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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第7章 最後の戦い
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フォーグレンの神官110

「ミン。あんたはここに残ってなさい」


 キリカはそう言うと棚の奥から青い石を取り出す。


「まさか、『神石』のかけらを使う時がくるとは思わなかったわ」

「キリカ…?」

「ミン、わたしに何かあったら兄さん、水の大神官を頼りなさい」

「キリカ!」


 心配げなミンにキリカは微笑む。


「大丈夫。そう簡単にくたばらないから。ミン、家のこと頼んだわ」


 キリカは『神石』のかけらを握りしめると家を飛び出した。

 そして祈るように目を閉じる。


 小さい時に、キィラに『神石』のかけらをもらい、使い方を教えてもらった。キィラには秘密にするように言われていた。

 しかし、水の神官達が裏切り、キィラ達が不在のシュイグレンで、民を守る者はいなかった。

 

 こんなわたしでも役に立つときがきたわ。


 キリカは空に浮かび上がると、龍の暴れている街へ急いだ。



「アルビーナ!」


 眼下に赤い何かが見えた。

 ミシノはそれがアルビーナだと分かった。


「ロセ。君は先に行って。僕はアルビーナを」

「わかった」


 ロセは急降下するミシノに手を振り、先を急いだ。


 ロセにも真っ赤な何かが眼下に見えた。

 アルビーナを心配していないわけではなかった。

 しかし、それよりもターヤのこと、シュイグレンで暴れているはずの龍のことが気にかかっていた。


「アルビーナ!」


 ミシノがアルビーナの体を抱き起こし、そう呼ぶとアルビーナが目を開けた。


「ミシノ…?なんであんたが…?」

「…よかった。龍に殺されたんじゃないかと心配してた」

「龍…?」


 声を震わして自分を抱くミシノを見つめながらアルビーナは記憶を探る。そして顔をしかめた。


「そうよ。龍!あたし、龍に襲われたのよ!あのくそ龍ども。このあたしをこけにして!!」


 アルビーナは怒り心頭でそう言うとミシノに支えられ、立ち上がる。

 ミシノはアルビーナがいつも通り、元気な様子を見てほっと溜息をつく。


「ミシノ!あの龍はどこに行ったの?方向的にシュイグレンよね?このあたしをこけにしたお礼はきっちり返してやるわ」

「…センのことはどうするの?」

「ああ。セン!そうだわ。セン!あーもう、とりあえずシュイグレンに行きましょ。センの行方を聞きだし、センを救出するのが先だわ。その後にあの龍どもにお礼してやるわ」

「アルビーナ。その前に僕に何か言うことはないの?」

「……ミシノ。来てくれてありがとう。一緒に行きましょう」


 アルビーナが罰が悪そうにそう言うと、ミシノがじっとアルビーナを見つめる。そしてぎゅっと抱きしめた。


「アルビーナ。僕はやっぱり君と離れないから。龍の事を聞いて胸がつぶれるかと思った。もう君の言うことは聞かない」

「……ミシノ」

「さあ、行こう」 


 ミシノはアルビーナを解放すると、厳しい表情を和らげ微笑んだ。そして空にゆっくりと浮かびあがりながら手を差し出す。アルビーナは微笑むとその手を掴んだ。

 



「危ない!」


 キリカは鎧を全身に纏い、群青色のマントを付けたマオの前に立った。そしてかけらをつかい氷の壁を作る。

 紅蓮の炎をどうにか防ぐことができたが、その後に飛んできた尾により、マオごと後ろに飛ばされる。

 カランと音がして、マオの兜が外れ、キリカはそれがシュイグレンの第1王子マオであることがわかった。


「マオ王子、どうしてここに!」 


 王族、しかも時期王と考えられているマオがここにいることがキリカは信じられなかった。


「…君は水の神官か…?助けてくれてありがとう。住民の避難が終わるまでここで私と共に戦ってくれるとありがたい」


 マオはそう言うと微笑んだ。

 キリカは戦場という場ながら、その笑顔に見とれる自分がわかった。


「やっぱりハンサムな王子様だわ。あんたのために頑張るわ。わたし」


 マオはキリカの言葉に一瞬きょとんとした表情を見せる。しかし龍に襲われ、深く考えることができなかった。




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