表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第6章 南の攻防
103/133

フォーグレンの神官100

「アルビーナ!」


 そう声が聞こえ、目を開くとミシノが側にいるのがわかった。何も痛みがなかった。センの姿はそこにはなかった。

 立ち上がり、見渡すとセンがデイを庇い、血を流しているのが見えた。


「セン!なんで、なんであんたは!」


 アルビーナは泣きそうな声でそう叫ぶと、センのいる場所に飛んだ。



 ☆


「……わかった」


 ターヤがそう答えると火の神が笑ったような気がした。


 火の神と契約した時に、命を捨てる覚悟はした。

 今さら同化するなど、問題ではないはずだ。


 すこし痛いが死にはしない。


 そう火の神の声がして、ターヤは体が熱くなるのがわかった。


「うああああ!!」 


 あまりの熱さにターヤが悲鳴を上げる。


「ターヤ!」


 側にいたロセは様子のおかしくなったターヤに触れようとした。


「僕に触らないで!」


 ターヤはロセから離れると、そう叫んだ。そして痛みと熱さをこらえ、顔を上げるとロセに微笑む。


「ロセさん……色々ありがとうございました。僕……ロセさんが好きです」

「ターヤ!?」


 ロセは動揺してターヤを見る。


「だから僕はあなたを守りたい。みんなを守りたい。僕が終わらせます。父さんを道連れにしてでも!」

「ターヤ!何、考えて!」


 ロセが声を荒げ、ターヤに近づく。するとターヤの体が光りはじめた。そして光は広がり、体全体が光の球体になる。


「ターヤ……どうして……」


 光の球はロセの周りをふわりと飛ぶと火の龍に向かう。

 火の龍が咆哮を上げ、光の球と融合する。


「ターヤ!!」


 ロセの叫び声が響き渡った。

 鈍い音がして、光の波が火の龍から発せられた。それは水の龍が融合した時の比でなく、フォーグレン全体に広がっていく。

 幾重もの光の波が放たれた後、光が凝縮し始める。そして現れたのは黄金の龍だった




 人々は新しく現れた龍に気をとられていた。

 デイは血を流し、青白い顔のセンを抱きかかえると、すばやく空に飛び上がった。

 

 黄金の龍が現れた今、戦いは互角。

 そうなるとデイにとってはここにいる理由はなかった。

 牢獄に入れられる、殺されるのはまっぴらだった。


 逃げる必要があった。


 一人で逃げるつもりだった。

 しかし、デイはセンを抱くと北に向けて飛んだ。




 黄金の龍は咆哮をあげると虹色の龍に飛びかかった。そしてその首筋を噛むと蛇のようにその体を締めあげ、空に向かって昇り始めた。


 空の様子が変わる。落雷が発生し、雲が空を覆っていく。太陽が雲に完全に覆われ、地上に夜のような暗さをもたらす。


 龍達の姿が空に吸い込まれていく。


 そしてその姿が完全に空に消えた瞬間、爆発音が起きた。

 雲が弾け、空が真っ赤に染まる。


「ターヤ!」


 ロセが空に向かってそう叫び、空高く上がる。ターヤの痕跡を、龍の痕跡を探そうと必死になって飛びまわる。

 しかし空には縮れた雲が広がるだけで、ロセは何も見つけることができなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ