フォーグレンの神官16
『センさんのこと頼むな。もしかしたら死ぬ気かもしれない』
ターヤはロセが自分に残した言葉が頭から離れなかった。
久々に見たアルビーナは髪が伸び、まるで別人のような雰囲気だった。
アルビーナの思いが理解できた。しかし、自分の尊敬するセンがそんなことをするわけがなかった。
誤解です!
アルビーナ様!
ターヤはそう叫びたかったが、センとアルビーナは上空で睨み合い、自分が言葉を挟む余地はなかった。
「本当、会いたくてたまらなかったわ。この日を待っていたわ。力を再び手に入れ、あんたに復讐する日を」
「アルビーナ。私はあなたが思うようなことはしてない!でも、私のせいであなたがそんな目にあったのはわかっている。私をここで殺して、復讐を遂げてくれ。でも、それだけだ。神殿も宮殿にも手を出さないでくれ」
「……いやよ。あんたに指図されるつもりはないわ。あたしはあんたを殺して、『神石』も手に入れて、世界にあたしの力を思い知らせるの!」
「……アルビーナ!」
センは自分の気持ちがアルビーナに届かないのがわかった。
アルビーナと争いたくはない。
でも『神石』を渡すわけには行かなかった。
ロセがきっとあの男と金髪の神使人を止めてくれる。神殿には大神官様もいる。そう簡単に『神石』を渡さないはずだ。
私がここで時間を稼ぐ。
「ターヤ!あなたもフォーグレンに戻りなさい。『神石』を神使人から守るのです」
「セン様!」
ターヤは抗議するようにセンを見上げた。ロセの言葉が頭から離れなかった。自分がここから離れたら、センと再び会えない気がしていた。
「大丈夫です。行きなさい」
「セン様……」
センの有無を言わせない様子にターヤは頷いた。
「でも死なないでくださいね。絶対に!」
「………」
ターヤは何も答えないセンにもどかしさを感じたがフォーグレンの方角に飛んだ。
「アルビーナ。私はあなたと戦う気つもりはない。でもあなたに『神石』を渡すわけにはいかないんだ」
センはターヤの背中を見つめた後、アルビーナに向き直った。
「やる気?いいわよ。そのほうがあたしも楽しめるもの」
アルビーナは自分に対面するセンに微笑んだ。
神殿を出て、あいつらに捕まって、日々、男達の汚い相手をしていた。
死にたくなった自分を支えていたのは、センへの復讐の思いだった。
ずっと自分の側にいたセン。
馬鹿な神官どもから守ってきた。
ずっと自分の味方だと思っていた。
でも結局は自分のことしか考えていなかった。
許さない。
あたしを裏切るなんて、絶対に……。
センはあの時と同じような憎悪の視線を向けるアルビーナを静かに見つめていた。恨みをすべて受け止めるつもりだった。死んでも、殺されてもかまわなかった。
ただ『神石』だけは使わせるわけには行かなかった。
「行くわよ!」
アルビーナは青い『神石』のかけらを鞭に変えるとセンに向かって跳んだ。




