フォーグレンの神官17
「ミシノ!」
「何?」
ミシノに追いついたロセはその隣に並んで飛びながらそう話しかけた。
彼と話をするのは1年ぶりだった。
「こういうのはどうだ。俺とお前でデイをぶちのめす。それから俺たちの間で決着をつける」
「……いいよ」
ミシノにとってロセの提案はありがたかった。デイはハーヴィンを抱えているとは言え、その力は大神官に値するくらいのものだった。二人でかかったほうが勝算があった。
「じゃ、俺があいつより先に飛んで食い止める。いいな」
「了解」
ミシノの返事を聞いて、ロセは飛ぶスピードを増す。
その姿を見て、ミシノは数年前まで一緒に神使人と戦っていたことを思い出していた。
「待ちな。おっさん!」
ロセはデイの前に立ちふさがるとそう言った。デイは顔を歪めると動きを止め、ロセに対面した。そして後ろにミシノの気配を感じ、皮肉な笑みを浮かべた。
「二人がかりか……」
☆
「セン、神石とは何か知ってるか?」
宮殿に上がる前日、大神官が本殿にセンを招き、そう尋ねた。
「神の力を使うためにその仲介となるものです。この『神石』のかけらによって私たち神官は力を使えるんですよね」
「……それは違うのだ。セン。神石そのものが神なのだ。神が宿る石が『神石』だ。遠い昔、荒がる神をわし達人間が石に閉じ込めた。封印が解ければ世界は混沌に包まれる。わし達神官は『神石』からかけらを生み出し、力を使ってきた。そして同時に『神石』自体の封印が解けぬように守ってきた。これからもわし達は守り続けなければならない。『神石』の声に傾け、封印を解いたらおしまいだ。火の『神石』の声を聞けるのはわし達火の神官と火の神使人だけだ。神官が封印を解くとは思わない。しかし神使人は別だ。セン、けして『神石』を神使人に渡してはならない。わかったな」
「……わかりました」
センは戸惑いの表情を浮かべながらもそう返事をした。
「出発前夜に悪かったな。ターヤが待ちくたびれてるだろう。用はこれだけだ。もう退出してもよい」
「そうさせていただきます」
大神官の言葉にセンはそう返すと、頭を下げ、本殿を出た。
大神官――カネリはセンの後姿を見送ると本殿の奥の『神石』を見つめた。『神石』は赤い光を放ち煌いていた。
カネリはふと目を覚ました。そして枕の下にある金色の縁取りの箱の存在を確認し、安堵の息を漏らす。
神殿と違い、結界がはれない宮殿ではこうやって身近に置いておかなければ守れる自信がなかった。
センに化けたのがアルビーナであることは予想できた。カネリはアルビーナが神使人になったことを知っていた。しかしセンには伝えていなかった。
センの痛みは理解できた。それは過去の自分が抱える痛みと同じものだった。
しかし、センは時期大神官となり、『神石』を守る者だ。
アルビーナへの友情を断ち切り、『神石』を守る義務があるのだ。
セン……。
わかっているな……。
カネリは真っ暗な部屋の中でベッドから体を起すと、バルコニーに出た。冷たい夜風が肌に心地よかった。




