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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第1章 火の『神石』
16/133

フォーグレンの神官13

「デイ様」


 空を飛んでいるデイの元へ、水の神使人しんしとの1人ズウが近づいてきた。ズウは年頃は四十代で短い金髪の駕体のいい男だった。神使人しんしとの多くは水の神殿の元神官だった。今の大神官になってから神使人になったのはミシノ1人だったが、それ以前の大神官の争いや殺害に関わり、数名が水の神殿を追放され、神使人しんしとになっていた。

 ズウもその一人でデイ派に属し、神殿を追放されていた。


「王子が見つかった?」

「はい。トアグレンの街に入った王子をツゥリが捕獲しました」

「よくやったな」

 

 火の神使人しんしとに捕まっていたと思っていたのだが、自ら脱出したか。

 これで火の『神石』を俺のものだ。


 デイは仮面の下で薄笑いを浮かべるとズウと共にトアグレンに向かった。




「トアグレン?」

「ええ、トアグレンの街でアルビーナ様に助けていただきました。本当、あの時は助かりました」


 女性は微笑みながらそう言った。明かりの下で見るその顔はなんとなくアルビーナの妹アリーナに似ている気がした。

 

 だから、助けた。そして名前を教えたのか……。

 

 センはアルビーナを思い、女性から視線を逸らした。


「すみません。もうよろしいですか?家のものが心配してると思うので」

「ああ、悪かったな。もういいよ」

「じゃ、私はここで」

「待ってください。家まで送ります。ね、セン様。いいですよね?」


 ターヤが大きな青い瞳をじっと向けてセンを見つめた。センは自分が自分だけの思いに耽っていたことに気づき、苦笑した。


「もちろんです。ターヤ。送っていってあげましょう」


 『大丈夫です』という女性の言葉を押し切り、ターヤはロセとセンと共に女性を家まで送り届けた。カルグレンの街はフォーグレンの半分ほどの規模だが、先ほどの男どもといい、夜は安全とは言い切れないようだった。


「さて、トアグレンに行こうか」

「ええ」

「セン様、もう元の姿に戻して貰ってもいいですか?この姿、動きづらいし、髪の毛が首に巻きついて気持ち悪いんです」

「そうですね。もう、いいでしょう」

「いや、まだ……まだすこし」

「ここからは、力を使う必要があります。もう変装は必要ありません」


 ターヤのお姫様の様子をまだ見たいロセに、センは冷たくそう言いきると力を使い、ターヤと自分の姿を元に戻した。

 ターヤはほっと胸をなでおろし、残念そうなロセを睨んだ。気慣れぬスカートは下から風が入り気持ち悪く、金髪の髪は首元に巻き付き、不快だった。


「さあ、飛びましょう。ターヤ。大丈夫ですね」

「はい」


 センの言葉にうなずくとターヤは『神石』のかけらを懐から出し首からぶら下げた。


「さっ、行こうぜ」


 そう言ってロセが真っ暗な空に飛び上がる。その後をセンとターヤが追った。そして三人はトアグレンに向けて出発した。




「アルビーナ!」


 意識が戻ったミシノは慌ててアルビーナの洞窟に戻った。そしてベッドの上で横になっている彼女を見つけた。ミシノは嫌な予感がして、アルビーナを抱き起こすと必死に呼び掛けた。


「ん……あ、ミシノ?」


 アルビーナがうっすらと目を開き、ミシノを見る。そして眉間に皺を寄せた。


「あれ?あたし……」

「デイにやられたの?」

「デイ?誰それ。あ、思い出したわ!あのくそ王子!」


 アルビーナは怒りで顔を真っ赤にするとミシノの腕から抜けだした。


「あーなんで、油断したのかしら。悔しい!!」


 あの深い瞳に見つめられ、口づけされた瞬間、体の力が抜けた。そして意識が無くなった。


「くぅう!イライラするわ」


 部屋の中を怒りに顔を歪め、うろうろするアルビーナをみて、ミシノはハーヴィンが自分でこの部屋を脱出したことがわかった。それはそれで大変な事態だが、デイではないことにほっとした。あのデイであれば、アルビーナは生きてここにいたかわからなかった。


「アルビーナ。怒るのはそれぐらいにして、何があったか話してよ」

「……嫌よ。あんな間抜けなこと……。それよりも王子の行方を捜しましょ!」

 


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