フォーグレンの神官99
「くう!」
アルビーナの苦しげな声が響く。センは鞭を槍に変えると、アルビーナの体を突き刺そうと動かした。
アルビーナは火弾を放つと、かろうじてセンの動きがとめた。そしてその隙に上空に飛び逃げる。しかし、センは息も乱さず、アルビーナの後を追いかけた。
センの火の矢がアルビーナの足に刺さる。
「くっ!」
アルビーナは地面に降り立つと足から矢を抜いた。矢は宙に溶けるようにして消える。顔を上げると間髪いれず、センがアルビーナを追ってくるのが見えた。
アルビーナは半ばやけくそぎみに鞭を振り回す。センは鞭をその槍で巻きとると、宙に投げ捨てた。
「!」
センが槍を握り締める。
だめだわ!センの馬鹿!
アルビーナは死を覚悟して、目を閉じた。
☆
「くそ!」
デイは吐き捨てるようにそう言い、ネスの攻撃を避ける。先ほどの戦闘で地面に叩きつけれたせいか、体がきしんで思うように動かなかった。
「デイよ。十七年前の大神官様の仇。今日こそ討たせてもらう!」
バランスを崩し、地面に降りたデイにネスはそう言うと剣を振り上げた。
「!!」
血しぶきが上がるのが見えた。しかしその血はデイのものではなかった。デイは自分を庇うように覆いかぶさった者の顔を見て、目を見開く。
「セン…?」
「セン!?」
ネスは自分が切ったのがセンだとわかり、動揺を隠せなかった。
「……なんでお前が……」
デイは力なく自分に覆いかぶさるセンの暖かさを感じながら、呆然としてつぶやいた。
虹色の龍との戦いは有利に進むことはなかった。
ターヤ……。
水の女神を倒す方法がひとつだけある。
ふと焦るターヤの脳裏に火の神の声が響いた。
「それはどういう方法なの?」
ターヤは放たれる白い炎を避けながらそう尋ねた。
ワタシと同化するのだ。
そうすればワタシの力が水の女神より上回るだろう。
「……」
ターヤは火の神の言葉に答えを出せなかった。
ロセはターヤのそんな様子に気づかないようで戦いに集中している。
このままでは勝ち目はないぞ。
火の神の言葉がターヤの心に響く。
「ぐおっつ!」
虹色の龍の尾がロセを襲い、ロセは地面に叩きつけられた。
「ロセさん!」
ターヤは地面に降り立ち、ロセに駆け寄る。
どうするのだ?
ターヤ……。
火の神は虹色の龍の炎を、その炎で相殺させながらターヤにそう語りかけた。