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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第7章 最後の戦い
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フォーグレンの神官105

「ロセ、あっちの空を見て」


 戦場に降り立ち、ターヤの痕跡を探すロセにミシノは声をかける。

 ロセは立ち上がり、ミシノが指差す方向を見た。

 遠くの空が不思議な色をしていた。

 それは時折赤く光り、光の加減で雷のようにも見えないことはなかった。


 ひゅんっ

 ふいに風を切る音がして、空を見上げる二人の頭上を何かが通った。


「大神官様!?」


 次第に小さくなっていく後ろ姿を見ながら、ロセとミシノはそう呼んだ。


「ミシノ……。あれは雷雲じゃない。きっと龍だ!」


 ロセはそう言うと空に飛び上がる。そしてカネリを追い、空に消える。


「ロセ!」


 ミシノは舌打ち交じりにロセの名を呼ぶとその後を追った。




「いったい、これは……」


 黒焦げになった船の残骸を眼下に見て、カネリは言葉を失った。そして地面に降り立ち、残骸の中に埋もれる人々の中に、ミルの姿を見てカネリは胸がえぐられるような気持ちになった。


「ミル!いったいこれは!」


 カネリはミルの体を残骸から引き出すと、そう声をかけた。するとミルが目をゆっくりと目を開いた。カネリはほっとするのがわかった。


「……大神官様……。龍が、龍が現われて……」

「ミル、話すのではない。今フォーグレンに戻って医師を」


 カネリはミルの言葉を遮りそう言った。フォーグレンに戻り、治療すれば助かるかもしれない。助かって欲しいとカネリは願った。

 一般人になり家庭を持ったミルに神官を束ね、戦うことを頼んだ。ミル以外に適任者はいなかった。しかし、カネリは自分が酷な願いをミルにしたことを知っていた。


「大神官様……。助からないのはわかっています。ただ、夫と子供に私が立派に戦ったと伝えてください。そして強く生きて……と」

「ミル!」

「夫と子供のことお願い…しま…す」


 ミルはカネリの腕を掴んで、そう言葉を紡ぐ。そしてカネリを見つめると目を静かに閉じた。


「ミル!ミル!」


 カネリは喉が裂けんばかり、そう叫ぶ。しかし、ミルが目を覚ますことはなかった。


「大神官様……」 


 カネリを追ってきたロセとミシノは船の残骸近くで躯をいだくカナリの姿を見つけ、ゆっくりと降り立った。

 そして周りを見渡す。


 離れた岩陰に船の影が見えたような気がした。

 ロセとミシノはお互いの顔を見合わせるとそこに向かって飛ぶ。


 数百隻の船が無傷の姿を見て、2人はほっと胸をなでおろす。また船の側には兵士達が座り込んでいる様子も見えた。


「ロセ!」


 船から出てきたティアナはロセの姿を見て安堵の表情を浮かべた。しかしその表情には元気がない。


「何があったんですか?」

「龍、二頭の龍に襲われました。キィラとネスがどうにか撃退してくれましたが……」

「やっぱり龍なんですね!でもどうして襲うなんて、ターヤ、ターヤの姿を見ましたか?」


 ロセは戸惑いながらもそう尋ねる。


「ターヤ……、見ませんでした。あの二匹の龍は自分の意志で動いているようでしたが……」


 ティアナはその時の状況を思い出したようで、青白い顔でそう答えた。


「姫様!ネス様がお目覚めに!」


 船から出てきた兵士がティアナにそう声をかける。


「ロセ、そしてそこの方。ついてきて下さい」


 ティアナは二人にそう言うと背を向け、船に向かって歩き出した。


「そこの方か……」


 ミシノは不服そうにそうつぶやいたが、素直にティアナの後を追った。


「ロセ!」


 船に乗ろうとしないロセにミシノが声をかける。


「わかったよ!」


 龍は後回しだ。


 ロセは北の空から視線を船に戻すと慌ててミシノの後を追い、船に乗った。




「センの馬鹿、馬鹿、馬鹿~~」


 アルビーナは泣きそうになる自分を叱咤するようにそう叫びながら、シュイグレンに向かって飛んでいた。

 大量の血がその背中から流れていた。早く治療しないと、死に至るほどの血の量だった。

 ヤワンから解毒の方法がないが、効き目は二日間だけだと聞き出した。

 そうなると今頃は効き目が切れている可能性が高かった。

 センが正気を取り戻すと、デイに抵抗するのは目に見えていた。

 

 早く見つけなきゃ!


「デイ!センを殺したら許さないから!」


 そう叫ぶとアルビーナは飛ぶ速度をさらに増した。


 体がばらばらにならなきゃ、いいわ。

 目いっぱい飛ばして、デイの手下どもに居場所を吐かしてやる!


 アルビーナが目指すのはシュイグレンの城の地下牢だった。地下牢に投獄されているズウとツゥリからどうにかしてデイの潜伏しそうな場所を吐かせるつもりだった。


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