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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第1章 火の『神石』
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フォーグレンの神官16

『センさんのこと頼むな。もしかしたら死ぬ気かもしれない』

 ターヤはロセが自分に残した言葉が頭から離れなかった。


 久々に見たアルビーナは髪が伸び、まるで別人のような雰囲気だった。


 アルビーナの思いが理解できた。しかし、自分の尊敬するセンがそんなことをするわけがなかった。


 誤解です!

 アルビーナ様!


 ターヤはそう叫びたかったが、センとアルビーナは上空で睨み合い、自分が言葉を挟む余地はなかった。


「本当、会いたくてたまらなかったわ。この日を待っていたわ。力を再び手に入れ、あんたに復讐する日を」

「アルビーナ。私はあなたが思うようなことはしてない!でも、私のせいであなたがそんな目にあったのはわかっている。私をここで殺して、復讐を遂げてくれ。でも、それだけだ。神殿も宮殿にも手を出さないでくれ」

「……いやよ。あんたに指図されるつもりはないわ。あたしはあんたを殺して、『神石』も手に入れて、世界にあたしの力を思い知らせるの!」

「……アルビーナ!」


 センは自分の気持ちがアルビーナに届かないのがわかった。

 アルビーナと争いたくはない。

 でも『神石』を渡すわけには行かなかった。

 

 ロセがきっとあの男と金髪の神使人しんしとを止めてくれる。神殿には大神官様もいる。そう簡単に『神石』を渡さないはずだ。


 私がここで時間を稼ぐ。


「ターヤ!あなたもフォーグレンに戻りなさい。『神石』を神使人しんしとから守るのです」

「セン様!」


 ターヤは抗議するようにセンを見上げた。ロセの言葉が頭から離れなかった。自分がここから離れたら、センと再び会えない気がしていた。


「大丈夫です。行きなさい」

「セン様……」


 センの有無を言わせない様子にターヤは頷いた。


「でも死なないでくださいね。絶対に!」

「………」


 ターヤは何も答えないセンにもどかしさを感じたがフォーグレンの方角に飛んだ。


「アルビーナ。私はあなたと戦う気つもりはない。でもあなたに『神石』を渡すわけにはいかないんだ」


 センはターヤの背中を見つめた後、アルビーナに向き直った。


「やる気?いいわよ。そのほうがあたしも楽しめるもの」


 アルビーナは自分に対面するセンに微笑んだ。

 

 神殿を出て、あいつらに捕まって、日々、男達の汚い相手をしていた。

 死にたくなった自分を支えていたのは、センへの復讐の思いだった。


 ずっと自分の側にいたセン。

 馬鹿な神官どもから守ってきた。

 ずっと自分の味方だと思っていた。


 でも結局は自分のことしか考えていなかった。


 許さない。


 あたしを裏切るなんて、絶対に……。


 


 センはあの時と同じような憎悪の視線を向けるアルビーナを静かに見つめていた。恨みをすべて受け止めるつもりだった。死んでも、殺されてもかまわなかった。

 ただ『神石』だけは使わせるわけには行かなかった。


「行くわよ!」

 アルビーナは青い『神石』のかけらを鞭に変えるとセンに向かって跳んだ。



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