に襲われた。
しかし根気を絞り杖を握り締め、キィラをそして、デイと戦っているセンを見た。
あんたを殺すまであたしは絶対に死ねないわ。
火の龍が燃え上がり、大きさが二倍になる。龍は口を大きく開くと水の龍に襲い掛かった。
「!」
水の龍が神殿の壁に叩きつけられ、壁が崩れる。そして、それまでどうにか建物の形を残していた神殿が崩れ始めた。
「アルビーナ!」
崩れゆく神殿の中でアルビーナが倒れているのが見えた。そしてその上に壁や天井の破片が落ちていこうとしていた。彼女を守るはずの龍の姿が見えなかった。
センの体は無意識に動いた。対峙するデイに背を向けると崩れ落ちる神殿に飛び込んだ。
「センさん!」
「セン様!」
ロセとターヤは戦いの最中ということを一瞬忘れ、眼下の崩壊していく神殿に目を向けた。
「甘いな。本当に」
デイはそんな二人に向かって水弾を放った。
「!?」
二人は水弾にはじかれ、体が宙を舞う。しかし、ロセは歯を食いしばるとターヤの体を抱き、地面に着地した。
「ほう、やるな」
デイは、瓦礫と化した神殿の側で上空を睨みつめるロセを、見下ろした。
「俺は水の神官だ。簡単にやられはしない。ミシノを返してもらう」
ロセは気を失ったターヤをゆっくりと地面に降ろし、剣を上空のデイに向けた。
瓦礫に埋もれたセンとキィラのことは心配だったが、二人の力はロセよりも上だった。そう簡単に死ぬわけがないとロセは信じていた。
「ミシノか。返してほしいなら力づくで奪うんだな」
デイは槍を構えるとロセに向かって下降した。ロセを一気に叩き、瓦礫の中にキィラと共に埋もれた水の『神石』を奪うつもりだった。
「!」
ロセはデイの槍を剣で受け止める。しかし、力の差でその体は吹き飛ばされる。
「お前ごときが俺様に敵うわけがないのだ」
デイは仮面の奥の目を細めるとロセに向かって氷の矢を放った。
「!」
しかし、その矢がロセに届くことはなかった。
「僕はいつまでも足手まといになるわけにはいかないんだ!」
デイの矢はターヤが作った火の壁に妨げられていた。
「火の神官の力をみせてやる!」
ターヤは鞭を掴み、デイに向かって跳んだ。
「青臭いガキごときが」
デイは舌打ちをすると槍で鞭を巻き取り、ターヤごと鞭を放り投げる。
ターヤの体は宙を飛び、瓦礫にぶつかった。
「ターヤ!」
ロセは重い体を起し、力を失ったターヤに走り寄った。そして大きな外傷がなく呼吸があることにほっとした。
「心配するな。一緒にあの世に送ってやる」
デイは槍をロセに向け、止めを刺すために力を貯め始めた。




