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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第2章 水の『神石』
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フォーグレンの神官22

「ミシノ。どうしてなんだ?」

「……君に言う必要はないだろう?僕は僕のしたいようにするだけだから」


 ミシノはそう言うとロセに背を向けた。


「ミシノ!」


 ロセが声をかけるがミシノが振り返ることはなかった。

  

 静まり返った神殿の中、大理石を歩くミシノの足音だけが響いた。

 ロセはミシノの後を追えなかった。

 その背中は全てを拒絶していた。


 数日後、ロセはミシノが神殿を出た理由を知った。



 

 目を開けると薄暗い部屋の中に寝かされているのがわかった。

 心地よい肌触りの寝具にさわやかな香り…ロセが周りを見渡すと、自分がやけに豪華な部屋の中にいるのがわかった。部屋の中の調度品は全て金色の縁取りがされてあり、色は白で統一されていた。そして床は大理石であった。

 窓に近づき、深紅の重厚なカーテンを開けると、太陽の光が目を刺激した。

 そしてロセは気を失うまでの記憶を取り戻した。


 ミシノ……。


「ターヤ!」


 ロセは氷に閉じ込められた元同僚の姿を思い出すと同時に、気を失った新米神官のターヤを思い出した。

 十六歳と言えどもまだ子供のようなターヤ。

 かわいらしい神官だった。


「ロセ!」


 部屋を飛び出したロセに見覚えのある兵士が声をかけた。


「カノト……」


 それはフォーグレンの軍隊の同僚カノトだった。


「そうか、ここはフォーグレン……」


 短く刈り込んだ黒髪のがっちりとした男カノトから視線を逸らし、ロセはそうつぶやいた。頭がまだはっきりとしていない感じだった。

 頭に残っているのはデイの白い仮面、そして氷に閉じ込められたミシノ、気を失ったターヤの姿だった。


「ロセ、何寝ぼけてるんだ?ここはフォーグレンの宮殿だ。俺にシュイグレンの神官だって黙っていやがって」


 カノトの鋭い視線を受け、ロセは自分の身分がカノトに知られているのがわかった。カノトは渋い顔で悔しそうにロセを見ていた。

 カノトはロセが入隊してからずっと一緒に行動していた兵士だった。酒場で一緒に酔い潰れたこともあるいい仲間だった。そんな男に事実を言えないことを何度か悔やんだが、フォーグレンの兵士に自分の身分を明かすわけにはいかなかった。


「本当ならぶちのめしてやりたいところだが、今回のことは許してやる。今度シュイグレンでうまい酒を飲ませろよな」


 カノトはそう言うと視線を緩め、ふっと笑顔を見せた。ロセはカノトの笑顔に安堵した。短い間と言え、カノトと共に過ごした日々は楽しかった。許してくれるということが嬉しかった。


「カノト。本当、お前っていい奴だな。今度酒だけとは言わず、シュイグレンのかわいい子を紹介してやるよ」

「かわいい子?お前、神官だろう?そんなこと」


 カノトはロセの言葉に目を丸くした。身が軽い男だと知っていたがそれは兵士の振りをしているからだと思っていた。

 身分がばれた今も変わらずそういうことを言うロセが信じられなかった。


「お前、相変わらず硬い奴だな。フォーグレンの奴はセンさんといいターヤといい、本当真面目な……」


 ロセはそう言いかけて、ふいに自分が慌てて部屋を出た理由を思い出した。


「カノト!俺はなんでここにいるんだ?俺以外にここにいる奴はいないのか?」

「俺以外?俺がいるじゃないか。本当、不思議なこと……」

「違う。そういう意味じゃなくて、俺以外、ここに運び込まれた奴はいなかったのか?」

「ああ、そういうことか。今朝宮殿に運び込まれたのはお前ともう一人、確か市場でみたかわいい神官だったかな」

「ターヤだ!カノト、ターヤはどこにいるんだ?」


 ロセはカノトの胸倉を掴む勢いで聞いた。カノトは勢いに押されながら、うーんと考えてるそぶりを見せる。


「あの神官なら、センという神官と客殿にいるはずだ」

「セン?センさんもいるのか?」

「そうだ。センがお前達を宮殿に連れてきたぞ。本当血まみれてどうしようかと思ったんだが……」


 ロセはカノトの話の途中で走り出していた。カノトがはっと気づいた時にはすでにその背中は遠くにあった。


「まったく、ロセの奴は……」


 そう苦笑してつぶやきながらカノトはロセの無事な姿にほっとしていた。自分をだましていたとはいえ、いい男だった。今朝宮殿に運び込まれた時、その体が血に濡れており心配した。しかし、先ほどの元気な様子を見てカノトは安心していた。


「しっかし、奴が神官とは……」


 フォーグレン育ちカノトにとって、神官とはセンやターヤのように下界から遠ざけられた存在だった。ロセのようにあからさまに異性のことを話す神官など予想できなかった。


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