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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第1章 火の『神石』
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フォーグレンの神官18

 アルビーナの青色の鞭が体をかする。

 センは鞭をぎりぎりで避けると蹴りを繰り出した。

 アルビーナはそれを体をひねり避ける。


「火の力は使わないの?じゃ、こういうのはどう?」


 肉体的攻撃しか仕掛けてこないセンにアルビーナは皮肉な笑みを浮かべると、火弾を作り投げた。そして同時に鞭を振り下ろす。

 センは手の平に火のグローブのようなものを作ると、手刀で火弾を真っ二つに割り、鞭を掴んだ。


「ふん、やるわね」


 アルビーナは掴まれた鞭を手元に戻すとそれを両手で掴む。

 力を振るえるのが嬉しかった。

 センを殺したいと体中から力がみなぎっていた。


 センは息を整えるとアルビーナを見つめた。

 アルビーナは自分を殺す気だ。

 

 本当はここでアルビーナに殺されたかった。

 この二年、苦しかった。

 自分を大切にしてくれたアルビーナを裏切り、宮殿にあがり、のうのうと暮らしていた。時折ハーヴィンからもたらされる不思議な感情に左右されるもの嫌だった。


 しかし、今ここで死ぬわけにはいかなかった。

 今のアルビーナが『神石』を持てば、その力を解放させることがわかっていた。

 それはできなかった。


 だから、戦うしかない。


「セン。いくわよ!」


 アルビーナは火の鞭を槍に変化させるとセンに向かって跳んだ。




「おっさん、息が切れているじゃねーか」

 デイはロセとミシノの見事な連続攻撃に苦しんでいた。ミシノが水弾を放つと間髪いれず、ロセは剣を振り下ろしてきた。ハーヴィンを片手に抱え、二人の相手をしているデイは徐々に追い込められていた。

 しかし、夜空にもう一つの白い影が見えた時、デイは薄笑いを浮かべた。そして躊躇なくそれに向かって、氷の矢を放った。



 ターヤがフォーグレンの方角に飛んでいると、戦っているロセたちが見えた。そう思った矢先、何十本もの氷の矢が飛んできた。


「うわ!」


 ターヤは『神石』のかけらを使うと慌てて、火の壁を作り上げた。しかし何十発もの氷の矢は壁を破壊し、そのうちの数発の矢がターヤの体をかすめる。


「ターヤ!」


 ロセは力を失い地面に落ちようとするターヤを追った。ロセの後方に向かって矢が放たれた時、まさかターヤが追ってきてるとは思わず油断した。ロセは地面擦れ擦れでターヤを抱きかかえるとゆっくりと降り立った。

 デイはその隙を見逃すこともなく、氷の槍を作り出すとミシノに向かって飛んでいた。


「くっつ」


 ミシノは素手でそれを受けとめた。すると槍から氷の蔦が生み出され、ミシノを覆っていく。


「ミシノ!ターヤ少し、ここで待っていてくれ」


 ロセは気を失ったターヤを静かに地面に降ろすと、デイに向かって飛んだ。




「もう終わり?」


 アルビーナは、地面に膝をつき顔を伏せるセンを見下ろした。アルビーナを傷つけないように、火の攻撃を使わないセンは決定打を打てなかった。しかし、殺す気のアルビーナはここぞとばかり、火弾や火の矢を繰り出した。そして防御ばかりのセンは徐々に追い込まれていた。


「死んでもらうわ」


 アルビーナは肩で息をするセンに向かって、槍を剣に作り返ると振り上げた。


「アルビーナ……」


 センは目を閉じた。

 これで終わりだと思った。

 『神石』を渡してはならない。

 そんなことはわかっていた。

 しかしアルビーナを傷つけたくなかった。

 

 大神官様

 申し訳ありません……。


 私はあなたにはなれません……。

 

 しかし、痛みは降りて来なかった。

 目をゆっくりと開けると苦痛の表情をしたアルビーナの顔がそこにあった。


「どうして、なんで。できないの。こんなに憎いのに!」


 アルビーナの叫びのような声が聞こえ、ドンと痛みがあった。そして意識がなくなった。





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