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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第2章 水の『神石』
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フォーグレンの神官28

「手ごたえがないわね」


 アルビーナはつまらなそうに杖をくるくると(もてあそ)ぶ。数十人の神官たちが大理石に床に倒れていた。

 まだ体を起していられるものは、おびえた表情をしてアルビーナ達を見ている。


「やはり何人か殺さないとキィラは出てこないか」

「やめてよ!」


 床に伏してる神官に止めを刺そうとするデイにアルビーナが声を上げた。

 神殿、神官のことは大嫌いだが、無暗に人を殺すのは嫌だった。


「殺さなくてもいいでしょ。出て来なきゃ、こっちから探せばいいんだから。どうせ、本殿にいるんでしょ」

「ふん。面倒だな」

「そんな面倒なら、あたしが探してきてあげるわよ。火の神よ!行くわよ!」


 アルビーナは両手で杖を握りしめる。

 脳裏にやる気のない火の神の声が聞こえた。

 しかし、解放させることができるのはアルビーナだけだった。

 アルビーナの周りを旋回していた龍はアルビーナを乗せ、神殿奥へ飛んでいく。


「デイ様、あの女に任せておいていいですか?」

「ああ、心配ない。あの女は裏切ることはできない。なんせミシノの命がかかっているのだからな」




 龍に乗った赤い髪の女性見えた。

 それがアルビーナとわかるに時間がかからなかった。


「いくわよ!」


 龍から炎が吐き出される。


「みなさん、下がってなさい!」


 キィラはそう言うと三叉の鉾を両手で握りしめた。


「水の女神様、力をお貸しください!」


 鉾から美しい銀色の龍が現れ、赤い炎を白い炎で相殺する。


「さあ、赤毛のお嬢さん。火の『神石』を返してもらいましょう」



「な、なんだ?!」


 爆発音がして、神殿が大きく揺れた。

 トゥリは怯えた様子で、天井を見上げた。ズウは剣を構え、音がした方向を見た。


「キィラが出てきたようだな。とくとお手並み拝見といこうか」


 デイは二人を置いて、飛び立つ。


「デイ様!お待ちください!」


 ズウとトィルは慌ててデイの後を追った。



「大神官様!アルビーナは私が!」

「センさん、火の『神石』による力は水の『神石』でしか対抗できません。安心しなさい。綺麗なお嬢さんを殺すようなことはしませんから。ただ少し懲らしめるだけです」

「綺麗なお嬢さんって。あんたよくわかってるじゃないの。でも懲らしめるって言葉は間違ってるわね。懲らしめるのはあんたじゃなくて、あたしよ。その後、セン!あんたの相手をしてあげるわ!今度こそ殺してやるから、待ってなさい!」


 アルビーナは龍から降りると、杖を両手で構えた。すると火の龍は水の龍に飛びかかった。


「売女の娘、まだ生きていたのか」


 ふいに背後からぞっとするような声がした。振り向かなくてもセンには声の主が誰だがわかっていた。

 男はデイ。忌まわしい男だった。

 センは拳を握りしめるとゆっくりと振り向いた。

 デイはその白い仮面の奥の灰色の目をぎらぎら輝かせてセンを見ていた。


「センさん。俺も援護するぜ」

「僕もです!」


 ロセとターヤはそれぞれ剣と鞭を作り出し、センの前に立った。


「お前らの相手はこの俺達だ!」


 しかし、そんな二人にズウとトゥリが襲いかかる。二人に対して上空から雨のように氷の矢が降り注いだ。

 ロセは咄嗟にターヤを片手に抱くと、剣を大きな盾に変化させた。盾は二人の体を隠すほどの大きさで、氷の矢が二人に届くことはなかった。すべての矢が金管楽器の音色を立てて弾かれた。


「かかったな!」


 ズウは薄ら笑いを浮かべると、氷を防ぎほっとしているロセに切りかかった。


「ターヤ!ロセ!」


 センはその矢に火弾をぶつけようとするがデイによって阻まれた。


「人の心配より、自分の心配をするんだな」


 デイは鞭を剣に変え、センに振り下ろした。


「負けるものか!」


 ターヤはロセの腕から抜け出ると、ズウに向かって鞭を振り下ろした。鞭は炎を生み出し、ズウへ襲いかかる。


「くっう!」

「ズウ!」


 ツゥリは燃え上がるズウに水を放ち火を消す。そして、ズウを庇うようにして降り立ち、矢をロセとターヤに向けた。ロセはズウとトゥリに向けて余裕の笑みを浮かべると、剣を構えた。


「なかなあやるなあ。練習相手にはもってこいの奴らだな」

「くそ。練習相手だと?」


 ズウとトゥリは、自分達に対峙するロセに怒りの表情を見せた。しかしロセは動じることなく笑みを浮かべたままだった。


「あんたら、俺達に敵うって思ってるの?上級神官の俺に、火の神官だぜ?」




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