答え合わせ
あるところに世界があり、気がついたらその世界を人知れず、雲の上から統治する男神と女神はいた。
彼等は夫婦神だ。
時折喧嘩をすることもあるものの、とても仲睦まじかった。
その女神はあるとき、足を滑らせ世界に落ちた。
そして一人の人間の女として生を受ける。
男神は静観した。
彼にとって人間の生は短く、儚いものだからすぐに帰ってくるだろうと。
女神は記憶を失っていたが、その力は健在だった。しかし人間の器の中ではその力を完全に発揮することはできず、不完全な状態で常に発揮されていた。
人ならざるものが常に見えていたり
誰と誰が運命の糸で繋がっているか見えたり
あっという間に終わると思っていた男神は、気がつくと女神を目で追っていた。
次第にどんどん余裕が無くなっていく。
一秒一秒に焦れるようになった。
そしてある時
女神が人間の男に恋をした。
この時ばかりは男神も女神の器を殺し連れ戻そうかと思った。
しかしそんなことをすれば女神は不完全な復活となる。
気が狂いそうになりながらも二柱分の仕事を行いつつ女神を観察した。
男神用の器を作り、女神が恋をした人間に"幼馴染"として近づいた。
少しずつ人間の男の"奥方"である女神の情報を知っていく。
しかし"奥方"である女神には、絶対会わない様にした。どうにかなりそうだからだ。
そしてある時女神がもう一人の想い人を作ったことを知る。
男神は混乱したが、女神が恋をした切っ掛けを思い出した。
人間の男と、本来その男と結ばれる筈だった女性
しかし、彼女も彼も女神に出会い女神を愛した。
恐らく女神は彼女と彼を出会わせ、彼を諦めようとしている。
今更すぎて笑いがでた。
女神の力は不完全な状態で常に発揮されている。
ゆえに見えていないのだろう。
女神へ注がれる彼と彼女の愛が。
すべて予定調和で終わるならば、神は要らない。
そして、
女神の力は大きく、そして人の器に収まらない。
その命は早くに終わる。
召された彼女は全てを思い出し泣いた。
それは嬉し泣きでもなければ悲し泣きでもない。複雑な感情が流れていた。
そして女神は恐る恐る世界を覗き込む。
女神は完全な力で見た。
二人からどれだけ愛されていたか。
女神が愛した人間の男とその男と本来結ばれる筈だった女性の関係を。
彼と彼女は、互いに目を合わせた。
そして、二度と会わなかった。
そんな姿を見て、女神は「なぜ!?」と取り乱した。
「なぜ私は気がつかなかったの?」
「なぜあの人たちは結ばれてないの?」
「なぜ…死んでしまったの?」
それは後悔の涙だった。
男神は女神を覗き込んだ。
女神は男神の意思を察した。
二柱の世界ならできる。
やり直しを
女神が落ちなかった、世界へ
しかし、それは
「それは嫌!」
女神は思わず叫んでいた。
神らしくないことくらい分かっていた。
それでも嫌だった。
彼と彼女から向けられた愛。
その全てが消えてしまう。
それが彼と彼女の幸せだとわかっている。
神である自分は、その道を選ぶべきだ。
わかっていても、嫌だった。
「辛かった」
男神はそう零した。
「お前があの男を見つめるたびに」
「お前の愛が失われてしまったようで」
男神は微笑んだ。
似た者同士だ、と。
男神と女神は手をかざした。
結ばれなかった魂たちへ。
新たな旅路を。
言祝ごう。
新たな門出に。
見守ろう。
その道筋を。
祈ろう。
今度こそ幸あれと。
その愛は、決して失われない。
幸せを掴むかどうかは、あなたたち次第。
それでも祈らずにはいられなかった。
ありがとうございました。
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