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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第2章 水の『神石』
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フォーグレンの神官30

 水の神殿は神殿の形を失いつつあった。壁はうち壊され、天井はほぼ原形をとどめていなかった。

 怪我をした神官達が避難を終え、神殿の周りで戦いを見守っていた。自分達の力を超えた戦いだった。悔しさを胸に秘めながら、神官達は勝利と無事を祈っていた。

 シュイグレンの市民達は目の前で繰り広げられる戦いをまるで見世物のように見ていた。城から送られた兵士達は自分達が手に負えない戦いであることを知り、市民が巻き込まれないように神殿を取り囲むことしかできなかった。



「なに?!氷の球体?」

「そうだ。ミシノが可愛らしい人形に見えるぞ。あの減らず口のせいで気づかなかったが、奴も案外かわいい奴だったんだな。ぐふっつ!」


 ロセはズウを睨みけると剣を逆さにし、その柄でズウの鳩尾を殴りつける。ほどなくしてズウは気を失った。

 ターヤの方を見ると、ツゥリが縄で巻かれて身動きができなくなっていた。


 終わったか

 あとデイとアルビーナか……。


 ロセが宙を見上げると、破壊された天井部分から飛び出し、デイとセンが戦っていた。目を凝らしてみるとデイの腰のベルトに氷の珠が煌めいているのが見えた。


 あれか!


 ズウからミシノが氷の球に閉じ込められたままであることを聞いた。そしてそれを盾にアルビーナがデイに協力していることも知った。


 やっぱりアルビーナは悪い奴じゃないんだな。


 火の『神石』を狙ったのはセンへの復讐、神殿への復讐に違いなかったが、今度の水の『神石』はあきらかにミシノを救うためだった。


 ならば、デイから氷の球を盗むまで。

 大神官様の力があれば術は解けるはずだ!


「ターヤ!センさんを援護するぜ」

「わかってるよ!」


 ロセの言葉に頷くと、ターヤは上空へ飛んだ。その顔は昨日とは全く違い自信にあふれた顔だった。



「なかなか、やりますね。赤毛のお嬢さん」


 キィラはにっこりとアルビーナに笑いかけた。

 火の龍と水の龍は何度もぶつかり合い、激しく争っていた。力は互角のように思えた。しかしキィラとアルビーナの様子は違っていた。アルビーナは歯を食いしばり、眉を辛そうに寄せていた。対するキィラは笑顔を浮かべ、ただ龍の戦いを見ていた。


「なんなのよ。これ!」


 アルビーナはおかしな感覚に声が上げた。力が石に吸い取られるような感じだった。


「お嬢さん、神石は持ち主の力を吸い取りながら、力を具現化するのです。気が付きませんでしたか?」


 キィラの言葉にアルビーナは舌打ちをした。思えば神石の力を使うたびに気だるいような気分になっていた。それはセンやデイと戦った疲労から来てると思っていたので気にしていなかったのだ。


「残念ながら、あなたの力では火の神は完全に力を奮うことができません」


 キィラはそう言うと持っている三叉の鉾を構えた。




「年を取ったとは言え、お前のその瞳、誘われるな」


 デイは自分の剣を受け止めたセンを至近距離で舐めるようにしてみると、囁いた。センはその視線、声色におぞましさを感じて足蹴りを食らわせる。

 デイは体を捻り蹴りをさけると、地面に着地した。そして武器を剣から槍に変える。


「やはり、この方が使いやすいな」


 デイは槍をくるくると回した後、構えと取り、センに向かって跳んだ。


「センさん!」

「セン様!」


 ロセとターヤはセンに向かって連続で突きを放つデイの背後に回った。そしてロセは剣を、ターヤは鞭を持ち、攻撃を仕掛ける。


「ふん」


 デイは鼻を鳴らすとくるりと体を一回転させてよけ、ロセとターヤの後ろに回り込んだ。そして槍から水弾を放つ。


「!」


 しかし、水弾は二人の前に作られた火の壁によって消滅させられた。


「油断は禁物です」


 火の壁を作ったのはセンだった。肩で息をしながら、デイを睨みつけていた。


「さて、面白くなってきたかな。俺様の力を味わわせてやろう」




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