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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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第39話 足も口も初めてで

 体育祭から休日を挟み月曜日になった。あれ以来、瑛理子先輩とは顔を合わせていない

 そして今俺は、文芸部の部室前で深呼吸をしているところだ。


「すーはー」


 だ、大丈夫だ。きっと瑛理子先輩は気にしていないはず。き、きき、キスしちゃったのを。

 あれは偶然だ。たまたま先輩が倒れ込んだところに、俺の顔があっただけ。そう偶然だ。


 あれからクラスでは俺の噂で持ちきりだった。

 身を挺して孤高の女王を救った男だの。冷徹姫をデレさせた王子だの。借り物競争で告白しやがっただの。ベンチでSMプレイしていた変態だの。

 ああ、俺が瑛理子先輩とデキてるとか噂が増えていく。


 ガッ!


 ドアに手を掛けて、一気に開け放った。


「え、ええ、瑛理子先輩」


 自然に入ろうとしたのに、噛み噛みになってしまった。これは仕方がないんだ。


「お、おお、大崎君♡ き、きき、来たわね」


 対する瑛理子先輩も噛み噛みだった。

 俺を見るや否や、目が泳ぎまくり髪をいじり始める。


「え、えっと、もうコンテストも近いのよ。執筆を進めましょ」

「はい」


 カチカチカチ!


 瑛理子先輩がパソコンのマウスを操作している……と思ったら、マウスじゃなくてマグカップだった。


「先輩、それマグカップですよ。クリックしても何も起きませんって」

「えっ! ち、ちがっ、くぅ♡ ち、違うのよ♡ ちょっとマグカップをクリックしたくなっただけよ♡」


 マグカップをクリックしたくなるって、どんなだよ!


「えっと、そ、そうですね。たまにマグカップをクリックしたくなりますよね」

「なるわけないでしょ!」

「そんなあ!?」


 ダメだ。瑛理子先輩が挙動不審すぎる。自分から言い出したのに。

 やっぱりキスしちゃったからだよな。


「あの、瑛理子先輩」


 俺が座っている椅子を寄せると、ますます瑛理子先輩がおかしくなる。真っ赤な顔を両手で隠し、体をプルプルと震わせるように。


「うくぅ♡ もうダメぇ♡ ごめんなさい♡」

「な、何がですか?」

「わざとじゃないのよ♡ あれは偶然なの♡ 偶然くちびるに当たってしまって」

「で、ですよね……」


 ドキッ♡ ドキッ♡ ドキッ♡ ドキッ♡


 ヤバい。俺も限界だ。心臓が飛び出そうなくらいドキドキしている。

 本当に瑛理子先輩とキスを。

 やわらかかった。プニッてくちびるに感触が。

 あああ、ダメだ。俺もおかしくなりそう。

 何とか話題を……そうだ!


「え、瑛理子先輩、大丈夫です。口より先に足にキスしてますから」

「は?」

「ほら、初めて会った日に顔を踏まれて。思い切り足の裏にキスさせられましたから……あれ?」


 気がつくと、瑛理子先輩が凄い顔で睨んでいた。めちゃくちゃ怖い。


「むぅううううぅ!」

「あの、先輩? 怒ってます?」

「怒ってないわよ」

「怒ってますよね?」

「大崎君のばか!」


 めっちゃ怒ってるだろ。

 でも、『ばか』のところは可愛かった。


「足と口じゃ意味が違うでしょ。私、初めてだったのに」

「俺も初めてです」

「ふ、ふーん♡ 大崎君もファーストキスで緊張しているのね♡」

「はい」


 何だろう。めちゃくちゃ可愛い。照れた先輩の顔も可愛い。


「ふふっ、大崎君の初めては私が貰っちゃったってわけね♡」

「はい、口も足も初めてです」

「あ、足は忘れなさいよ♡」

「あんなの忘れられませんって」

「もうっ♡ でも、会ったのは……じゃないのに」


 照れまくる瑛理子先輩だが、語尾が小さくなって聞き取れなかった。


「何か言いましたか?」

「何でもないわ。ほら、やるわよ」


 今度はマグカップじゃなくマウスを手にした瑛理子先輩が、グイッと肩を寄せてきた。


「せ、先輩……何か近くないですか?」

「普通よ♡ 照れているのかしら? キスしたからって、いい気にならないでよね」

「照れてるのは先輩の方ですよね? 顔が真っ赤ですよ」

「うくぅ♡」


 この人は何をしたいんだ。自分から肩を寄せてきたのに、照れまくっているのだが。


「う、うるさいわね♡ 大崎君だって顔が赤いわ♡」

「そりゃそうですよ。瑛理子先輩みたいに可愛い女子に近づかれたら、誰だって照れますって」

「ううぅ♡ もうっ! からかわないでって言ってるのに♡」

「からかってませんって」

「はぁう♡ もうダメぇ♡」


 ガラガラガラ!


「こんちはーっス。未来の大作家、佐渡雅の登壇っス…………って、またまたっスか!」


 もうオヤクソクだが、いつものタイミングで雅先輩が入ってきた。

 何かもうジト目で俺たちを見つめている。


「またイチャイチャしてるんスね。早く付き合っちゃってくださいっスよ」

「い、いい、イチャイチャしてないわ!」


 雅先輩の言葉を全力で否定する瑛理子先輩。そんなに強く否定しなくても……。


「そこの生意気後輩も、早く告白しなさいよぉ! 女を待たせるなんてダメダメなんですけどぉ」


 雅先輩の攻撃の矛先が俺に向いた。いつものメスガキ攻撃だ。


「告白って、そういうのじゃないけど」

「どういうのなのよぉ! 女はね、いつでも好きって言葉を欲しいものなのよ! ザコ後輩には分からないのかしらぁ」

「雅先輩、好きです」

「うっきゃぁ! みみみ、雅にじゃないしぃ!」


 冗談で雅先輩に言ってやったら、面白いように狼狽うろたえ始めた。

 やっぱりメスガキ先輩は面白いな。大人ぶりたい年頃なんだろう。先輩だけど。


 ゴゴゴゴゴゴゴ!


 何故だろう。さっきから瑛理子先輩の威圧感が急上昇している気がする。


「大崎君! そんなに私にお仕置きされたいのかしら?」

「す、すみません。冗談のつもりで」

「冗談で言うんじゃないわよぉ! このザコザコ後輩がぁ!」


 グイグイ迫る瑛理子先輩の追及に、更に雅先輩まで加わってしまう。二人の女子に挟まれて逃げ場がない。


「瑛理子先輩、近いですって! 雅先輩もすみません。反応が可愛らしいからつい」

「ふん、雅が可愛いのは当然だしぃ」


 雅先輩は小さな胸を張る。

 凄い自信だ。


「大崎君! あなた誰にでも可愛いって言うのね」


 瑛理子先輩の怒りが収まらない。いやむしろ、更に怒りに火をつけてしまったような?


「ち、違います。雅先輩は別枠と言いますか……娘みたいな感じです」

「私は何なのよ!」

「瑛理子先輩は純粋に……」

「純粋に?」

「えっと……」


 その先を言おうとして言葉が出てこない。これ以上言うと、告白してしまいそうだから。


「そ、そういう訳で」

「どういう訳よ。まだ聞いてないわ」

「だからその美しくて可愛い顔を近づけないでください! 瑛理子先輩は自分の可愛さを知らなすぎです!」

「ま、また可愛いって言ったぁ♡」


 両手で顔を隠した瑛理子先輩は、体をクネクネさせイヤイヤをする。本当に可愛い生き物だ。


「はぁ、もう見てられないっスね。なんスか、このバカップルは」


 雅先輩は、溜め息混じりに両手を広げた。

 やめてくれ。それじゃ本当に俺たちがバカップルみたいじゃないか。



 ◆ ◇ ◆



 その夜、俺は自室で小説の続きを書いていた。


「えっと、エリーゼは長い黒髪を振り乱しながら、魔法の杖を……」


 くっ、エリーゼが瑛理子先輩のイメージになってしまった。俺の好みのヒロインを設定したはずなのに。

 しかももう一人のヒロインである女剣士マリーは、どうみても真美さんにしか見えない。


「ああああぁ、どうしよう……」


 俺は真美さん一筋だったはずなのに、最近では瑛理子先輩が頭から離れない。

 というか、もう真美さんと瑛理子先輩の両方が大好きだ。


「ぐああぁ! もうどうしたらいいんだ!」


 ガチャ!


「こらぁ! 愛知県では『熱い』を『ち○ち○』って言うんやぞ!」


 またノックもせずに、ウザ姉が現れた。

 ち○ち○大好きすぎだろ!


「姉ちゃん、もう年頃の女子なんだから下ネタやめろって」

「なんだとこらぁー! あんたのせいで私が真美に詰められたんだからね!」

「何だよそりゃ」


 相変わらず凛は意味不明だ。


「そういえば、最近の真美さんって何か怖いような? こう狂気を孕んでいるみたいな?」

「誰のせいだと思ってやがる、この愚弟がぁああ!」


 凛にベッドに押し倒され、両足を掴まれた。

 この体勢は!?


「おりゃおりゃあぁああ! お前なんか電気あんまの刑だこらぁああ!」

「ぎゃああああ! そこは反則だぁああ!」

「お前をち○んちこち○にしてやる!」

「それ意味が違うだろ!」


 久しぶりに食らった姉の必殺技。絶妙な踏み具合と振動がプロフェッショナルだ。足裏で陥落しそうなくらい。


「もう許さねえ! 真美だけなら多めに見てたのに、次々と女に手を出しやがって! 俊、お前は私のモノだって言ってるだろぉおお!」


 やっぱり、うちの姉は意味不明だった。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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