フォーグレンの神官97
「!」
眼下でラズナンと話すロセ達が見えた。しかしアルビーナの注意はそこではなく、街門で繰り広げられるセンとカネリの戦いに目がいった。
「何やってるのよ!セン!」
アルビーナは舌打ちをすると、街門へ飛んだ。
弟子センから放たれる攻撃にカネリは苦戦していた。
戦ってみて改めでセンが如何に力のある神官か思い知らせされた。
絶え間なく撃たれる火弾、そして鞭による物理的攻撃。
今のセンは疲れを知らないのか、攻撃は連続して放たれた。
地面に叩きつけられたカネリに向かって、センが鞭を振り下ろした。
「!」
しかし鞭がカネリを傷つけることはなかった。
「大神官様ともあろう御方が、何苦戦してるのよ!」
アルビーナがカネリの前に立ち、センの鞭を掴んでいた。
「やっぱり年には勝てないってこと?あたしがセンより強いこと、今日こそ証明してあげるわ!」
アルビーナは嫌味たらしくそう言うと、鞭を放し、回し蹴りをセンにお見舞いする。センは後ろに飛ぶとそれを避けた。
☆
ターヤ、ロセ、ティアナ、ネスに囲まれ、ラズナンには打つ手がないはずだった。
しかしラズナンは腕を組み、悠々とした態度を崩さなかった。
「強情な娘たちよ。我が今こそ水の女神の本当の、力を見せてやろう」
「な?!」
驚くターヤ達の目の前でラズナンの姿が光りはじめる。そして人の形が崩れ、龍に変化した。
「ま、まさか…。水の『神石』は確かにここに……」
ネスは手の中で水の『神石』を再度見つめる。
「そうか!」
ネスがその可能性に気づいた時はすでに遅かった。『神石』は光り輝くと龍の姿のラズナンに向かって飛んだ。そして光と龍が融合する。
やはり、ラズナンの中に水の奴が……。
眩しい光に目を細める中、ターヤの脳裏に火の神の声が聞こえた気がした。
光がやみ、現れた龍は、美しい虹色の鱗も持つ龍だった。
ターヤの頭上に紅蓮の龍が現れ、威嚇するように咆哮を上げる。
水の女神め。
かの血を引くものと融合し、力を増したか。
火の神の忌々しそうにつぶやく声がターヤの脳裏に響く。
そして紅蓮の龍は虹色の龍に飛び掛った。
眩しい光がミルの視界を覆った。
光が止み、目を再び開けるとそこにデイの姿はなかった。
ミルは悔しげに顔を歪めると、このことをネスに伝えるため、街に向かって飛んだ。